第4話 無知と言う罪

『お金が無いなぁ、、、』

誕生日を過ぎ、また一つ大人になったと思いきや、とうとう全ての歯車が回らなくなり始めた


最初に尽きたのは生活費だった

財布の中身は228円

ジュースと菓子パンで無くなる全財産

こうなるとまず支払いが滞る

保険料、市県民税、年金

元々無職なハジメは無職の申請をしていたので元々対した金額を支払っていなかった

故に支払いを止めた所で一度の食費程しか出ない

次に犠牲となったのは、携帯代だった

お金が無いから付き合いが悪くなり、友人達と疎遠気味になっていた為に惜しい気持ちは全くなかった

これで3万円あるな、、、、

遊びに行きたいな、、、、由美になんか誕生日のお返ししてあげたいな、、、

頭の中に給料の入るまでの生活費

そんな発想は全く無かった

実家にいれば食事が出る、親が助けてくれる

疑ってなかったんだ

その日は最悪過ぎるタイミングで訪れる

『なぁ、ハジメ、、、金貸してくれんか、、、家族で助け合おうや!30万でええわ!頼むわ!』

3万円の全財産を遊びに使い、親父になんて言ってお金を借りようかなぁとしていた矢先の出来事だった

『え?親父?あれ?金の指輪は?高そうなセカンドバッグは?』

なんだかんだで上手い事やってるんだろう

なんでそんな風に思ってたんだろう

目の前に居るのは手に入れた資産、退職金その全てを浪費して生活水準だけを高めたどうしようもないクズ人間であり、クズ呼ばわりしてる自分自身も他人の財布をあてにして働かなかったクズ人間だった

こうなると転落は速度感を増していく


まずお金になりそうなブランド品、服、靴、アクセサリー

ゲーム、マンガ、家にあるお金になりそうなもの全てを売り始める


冷静に考えると一月分の生活費をなんとか確保して給料を得る為に働くのが妥当だが


不思議な事にこういった人間は、たまには良いもん食べようやとなる


ハジメはありとあらゆる物を売り捌いて得たお金をわずかに1日の食事で使い果たした


父は、次は何を売って金作ってくれるんや?

もうそこには父の面影は無く、ハジメの目には寄生虫の様な存在に感じていた


次の日、ハジメはリサイクルショップに居た

以前買い物した際に仲良くなった店員さんのコネで雇ってもらえる事になった


ありがたい事に昼ごはんの弁当が給料天引きで食べる事が出来る、金の無いハジメにはこの上ない条件だった


接客業の経験は無かったが、持ち前の明るさで意外な手ごたえを感じていた

『あれ?天職じゃね?』

周りの先輩達からも、ハジメちゃん!流石だねぇ!頼りにしてるよ!

今まで言われた事が無いお褒めの言葉に素直に天狗になっていた


でもハジメの心は穏やかじゃなかった

仕事は見つけたが、給料はまだまだ先

家に帰ると毎日親父に売れる物無いかと部屋を物色されてぐちゃぐちゃにされた部屋をウンザリして見る

毎日家に帰るなりお決まりの言葉

『お前だけ!いいもの食べやがって!』

仕事して無い親父になんでそんな事言われなアカンねん!死ねよ!

もはやプライベートは最悪としか言えない状態だった

最初の給料日は最悪だった

最初の給料は残業手当も多く、手取りで25万円あった、ハジメは久しぶりにまとまったお金を手にした気分だった

『たまにはクソジジイにもビール位飲ましてやろうかな』

大嫌いな親父にすら優しくなれる程の心の余裕があった


しかし家に帰ると余裕は殺意に代わる事になった

家に帰るとハジメは違和感を感じていた

『何故俺の部屋だけ電気ついてるんだろう?』

部屋を開けたら、そこには息子の部屋を自分の部屋として占拠して、文句を言うだろうとすでに臨戦態勢といった表情のクソジジイの姿だった

『お前だけいい部屋に住みやがって!』

いい部屋じゃない、ゴミを溜めて無いだけ

もはや家でゴミの匂いがしない部屋はハジメの部屋しかなく、そのハジメの部屋も何日も風呂に入っていない、加齢臭の塊と化したジジイの体臭に汚染されていた

ハジメは何も言えなかった、買ってきたビールを涙を堪えてクソジジイに投げつけた

そのビールを嬉しそうに飲みだす親父がもう人に見えなくなった

そしてジジイはまたも口を開き始める

『これ、請求書来てるぞ』

家賃、電気、ガス、水道、電話全てのライフラインが来週までに支払わないと止めますの赤紙となって送られてきた

すでに3ヶ月前から破産していたのだ

金額を計算したら皮肉な事にクソジジイの為に買ったビール分だけ足りない、、、

もう発狂しそうだった

一万歩譲って、自分も住んでいる家だから支払わないといけない金は支払う

十万歩譲って自分だけ働いてても構わない

百万?1億?どんだけ譲っても、クソジジイのせいで状況が悪化するのは許せなかった

次の日、仕事先に午前中の休みをもらい、支払いに行く事にした

『家賃は、、、まぁ絶対だよなぁ、、、』

そう支払いは給料全額でも足りない

正確には自分で勝手に気を利かせた分だけ足りなくて、でもそんな事絶対認めたくない

『やっぱ、電話かなぁ』

支払いの用紙の都合で、家賃しか払えなかった

『1日休まなきゃダメだな、、、』

仕事が、終わり家に帰ると

泥酔した親父が出迎えてきた

『なんでビール買ってきてないねん!』

何様なんだろうか、、、

『毎日買えんわ!昨日買ったやろ!』

すでに全てクソジジイが飲み干していた、、、

『なんで一人で全部、、え?食料品、、、』

簡単に食べれる物は全て無くなっていた

ゴミの量を見ると大半を隠したんだろう

怒鳴りつけようとした時にクソジジイが言葉を遮り

『ほら、さっさと数万円よこせ!ワシは居たくもない家にいてやってるやぞ!』

頭の中で思考が全て吹き飛んだ

オレニカゾクナンカイナイ

ハジメは荷物を紙袋に詰め込み、無言で家を飛び出した

ハジメの顔からは表情がなくなっていた

まるで何もなかったかの様に

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