第2話 恋に落ちた理由
「ん??? ねと……? え? なんて?」
今、寝取られたいって聞こえた気がするけど気のせいだよね?
後半部分の彼氏になってくださいはハッキリと聞こえたけど。
「だから、
「お、おう」
恥ずかしげもなく両想いになるとか言わないでくれよ。照れるだろ。
「お互いに好きで好きで仕方がない状態になったら、
「なんで!?」
たまにSNSで見かける鼻毛漫画のツッコミみたいな顔になったと思う。
マジで目玉が飛び出そうな勢いで大声を発してしまった。
妹の
言葉は音としてしっかり脳に届いてはいる。
だけど、あまりに突飛に提案でそれを咀嚼して理解できるところまで至っていない。
寝取りって一般的にダメなやつだよね? エロのジャンルとして確立はされてるけどリアルでは絶対に修羅場、フィクションでもろくなラストにならない地獄のジャンルだよ?
「改めて確認するけど、
「そ、そうだよ」
「うん。やっぱり合格。ちゃんと
「ちゃんとエッチってどういうこと!?」
「え? さっき擬人化した蚊にチューチューされたいみたいなこと言ってなかった? もう! 一体ナニをチューチューされるんだか」
手で口元を押さえてムフフと笑う。
妹の
こういうゲスな話は男子の中では英雄になれても女子の耳に入れば一気に信頼を失ってしまう。
そうなれば
「
「はぁつ!? か、彼女がいたらそっちを優先するし」
「でもまだ
「それは……今は彼女いないし」
「だから一旦あたしの彼氏になってよ」
「話のつじつまが合ってない!」
姉は学年トップの成績の持ち主という認識だったけど勘違いだったかな。
僕に彼女がいなくて今もまだ
「恋人を寝取られるとね、ショックから自分の脳を守るためにいろいろなホルモンが分泌されるんだって。日常生活では絶対にありえないようなすごい量の。あたしにとって、それだけが合法的に得られる最後の快楽なの」
「寝取りは合法かどうか怪しいよ!?」
「んー? でも結婚する前なら不倫じゃないでしょ? しかもあたしは
「えっと、双海さんは僕と妹さんが付き合うことに賛成なの?」
「もちろん。あたしは
「双海さん……」
めちゃくちゃ妹想いのお姉さんでちょっと涙が出そうになった。
これまで耳に入ってきた寝取られという単語も実は字が違う全然別の言葉なのかもしれない。
学年一位クラスにならないと知らない難しくて崇高な言葉を僕は最低の寝取りだと勘違いしている可能性が出てきた。
「双海さんじゃなくて名前で呼んで。紛らわしいからみんなそう呼んでるよ」
「じゃあ。
「なあに?」
「
「それはもちろん、
つまり、
「
「そう! あぁ、楽しみだなあ。初めての彼氏ができた上に寝取られ体験も待ってるなんて。うふふ」
恍惚な表情を浮かべる
でも僕は体目的じゃない。なんなら好きなのは妹の方だ。
外見がものすごく似ていても中身は全然違う。姉とはちゃんと話したのは今日が初めてだけどよーくわかった。
「と、いうわけで」
「へ?」
制服の上からでも明らかにわかる柔らかな部位に頭は混乱しつつも股間は素直に大きく固くなっていく。
パシャッ!
「ちょっ! 今写真を」
「うん。ほら、綺麗に撮れてるよ。
「うわっ……」
多少ニヤけている自覚はあった。だって初めてのおっぱいがこんなに大きいんだもの。
これから先の人生で他のおっぱいに触ることがあったとして、僕はそれをおっぱいと認めることができるだろうか。
それくらい僕のおっぱいに対する価値観を決定付ける衝撃的な出来事なんだからそりゃあ鼻の下だって伸びますよ。
想像よりもだいぶ気持ち悪い笑顔を浮かべているのはショックだけども……。
「この画像を拡散したら
「ぴえんじゃないよ。原因は
「だ・か・ら。あたしと本気で付き合って」
「うわっ!」
すでに付き合っている二人であるかのごとく迷うことなく僕の体に密着する。
むにゅっと潰されたお胸がしっかりと当たっていて、股間の膨らみは最高潮だ。
固くなった部分が
「もちろんあたしが彼氏を寝取られたいって願ってるのは秘密だよ? 計画を知らずに本気で
「それは成長なのか? 人としてダメな方向に進んでるとしか思えないんだけど」
「もちろんあたしと
「わ、わかったから。とりあえず一旦離れよ?」
「本当にいいの? あたしのおっぱい、
双子と言っても体型は微妙に違うらしい。勉強も運動も勝っている姉なら胸のサイズだって勝っていてもおかしくない。
本当は揉みたくて仕方がなかったおっぱいよりも大きいモノが今自分の体に密着している。
そんな幸せを簡単に手放していいのだろうか? いや、よくない。
「ふふ。あたしのこと、少しは本気になってくれた?」
「ぼ、僕は妹の……
「そういう頑固なところも素敵だよ」
耳元に息を吹きかけられると同時に体が一気に軽くなった。
心地良いぬくもりは再び不快な蒸し暑さへと戻る。
「今日からよろしくね。あたしの彼氏さん」
長い髪が初夏の風に揺れる。
同じ空間にいるはずなのに、彼女だけが爽やかな空気をまとっていた。
「マジで彼氏なのかな」
「マジだよ。大マジ! また明日ねー!」
学年トップの万能超人は聴力も良いらしく、ボソッと漏れ出た独り言にもしっかり返答してくれた。
いつも周りに誰かがいて、余裕の笑みを浮かべる双子姉妹の姉。
僕が好きになった女の子と似た顔を持つ姉が見せた子供っぽい笑顔に、ちょっとだけ惹かれている自分がいた。
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