第4話 エルザ混乱!!・・・が良いわ

 翌日、宿の一階で朝食を食ってるとエルザが2階から降りて来た。頭を手で押さえたままで足元も少しおぼつかねぇな。

 

 「おはようございますマスタぁー」

 

 「おうっおはよう、そいつは二日酔いか?頭いてぇだろ?」

 

 「これが二日酔いですのね、そうですわ頭が痛いですわ・・・」

 

 語尾がよえぇ。はじめての二日酔いって感じだな。午前中は昨日の整理でもして休むか。

 

 「水分を多めに取って、朝食は軽めにしておけ」

 

 「わかりましたわ」

 

 宿の店員がエルザ分のオーダー確認に来たので、軽めの粥と多めの水が必要だと伝え、あるなら二日酔いに効く薬を持って来て欲しいと頼んだ。

 

 「でだエルザ、昨日聞いた話を伝えるがいいか?まずは魔王についてだ。エルザは魔王について何か知ってる事はあるか?」

 

 「はい、もちろんですわ。魔王ですか、わかりませんわ。王なのですわよね?魔の王様という事で偉い人ではありませんの?」

 

 ん?割とまともな回答だな。もしかして体調悪いとぽんこつ度合いが下がるのか?おかしいものをおかしくしたら、それは正常って話か?理屈がゆであがってんな。

 

 「そうだな魔の王様だな。魔ってのは昨日倒したスライムだの、でかいカラスだのを指す言葉だ。モンスターってやつだな」

 

 「モンスターの王様ですのね」

 

 「おまたせしましたーー」

 

 エルザの食事を店員が持ってきた。あわせて二日酔いに効くという薬も持って来てくれたんだが、こいつは毒消し草じゃねぇか。アルコールも毒って言えば毒だけどよ、まあ効くならいいか。

 

 「この薬はどうやって使うんだ?」

 

 「口にすれば効きますよー」

 

 「葉でも根で茎でもいいのか?」

 

 「はい、そうですが。ご存知ないのですか?」

 

 なんだよ、その超なんちゃらなシンデレラを説明する口調は。全体的に緑かよ。

 

 「ああっすまん。こちらに来て日が浅いもんでな。どこでもいいから食べれば効くんだな、ありがとよ」

 

 「はーい?」

 

 ややこしい説明をする気は無いので、店員に代金を払って会話は終わりにした。貰うものを貰ったので店員は首をかしげつつも席を離れていった。まあ俺たちが違う世界から来た勇者なんてのは、いちいち宣伝もしねぇし、店員も知ったこっちゃねぇもんな。

 

 「そういうことでエルザ、まずはその草を食え。全部じゃなくていいからサラダを食う位の量を飯と一緒に食べておけ」

 

 「わかりましたわ、野菜は体にいいですものね」

 

 エルザは朝食と一緒に出された毒消し草を小さくちぎって粥の上にかけて混ぜ込んで食べだした。

 

 「おう、合理的だな。じゃあ話の続きだな。そのモンスターの王様が魔王だ、そいつはモンスターを各地に放って人を襲わせたり、ダンジョンっていうモンスターの巣みてぇな物を作って物騒な状態にしたり、人の街を襲って滅ぼしたり、海を渡った先に大きな禍々しい城を建てたりしてるらしい」

 

 「ふぁい、ふぁるいひとでふふぁね」

 

 「ああ、人なのか分からんが悪い王だな。それで、その魔王を倒すのが俺たちの目的ってことだな。ここまでいいか?」

 

 「ングング。はい、魔王は悪いモンスターでそれを倒すのが目的ですわ」

 

 「おう、返事をする為に急いで食べるな。頷くだけでもいいからな」

 

 エルザはコクコクと頷くが、今は口に物が入って無くねぇか?まあいいけどよ。

 

 「で、これから俺たちはモンスターに襲われて困ってる街や人を助けながら、魔王の居場所を調べつつも、魔王を倒せる位に強くなっていくってのが大まかな筋書きだ」

 

 エルザは想像しきれていないのか理解出来ていないのか困惑に近い顔をしている。いわゆる王道RPGなんだがデータだったエルザにはわからん。そりゃ当然だ。

 

 考え込んでしまって食事の手も止まった。もっと簡単な説明ねぇ。

 

 「まあ簡単に言うと魔物をやっつけながら世界中を歩いて一番大きな魔物を倒せばいいってことだ」

 「それなら、わかりますわ。昨日と一緒ですわ」

 

 「うん、それならいい。魔王については今の時点ではこんなもんだ。行く先々で引き続き情報を集めよう」

 

 「モグモグ」コクコク。

 

 「次に聞いて来たのは近くの街についてだな、こいつは人の行き来があるから、街道が出来てるらしい聞くまでも無かった事だったってオチだな」

 

 「フーフー」コクコク。

 

 エルザは頷きながら食事を続けている。熱いのか?葉っぱ混ぜて冷えたと思うんだがな。

 

 「最後にとりあえずやるべきこととして、この近辺での困りごとを聞いてきた。こいつはシンプルだ最近モンスターが増えて畑を荒らしたり、街道を使う人を襲ったりとが危険だから退治をして欲しいって話だ」

 

 「それは得意ですわ!この街のモンスターを倒すんですわね!!」

 

 この街にモンスターはいねぇよ、毒消し草効き過ぎだろ。口にしたら即効だったわ。

 

 「ああ、そうだな。しばらくはこの街を拠点にしてモンスターを退治して、街の危険を減らしつつ強くなるってことだ」

 

 「ふぁい、ふぅふぉくふぁりふぁふ」

 

 何言ってるか、わかんねー!食いながら喋るなっつーの。もう常時酒でも飲ましてバッドステータスにしちまいたくなるな。まあいつもの調子に戻ったみたいだし、少ししたら周辺のモンスター退治でもしますかね。

 

 「よし、体調はどうだ?」

 

 「はい、もう電気百万ですわ!!」

 

 ・・・電気百万ってなんだよ、電力会社儲かりすぎだろ。

 

 「そっか、なら飯食い終わったらモンスター退治に行くか。あっ急がなくていいからゆっくり食えよ、俺はその間に買える武器がねぇか武器屋に相談にいってくるわ」

 

 「ふぁい、ふぁふぁひふぁひふぁふあー」

 

 「30分くらいで戻ると思うから、戦える格好に着替えて宿の前で待っててくれ」

 

 「ンゴ、わかりましたわ」

 

 ンゴってなんだよ、粥食ってたよなこいつ。まあいい切り替えていこう。

 

 「んでわ、いってくるわ。先にごっそさん」

 

 席を立って手をヒラヒラと振ると、真似をして手を振ってくる。ほんと見た目は完璧だよな。かわいいかよ。さて、モンスター退治にさすがにひのきの棒はねぇ。檜はいい木だけどさ、使っていいのは風呂だけだっつーのよ。そんなんだから街の近辺にモンスター溢れんだよ。

 

 とりあえず武器屋に行って、手持ちで買える武器を見繕いますかね。

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