第3話 魔法少女を見守る会 後編
魔法少女を見守る会というなんとも素晴らしい部活に入部した俺は、授業中は中学の紺色からグレーに変わった新しい制服を身に纏うのあの子の斜め後ろ姿を見つめていた。
今まで隣のクラスということもあり、どんな感じで過ごしているのかまではよくわかっていなかったけど、離れた席からでもこの視力が人一倍いい俺の目に映るあの子はとてもとても可愛い。
教師のつまらない話にも、真剣に耳を傾けている姿、中学からの同級生か、それとも新しくできた友達かわからないけど、クラスの女子たちと休み時間に雑談している姿も、もちろん最高に可愛かった。
一昨日魔法少女として現れたあの子の姿は、この控えめで上品な雰囲気からは想像できないほど派手なほとんど全身ピンク色。
きっと魔法少女を見守る会に入れば、またあの子のあんな姿をこの目で拝めるに違いないと、そう期待していた。
しかし、実際に入部してみると、想像と現実は違う。
「どうだァ……ハァ……よく撮れてるだろう? ハァハァ……」
扇と一緒に部室へ行くと、妙に息の荒い部長の
頭に巻いているバンダナに額から汗が染み込んでいるのが少々気持ち悪かったが、そこはおいて置くとしよう。
部長の話によると、魔法少女の目撃情報は結構ある。
俺のように実際に誰かを助けている姿を目撃した人もいれば、助けられた側の人もいる。
怪人族という怪しい悪の種族から密かに俺たち人間を守ってくれているのが、魔法少女というわけだ。
だが、どういうわけかこれだけ目撃者がいるにも関わらず、魔法少女の正体は不明だった。
「よく撮れて……って、顔が全然写ってないですけど……」
部長が見せてくれた写真には、魔法少女の姿が映ってはいるが、どれもこれもピントがあっていないというか、どこかぼやっとしているものばかり。
これだけカメラの技術が発達している中で、それも動画だってスマホさえあれば誰でも手軽に撮影できるというのに、どうしてどれもこれもこんなにぼやけているのか……
「これだから新入りは……ハァ……魔法少女にはな、魔法がかかっているんだ。どんなに高性能のカメラを用意しても、はっきりと顔が映らない。それに、魔法少女は助けた人には自分の顔を忘れるように必ず最後に魔法をかけるんだよ……ハァハァ」
「そう……なんですか」
そう言えば、昨日も怪人に捕まっていたお姉さんになんだかめちゃくちゃ気の抜けるような可愛い呪文を唱えていたような……
「いいかい、新入り君。我々、魔法少女を見守る会は、魔法少女の正体を暴こうとしている怪人族や大衆の好奇の目から、彼女を守るために発足した部活なんだ。ハァハァ……彼女が何不自由なく怪人族と戦うことに専念できるよう影から見守り、そして、サポートする! それが、この部の使命なのだよ! ハァハァ……」
「そ、そうなんですか……!」
それなら俺も参加して正解だったな!
「じゃぁ、さっそく今夜、魔法少女の出現ポイントに行って、彼女を見守りに行くから……ハァハァ……」
「え、どこに来るかわかっているんですか?」
「ああ、確率的に今夜現れるだろう! 今日こそ彼女の正体をこの目で突き止めるんだ!! 新入部員が入って人員が増えたから、彼女の後をつけて、その素顔を…………ハァハァ……行くぞ、みんなぁぁぁ!!」
「「うおーーー!!」」
部長の掛け声に合わせて、他2名の部員が拳を高くあげて叫んだ。
「いや、ちょっと……待ってくれ……」
一番正体を暴こうとしているの、この会じゃん!?
本当に魔法少女を見守ろうとしているのは、俺だけのようだった。
だったら俺が……
魔法少女の正体を唯一知っている俺が、あの子を守らなければっ!!
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