第2話
目が覚めた時にいたのは燃えている家の前、、、
ではなく、私には大きめのベッドの上だった。
体をゆっくり起こして部屋を見渡すと、窓がある反対側の壁に扉があった。
窓の外は赤くなっており、夕暮れ時を示していた。
「目が覚めたんだね」
窓の外を眺めていると扉の方からそんな声が聞こえて振り返るとそこには帽子の男の人が立っていた。
あれ、女の人は?
なんて考えながら帽子の男の人を見つめていると帽子の男の人は茶色い目を細めて優しい笑顔で私のいるベッドの近くまでやってきた。
「自己紹介がまだだったね、俺は犬桜忍って言うんだ。
この病院の隣にある桜の丘園っていう施設のお手伝いをさせてもらってるんだ。
って言ってもまだ難しいかな?
忍って覚えてくれると嬉しいな」
そう言うと犬桜さんは帽子を脱いだ。
「しのぶ、、、?」
「そうだよ」
そう言って微笑む男の人、、、忍は、少し長めの茶色い髪から見える耳に沢山のピアスがついているのがとても印象的な人だった。
「わたしはエリカ
なまえ、、、2こもないからエリカ」
それ以外の名前を持っていなかった。
勿論、忍のように自分の名前を2個も知らない。
「2個?
あ、苗字の事かな、、、?」
忍は、そうつぶやくと一瞬怒ったような顔をして、ゆっくりとベッドの近くにある椅子に腰を下ろした。
視線の高さが私とあまり変わらなくなると入ってきたときと同じ優しい笑顔で私に話しかけた。
「知ってるよ。
今日は、エリカちゃん君をお迎えに来たんだ」
「おむかえに?」
訳が分からず首をかしげると忍は困ったような顔をした。
「ちょっと、難しい話になると思うけど、、、
エリカちゃん今いくつ?」
「いくつ、、、9さい」
指を9本立てて答えると少し安心したような顔で私を見た。
「そうだね。
9歳の女の子は、本来なら学校ってところに通ってるはずなんだ。」
「がっこう?」
「そう、同じくらいの年のお友達と一緒に勉強したり、遊んだりするところだよ」
「でも、わたしはいないこだよ?」
私がそう言うと忍はとても苦しそうな、辛そうな顔をして私の頭に手を乗せた。
「今日からエリカちゃんはいない子なんかじゃないんだよ」
「、、、ほんと?」
「今日からなんかじゃない、、、
本当は最初からエリカちゃんはいるんだよ。
ごめんね、遅くなって」
私の質問に答えながらゆっくり、とてもやさしく頭をなでてくれた。
物語で読んだとこのある、人と人がする動作。
良い子にはしてもらえるとあった動作。
胸いっぱいに温かいものがたまってくるのがわかる。
「っふ、、え、、」
私はいつの間にか涙を流していた。
そんな私を強く抱きしめてくれた忍さん。
私は、この時生まれて初めて人のぬくもりを知った。
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