第19話 ファン様を探せっ! 前編
魔法少女を見守る会の合宿1日目。
怪人が現れるのは夜になってからということで、昼から夕方にかけて行われたのは、なぜ魔法少女は戦うのか……という講義だった。
上下部長が使われていない教室の黒板に、これまで判明していることをまとめて書いている。
「いいかい? 怪人の最終目的が一体何かわからないけど、彼らは人間を奴隷にしようとしている!! 魔法少女は、そんな横暴な怪人族から我々人間を守ってくれている救世主なんだ!! ハァハァ……」
そして、熱く魔法少女について語る上下部長を睨みつけながら、俺の後ろに座っている紅会長がボソリと呟く。
「……何が救世主よ、くだらない。こっちの事情も知らないで……」
俺はヒヤヒヤせずにはいられない。
いや、確かに怪人族の事情なんて知らないけど……
その怪人族の女王の隣で、魔法少女が座って熱心に講義を聞いているんだぞ?
っていうか、魔法少女自身も、実は怪人族のことを知らないのか?
実はどうして戦ってるのか、知らないとか……?
いや、そんなわけないよな、もう何年も魔法少女やってるって言ってたし————
「魔法少女には青い鳥のマスコットキャラクターがいるわけだ。目撃者の話によると、どうやら喋るらしい。この鳥が、怪人の現れた情報をキャッチして、魔法少女に伝えているようだ……ハァハァ」
上下部長は黒板に大きくファンと書いて、黒板をバーンと叩いた。
「そして、最近現れたこの仮面男! 新たに現れた魔法少女側の人間のようだが……我が部員の一人が偶然聞いた情報によると、男の名前はどうやらファンというらしい。ハァハァ……魔法少女がそう呼んでいるのを耳にしたというわけだ。本合宿の目的は一つ! この仮面の男・ファンよりも、先に怪人を見つけて、魔法少女を助ける!! 絶対にだ!!」
何が助けるだ……たとえ助けたとしても、そのあとに何をするかわかったものじゃない……
普段よりもカメラ機材が多いし、これはもう徹底的にやろうとしているじゃないか!!
そう思っていると、不意に背中をペンでつつかれた。
「ねぇ、メースケくん……ファンさ…………えーと、ファンって方は、ここの部員じゃないの?」
「えっ……? えーと……ち、違うよ。この部に、ファンなんてそんな怪しい奴はいないよ……」
守夜美月にまた話しかけられた!!
それも、小声で……コソコソと……!!
「そうなの……? おかしいな、私確かに見たのに……」
「な、なにを?」
なんだろう?
俺、何か気づかれるようなことをしただろうか?
「部活発表会の時、ファン様一番左から二番目にいたの。みんな同じ仮面をつけて、同じマントをしてたけど、私にはわかるわ……」
な、なんだって!?
あの状況で、本物がいることに気がつくなんて……
バレないと思ってたのに……でもちょっと、嬉しいな。
「今の話、聞き捨てならないわね……」
俺たちのこそこそ話が聞こえていたのか、紅会長は、急に立ち上がって黒板の前までつかつかと歩く。
「な、なんだ! 紅! ハァハァ……今は大事な講義の時間で————!」
上下部長に向かって、紅会長は言う。
「あなた方が、魔法少女を見守る会としての成果として、魔法少女をサポートしていたという事実が怪しくなったわ。直接魔法少女のサポートをしているわけじゃないってことよね?」
「ハァハァ……そ、それは…………そうだけど……」
上下部長はどうやら、熱くなりすぎてこの場に紅会長がいることをうっかり忘れてしまっていたようだ。
焦りながらなんとかごまかそうとしているが、部長は部活の成果をでっち上げて廃部の危機を乗り越えた。
反論できない。
頭に巻いているバンダナの色が、汗でどんどん濃くなっている。
何してるんですか部長!!
「やっぱり、この部活は廃部よ。こんな合宿も、今すぐにでも取りやめて————」
「ちょっと、待ってください!!」
ここで声をあげたのは、守夜美月だった。
授業で発言する時のように、右手を上にすっとあげたまま、彼女は続ける。
「ファンさ……ファンは……仮面の男はこの中にいるはずです!!」
その場にいる全員の視線が、彼女に集中した。
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