第10話 魔法少女に迫る影
紅会長のせいで、魔法少女を見守る会は存続の危機になってしまった。
来月の夏休みが始まる前に行われる部活発表会で何かしら成果を上げなければ、絶対に廃部にすると紅会長は言う。
俺としては、魔法少女の正体を暴こうとする部活がなくなるのだから万々歳だと思ったのだけど、よく考えたらこの部活がなくなれば、先輩たちの動きが俺にはわからなくなってしまう。
つまり、魔法少女の目撃情報がまた増えて、守夜美月が魔法少女であることがバレてしまう危険性が上がるということだ。
それは何としても、阻止しなければ!!
「ハァハァ……いいかい!? 次に魔法少女が現れると予想されるのは明後日の夜だ。正体はまだしも……せめて魔法少女が戦っている写真か動画だけでも死ぬ気で撮るんだよみんな!! ハァハァ……」
「「オオーーーっ!!!」」
先輩たちと扇が拳を突き上げながら呼応する。
一応俺もそのノリに合わせて、右手を上にあげた。
どうしよう……どうすればいいんだ!!!?
そして、魔法少女が現れると予測された当日、俺はなかなか眠れず、ほとんど徹夜の状態で当日の朝を迎えた。
「ん? なんだこれ……?」
いつもより30分くらい早く家を出て、学校へ向かっているとピンク色のキラキラ光っている何かが横断歩道の前に落ちてる。
拾い上げてよく見ると、ハートの形をした1センチ程の物体だった。
「宝石? ガラス?」
ガチャガチャの景品みたいに見えて、近所の子供が落としたのかと思ったけど、その物体は横断歩道を渡った先にも落ちていている。
ヘンゼルとグレーテルか?
もう一つ拾い上げながら、まだあるのかもしれないとあたりを見回すと、落ちてはいなかったが、見慣れた後ろ姿があった。
同じ学校の制服を着た、小柄で黒髪おかっぱの女の子。
守夜美月が俺の数歩前を歩いた。
い、いつも早く登校してると思ってたけど、この時間だったのか!!
と言うことは、毎日この時間に登校すれば、実質一緒に登校しているのと同じ……!?
いやいや、何を考えているんだ……!!
しっかりしろ俺!!
……あぁ、歩いてる姿も可愛いなぁ————
————って、え?
彼女の歩いた場所に、あの小さなハートが落ちてキラリと光る。
もしかして、魔法少女の何かか??
それが何かはわからなかったが、とにかく俺は彼女が落としていったそれを拾いながら、気づかれないように一緒に登校した。
* * *
「いいかい、新入り君はここで魔法少女の姿を捉えるんだ! ハァハァ……」
「は、はい。わかりました!!」
「うん、頑張ってくれたまえ! ハァハァ……次、君はこっちだ!!」
「はい、部長!!」
魔法少女が現れると予想される時間になり、俺は部長の采配で学校のそばにある公園のタコの形をした遊具の上に隠れていた。
夜でもしっかり写すことのできる高性能なカメラを持たされて。
色々考えたけど、戦っている姿を捉えるくらいならなんとかなる。
その後を誰にも追わせないようにすればいい。
部長が撮影に用意していた追跡用のドローンは、俺がわざとバッテリーを少なくしておいたから大丈夫だ。
戦っているところを撮影する。
そう、それだけ成功したら、あとは全力で魔法少女を守るために、俺はまたあの仮面とマントで変装して邪魔をすればいいだけ。
簡単なことだ!!
俺が配置されたこの場所からは、他の部員たちの行動も全て見える。
視力のいい俺には、絶好のポジションだった。
逆に、部員側からは暗い上に距離があるから、俺が何をしているかまではわからないだろう。
「さぁ、こい……魔法少女!」
俺がそう呟くと、まるで計ったかのように、悲鳴が聞こえてきた。
「キャーーーーっ!!!」
甲高い女の悲鳴。
今回も男じゃなくて、女だな……
俺は悲鳴が聞こえた方向を見た。
「……って、あれ?」
同じ学校の制服を着た、小柄で黒髪おかっぱの女の子が、チョウチンアンコウみたいな怪人に捕まっている。
「…………も、守夜美月!?」
魔法少女が、怪人に捕まっていた。
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