第3話 広まる噂
好きな女の子にフラれてその姉と付き合うことになったらしい翌日。
空はいつもと同じように青く広がっていた。
まるで昨日の出来事なんてちっぽけだと突き付けんばかりの晴天だ。
「夢だったのかな」
双子姉妹のうち僕のスマホに連絡先が登録されているのは妹の仁奈さんだけ。
高校に入学して妹と同じクラスになり、双子の姉に対抗心を燃やす姿に惹かれていった。
だから姉の方は噂でしかその存在を知らなかったし、たまに遠目で見た時は姉妹揃って巨乳だなと感想を抱いただけで接点は全くない。
そのはずだったのに世界は一変した。
一変したはずなのに何も変化を感じられない。
もしかしたら告白したのも夢でまだフラれていないかもしれない。
やったね。もう一回告白できるよ! どうせフラれるんだろうけど。
「すみうらあああああああ!!!」
「おわっ!」
もしナイフを持っていたら間違いなくズブっと体の奥まで刺さりそうな勢いで突撃してきたのはゲスな友人・
「シコ太郎どうした」
「マジか! お前マジなのか!?」
「だから何がだよ」
エロが絡むと暴走するので話が噛み合わないことは多々あるが今日はひときわ酷い。
「
「本当だったのか!?」
質問に質問で返すという僕の方こそ会話のキャッチボールができていない。
それもお互い大声なのですれ違う人がこっちを見ている。
会話内容が下ネタじゃなくて良かったと心の底から思う。
「いや、聞いてるのはこっちだぜ。たぶんだけど学校中がこの噂で持ちきりよ」
「えーっと、シコ太郎はどこでその情報を?」
「クラスのグループLINEだけど?」
「僕も入ってるよね?」
スマホを取り出して確認しても何の通知も来ていない。
クラスメイト全員、つまり僕や仁奈さんも入っているグループは音沙汰なしだ。
「緊急でお前抜きのグループが今朝作られた。噂の真相を確かめるべく絶対に登校させるためにな」
「僕、今から帰ろうかな」
「げすげすげす。それを阻止するために使わされたのが俺なのだ」
写真部はいろいろな場所に撮影に行くから体力勝負なんだと前に聞いたことがある。
そうは言っても文化部の中で肉体派だろうと考えていたんだけど、山奥の秘湯で全裸のお姉さんを撮影できる可能性を夢見て鍛えたらしく生半可な運動部よりも力が強い。
「あー、わかったわかった。そのわざとらしいゲス笑いが出た時のシコ太郎には勝てんよ。ちゃんと学校行くから」
「さすがは我が友。その意気や良し」
彼女バレしたから学校休むなんて言ったら母さんに何を言われるかわからないしな。
「で、実際どうだったんだ?」
「どうって、何が?」
「
「なななな何を言ってるのかなシコ太郎くんは」
付き合って即おっぱいを揉むなんて僕みたいなタイプには無理だってわかっているだろう。
昨日のだって僕からじゃなくて
「
逃げられないように右腕でしっかりと肩を組み、空いた左手でシコ太郎は一枚の画像を僕に見せつける。
「はあっ!?」
ゲスな友人のスマホにはまるで夢のような時間が切り取られていた。
誰がどう見ても気持ち悪いんだけど幸せだったのは間違いない。
ちゃんと彼氏であると宣言しなかったら報復された?
話が違うじゃんよ。
「
「握ってねーよ! むしろ握られてるのは僕の方だよ」
「なに!? すでに握られてるというのか」
「……僕が言ってるのは弱みの話だぞ?」
「なんだ。付き合って4秒で突き合ったわけじゃないのか」
「4秒で突き合ってたとしたら学校の敷地内の屋外だよ」
寝取り以上にフィクションみたいなプレイだ。
しかもそれを自分からバラすのだとしたらいよいよ変態になってしまう。
いろいろなプレイに興味はあるけどまずはラブラブエッチからスタートしたい。って今はそういう話じゃない。
「まあ、あれだ。やっぱり妹の方が手を出しやすい雰囲気はあるわけよ。反対に姉は遠くから鑑賞する用的な? たぶん囲まれてボコられることはないから安心しな」
「こんな画像が出回ってる時点で精神的にボコボコにされてるんだが」
「あのおっぱいを揉めたんだからちょっとは我慢しろや!」
「ひいっ!」
シコ太郎はゲスい話ばかりするけど基本的に良いやつだし無害だ。妄想と想像が過激なだけで実際には手を出さない。
女子からしたら敵にしか見えないだろうけど男子にとっては最高の相棒だ。
だからおっぱいを揉んだことに対してここまで怒りを露わにされて正直戸惑っている。
「おっぱいってなあ、俺にとっては目の前にあるのに架空なんだよ。手を伸ばせば揉めるのに、それをしたら人生が終わる。だからグッと我慢して一人部屋で発散させている。それなのに
怒っていたかと思えば今度は泣きだした。こいつの情緒はどうなってるんだ。
それに泣きたいのはこっちなんだけど。
好きな子にフラれるわ、恥ずかしい写真が流出するわ、変な噂が流れるわ……まあ全部事実なんですけどね。
「教室に着いたら怒涛の質問攻めだ。せいぜいおっぱいの感触を思い出して耐えるんだな」
「これがおっぱいの代償か」
マジでどうしてこうなってしまったんだ。
質問攻めの前にどうにかして
シコ太郎が無駄に体重をかけるのでリアルに足取りが重い。
ああ、
たしかにおっぱいの思い出があるとだいぶ強く生きられる。
おっぱいだけが僕の心を支えてくれていた。
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