第17話 めちゃくちゃ
「まぶしっ!」
約2時間の上映が終わり、外に出ると日光が容赦なく攻撃を仕掛けてきた。
その攻撃に対して僕ら人間は慣れるまで耐えるしかない。
人類誕生から今日に至るまで、人間というのは本質的にはマゾなのかもしれない。
「いや~すごかったね。ドキドキしちゃった」
「ほんと、すごかった……」
「
「さすがにアレはない」
劇中で主人公の男は職場の若い女性に誘惑され、特に迷うことなくホテルへと直行した。
これはまだかわいい方のエピソードで、わざわざ奥さんが寝てる隣でエッチしたり、お風呂に入っている間を見計らってタイムアタック的にエッチしたりとまるでAVみたいな展開だ。
AVと違うのは裸の大部分がうまく隠されていて、一応R-15で審査を通っている理由は理解できた。
「あたしは別に構わないよ? 寝てる横で
「そんなことしないから! 家にはご両親だっているでしょ」
「あー、そっか。残念」
「残念がらないでよ。あと、
「わからないよ? あたし達双子の姉妹だし」
「性癖が歪んだのは姉だけだと信じたい……」
そもそも
そんなお姉さんを追いかける
付き合ってもない、どころか前日にフッた男に膝枕してくれたけど変態ではないと思う。
「ところで
「うん?」
「家にはあの映画よりも過激な映像があるの?」
「げほっげほっ!」
「あ、あるんだ。今度一緒に見よう」
「ダメダメ。18歳未満は禁止」
「
「うぅ……ダメなものはダメだから!」
表向きはそういうものを持っていない設定にしておかなければならない。
ほとんどの大人は、興味を持つのは仕方ないと黙認してくれるけど、たまに異常に厳しい大人も存在する。
さすがにエロ全面禁止をくらったらどこかで暴発しかねないので、
「
「あれって、
その隣には、どこかで見たような男子の姿もある。
「なるほどなるほど。
「遠くてちゃんと見えないけど、もしかして
「
「うん。一年の時に同じクラスだった。バスケ部なのにアニメとかにも詳しくて結構話したよ」
「かつての友が強力な恋のライバルになる。青春だねえ」
「僕は
彼女持ちの男が恋のライバルだったら相関図の矢印がおかしなことになる。
それに
男から信頼される男は彼氏としてオススメできる。
じゃあ僕はと問われると、その理論に当てはまらないのが残念でならない。
誰か僕を信頼できる男として推薦してくれ。
「あたしが家を出る時は何もない休日みたいなオーラを出してたのに、
「妹の成長に感激したところで終了にしようか。よそはよそ、うちはうち」
「
「そう言われると反論できないな……」
学年トップと口喧嘩してもうまく言いくるめられてしまう。
日頃の勉強って予期せぬ場所で役立つものなんだな。
素敵な彼氏を目指すのはもちろん、
「まさかこんなに早く男を引っ掛けるなんて。お姉ちゃんビックリだ」
「教室で恋愛解禁みたいなことを言ってたしね。こんなにも行動が早いのはちょっと驚きだけど」
「
「いや、それはさすがにダメだって」
「妹の彼氏候補がどんな男か……は、同じクラスだからよく知ってるんだけど、こういうの楽しいじゃない」
「
作中でメインヒロインとなる奥さんが旦那さんを尾行するシーンがあった。
実はその時点で奥さんのすぐ横でエッチを済ませていたんだけど……それは置いておいて、尾行した結果、不倫相手とのエッチを目撃してしまって運命と思考がどんどん狂っていった。
思い返すとあの男、不倫相手とめちゃくちゃヤってるな。
ドロドロした愛憎劇よりも男子高校生的には濡れ場の方が印象に残っている。
「
「あの二人は絶対にヤラないし、僕らもまだ早い!」
「
「その呼び方は子供ができたらね」
「子供……」
下腹部をさすりながら意味深に頬を赤らめないでほしい。
まだ何もヤってないんだから絶対に子供はできていない。
でも、まともな恋愛をして普通の結婚をして家庭を築く未来を少しでも想像してくれたのなら嬉しい。
だってそれは、僕が
「そ、そういう意味じゃなくて……あっ!
「結局尾行するんだ」
「まあ、気にならないって言ったらウソになるし」
「さすがあたしの彼氏。話がわかる」
「彼女に毒されたってことかな」
「ひっど~い。あたし色に染まったって言ってよ」
そういう表現もあったかと反省した。
奥手な僕が尾行なんてしちゃうのは完全に毒された悪影響だと思うんだけど、それで彼女と楽しい時間を過ごせるのなら悪くない。
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