第5話 エルザ棍棒!!・・・ですの

 バイキングみたいな格好をした武器屋の親父から武器を仕入れてきた。手に入れたのは「どうのつるぎ」と「こんぼう」だ。

 

 金は転移して時に着てた服からベルトだけ抜き取って売った。

 

 革製のベルトだったからな、こっちの人は合成革なんて見た事ないだろうから貴重な素材を使ってるって話をして武器2本と交換してもらった。こいつに鉄鋲でも打てば武器にもなるなんて話しをつけてね。ちなみにどうでもいいが、ズボンが落ちないように紐もおまけで貰っておいた。おしりを出しても一等になれる世界じゃないからな。

 

 とりあえずは昨日よりマシな武器が手に入ったしエルザの所に行くか。さすがに着替えも終わってんだろう。武器屋から宿へ向かうと宿の前にエルザが立っていた。

 

 「おっいたいた、すまんな待たせたか?」

 

 「待っていませんわ、今しがた外に出たところでしたわ!」

 

 エルザを見ると体調はもう問題ないようだ、ただ戦闘だっていうのにスカートなのはなぁ。そのうち服だの防具も見繕わなきゃいけねぇな。女物は、わかんねぇな。まあ店員にでも頼めばいいか。

 

 「そうか。でだ、さしあたっての武器を手に入れて来た。昨日よりはマシになると思うぜ」

 

 「どうのつるぎ」と「こんぼう」が入った頭陀袋ってーのか?大きな布袋みたいなものを見せる。

 

 「さすがマスターですわ!買い物もお手の物ですわね」

 

 おっおう、お手の物か。そいつは技や術が居る事をやる時に使う言葉だ。微妙に違ってるぞ。

 

 「で、街に出たら武器を渡すんだが、少し練習した方がいいだろう。練習して落ち着いた所でモンスターを退治をはじめるぞ」

 

 「はい!練習しますわ!いきましょう!!」

 

 元気いいな。語尾がはきはきしてるわ。返事を終えたエルザが小走りで近寄って来て、隣を歩く。

 

 街の外まではそんなに時間があるわけじゃないが、こうやって並んで歩くってのも、いいものかもしれないな。移転前は趣味に没頭しすぎた。こういう感じで女性と歩くのも悪くない、まあ向かう先はモンスターだけどな。

 

 うだうだと考えながら歩いて壁というには寂しすぎる街の門を出て、街道らしき道を歩き、少し広めの草原に出る。

 

 「さて、このへんでいいか。エルザ武器を渡すぞ」

 

 「はいですわ!」

 

 担ぐように持ってきた大きな袋から「どうのつるぎ」と「こんぼう」を出してエルザに見せてみる。

 

 「c'est une bonne!ソードとクラブですわ!!」

 

 フランス語からの英語か。ふとした瞬間にフランス語がでちゃうわってセレブかよ。あっお嬢様か。

 

 「おっおう。それでだ、どっちがどっちを使うかって話なんだが、どっちがいいとかあるか?」

 

 「うーん、わかりませんわっ」

 

 まあ、そりゃそうだな。俺だって自分にどっちが向いてるかわかりゃしない。とりあえず振らせてみるか。

 

 「んーじゃあ、両方持ってみてしっくりくる方を使え。おれは残った方を使う」

 

 エルザは「どうのつるぎ」と「こんぼう」を見比べてから「どうのつるぎ」を手にして素振りらしきものをはじめた。

 

 「結構重いですわね。せいですわ。せぃっですわ。せいーですわ」

 

 それ、ですわいるか?ですわのタイミングで振りが間延びしてるぞ。

 

 エルザ的にも、しっくりこないらしく首をかしげている。その仕草はかわいいんだがなぁ。

 

 「なぁ、エルザ。語尾のですわを抜いて振ってみろ」

 

 「わかりましたわ。せいせぃせいー」

 

 ちったぁましか。だが黒いレザーを着たお笑い芸人みたいだな。却下だろ。

 

 その間に俺も「こんぼう」を振ってみる、握り手にすべり止めの布が巻いてあって握りやすいな。こりゃいいな、振ってみても重さをあんまり感じない。

 

