第26話 一緒に頑張ろう
「おじゃまします」
「どうぞ」
母さんには部屋に来るなオーラを放ちながら階段を上り、2階にある僕の部屋へと
初めて部屋に招き入れる女の子が彼女の妹というのは何とも不思議というか彼女本人の差し金でなければ完全に浮気だ。
しかも
ウソで塗り固められた勉強会の開催に冷や汗が止まらない。
「……ごめん
「
「ううん。勝手に僕の彼女っていう設定にしちゃって」
「それは大丈夫。すぐじゃなければ髪が伸びたって言えば誤魔化せると思うよ」
「そうじゃなくて……」
爽井くんとの関係について触れようとしたが言葉に詰まる。
一応表向きは
もしかしたらあの日、僕と里菜に目撃された自覚が
「えっと、とりあえず勉強しようか。うん。そうしよう。実は僕も
「そうなんだ。じゃあ、わからない問題があったらお互いに教えられるね」
「そういう意味では僕がお世話になるかも」
「お姉ちゃんに比べたら全然だよ。だからごめんね。お姉ちゃんじゃなくて」
両手を胸の前で合わせてウインクしながら謝る姿はどんな大罪を犯していたとしても許してしまうくらい可愛い。
顔や声は同じでも
根柢の性格が態度にもじんわりと現れるのだろうか。
もし
「あ、そうだ。
一応最初は向かい合わせに置いておいたけど、勉強の進捗状況によっては隣合うことも想定して横に長いテーブルを引っ張りだしておいた。
これはあくまでも彼女と勉強するための設備。
相手が彼女の妹となれば距離感に気を付けなければならない。
お客さんにはちゃんとした机とイスを使ってもらって、僕がクッションを使うのがおもてなしというものだろう。
「いいよいいよ。せっかくだからこっちで一緒に」
「まあ、
僕はちゃんと距離を保つ提案をした。あくまでもお客様である
わからないところを教え合うのにも同じテーブルの方が都合がいいしね!
「じゃあ、座って。ドア側と窓側どっちがいい?」
「わたしが窓側でいい? そっち眩しそうで……
「大丈夫。この日差しには慣れてる。なんたって僕の部屋だから」
「う、うん。そうだね」
急に顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
そのリアクションを見て
「なんか、ごめんね。この前告白を断ったのに……」
「いいんだ。そのおかげ……って言うのも変だけど
「ふふ。お姉ちゃんが毎日楽しそうなのがわかるかも。
「かわいい?」
「うん。年下っぽいっていうのかな。頼りになる時と守ってあげたくなる時のギャップが大きいかも」
「そ、そうなんだ……」
まさか
「
「それは
「は~い。じゃあ一緒にお勉強はじめましょうね~」
あの日の思い出を掘り返そうとしたら露骨に話題を切り替えられてしまった。残念なような、ホッとしたような複雑な気分。
この部屋で膝枕なんてされたら一線を越えてもおかしくない。
でも、
告白するくらい好きになった女の子のことだから、それくらいは自信を持って言える。
「年下ってだいぶ年下じゃない?
「それは
「そっか。素敵なお姉さんなんだね。でも勉強を教わるのは?」
「ライバルに教えてもらうのはイヤ」
むすっと頬を膨らませる
時折見せる子供っぽいところも双子の姉妹らしく似ているポイントだ。
僕は
でも、こうして
兄弟がいない自分にはそういう存在がちょっと羨ましい。
「お姉ちゃんに聞いたんだけど
「うん。文系でも理系でも使う科目だし、どの範囲を勉強してもテストで使えるからさ」
「じゃあわたしも英語にする。数学だと100点取っても引き分けになりそうだし。お姉ちゃんでも英語はなかなか満点にならないみたいだからチャンスはある!」
「絶対に正解はこれだけ! っていう問題ばかりじゃないもんね。先生のさじ加減というか」
「あとで解説を聴くと授業中に言ってたなって思うんだけどね」
制服のブラウスをきちんと着こなす
思わず視線がそっちに行ってしまうのをグッと堪えて彼女の妹の目を見て話すように努める。
告白する前はちょっと話すだけでもあんなに緊張していたのに、今では
部屋に招く前は万が一にも間違えが起きたらどうしようなんて心配していたけどそれは杞憂に終わりそうだ。
「とは言えまずはテスト範囲からやろうかな。お姉ちゃんなら絶対に基礎固めからするんだけど」
「僕は最初から解いていく。テストまでまだ時間があるのに勉強をする意味はきっとここにある。それに、お互いに別々のところからスタートすれば教え合うだけで勉強になりそうじゃない?」
「たしかに。やっぱり恋人って似てくるのかな。ちょっと発想がお姉ちゃんっぽい」
「一緒に問題集を選んだからね。買ったのは
「それでも、やっぱりこの問題集一つ取ってもお姉ちゃんの影響なんだよ。すごいなあ。もう彼氏を自分色に染めちゃって」
「そんなに染まってる?」
「うん。わたしを彼女設定にしちゃうところとか。普通は思い付かないし、思い付いても実践しないよ?」
やっぱり彼女設定はマズかったんだろうか。
剣道部の稽古中にもたまに現れるんだよな。うっぷんを晴らすがごとく面を打ちまくる黒いオーラをまとう
「設定でも今はわたしが彼女なんだから、お母さんにバレないようにちゃんと彼氏っぽくエスコートしてね?」
「は、はい」
気迫に負けて返事をしてしまったけど、彼女の妹を彼女扱いするのって一般的に浮気だよな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。