 「こっちはどうだ?」

 

 エルザから「どうのつるぎ」を預かって「こんぼう」を渡す。語尾をかえても、しっくりこなかったんだろう。いまいち顔だったと顔に書いてあるままだ。

 

 「むむむ、これは持ちやすいし軽いですのね」

 

 ギュッと握りしめたかと思うと、少し離れておもむろに地面に叩きつけはじめた。

 

 ドンドン「はっ」ドンドン「はっ」

 

 何故、叩きつけてから気合を入れる?ウィーウィルなロックはダメだ。・・・やめろ徴収に来る。

 

 「エルザなんで気合が後なんだ?」

 

 「地面から持ち上げる方が力が要りますの。だから後ですの」

 

 一応、理にかなってる事いいやがる。だがなウィーウィル打法は禁止だ。

 

 「わかった、だが壊れちまうからあんまし地面を叩くな。叩くのモンスターだけだ」

 

 「わかりましたわ、はっ」ドン

 

 だからやるなと、、、スライムが居たのか。

 

 「マスター!戦闘ですのよ!!」

 

 「おうよっ、エルザはそっちの武器でいいな?」

 

 「もちろんですの、このクラブでぺにょぺにょにして差し上げますの!!」

 

 スライムは2匹か、すでにエルザが一撃いれた方はぺにょぺにょとやらになりかけてるな。じゃあもう片方の元気なやつを相手しますかね。

 

 「殴った方のスライムは任せた、俺はこっちをやる」

 

 元気な方のスライムに向きつつ、エルザに指示をだす。

 

 昨日戦って思ったがスライムってのは結構手ごわい、そうだな人をダメにするクッションが重くなって体当たりしてくるって感じだ。

 

 だが、頭が悪いらしく突進と飛び跳ねての攻撃しか、してこねえから避ければ良いんだけどな。

 

 目の前のやつも同様だ、ぶよんぶよんと鈍い音をさせながら飛び掛かって来たので横に躱して「どうのつるぎ」を叩きつける。

 

 移動が遅すぎだろ。ってーか「どうのつるぎ」重いぞ。10kg以上あるんじゃねぇか?

 

 重さも相まって、ぶよぶよに跳ね返される事もなく切断は完了した。ななさん位の割合で二つに斬られたスライムは、しばらくデロデロと動いていたが討伐できたらしく動きを止めた。

 

 エルザを見ると、スライムが恐怖を感じて距離を取ってるみたいだ。一度殴ってるしな。

 

 「お待ちなさい!おとなしく潰されるのですの!!!」

 

 物騒だなおい。モンスター退治だからいいんだが。しばらく追いかけっこをしていたが、どびちゃぁと破裂に近い音がして戦闘は終了らしい。

 

 「マスター!終わりましたわ!この武器いいですの!!」

 

 ぶんぶんと「こんぼう」を振り回して、近くに寄ってくる。やめろスライムの残骸が飛んでくる。

 

 「おお、そうか戦闘スタイルにあったようで何よりだ」

 

 「はい、ですの!」

 

 ですわじゃねぇのかよ。ですのってキャラ同じようで違うぞ。・・・ああ、剣の時の話を覚えてるのか?そういえばあれから「ですわ」が全部「ですの」だった気がするぞ。

 

 「エルザ、別に普段はですわを使っていいんだぞ」

 

 「?」

 

 わかってないらしい、可愛らしく小首をかしげている。かわいいかよ。

 

 「まあ気に病んでやってるんじゃなきゃ、気にしなくていい」

 

 「?・・はい、わかりましたわ」

 

 とりあえずだ、これで武器の振り分けと基本的な闘い方はいいだろう。武器の良し悪し言える程、強いわけじゃねぇから、これから剣タイプと棍棒タイプに慣れていきゃいいだろう。

 

 「エルザ、このまま近辺のモンスターを討伐するがいいか?」

 

 「はい!駆逐してやりますわ!!!」

 

 ・・・うーーーーん、セ、セウト!

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