第3話 ようこそカラヅカへ

 よし、この世界の魔王を討伐した後のご褒美はあのくそ天使への嫌がらせに使おう。そうだそうしよう。それ以外にはない!!!


 ギルドに連れて行かれ受付のような場所でこっぴどく怒鳴られた後、ギルドの席に座りながらふつふつと煮えたぎる怒りを抱えながら晴人はそう決心した。


「元はと言えばあいつが送る世界間違えたせいだし、喋りかけて来たせいで怒られたしぃぃぃ!! ってかここちょっと息苦しいし!!」


 晴人は1人席についてイライラとしながらも落ち着いて今後の状況を考える。


「やっぱりギルドには気まずいけど入った方がいいよな……ってか魔王討伐って言ってたけどこの世界が違うから魔王いないんじゃね?」


 晴人がそんな浅はかな考えをしていると1人、ギルドのドアを勢いよく開けながら入ってくる者がいた。


「き、緊急事態!!! 隣の魔王軍の城から煙が発生!! 全員直ちに外に出て警戒体制!!」


 いやしょっぱなラスボス来たー!!!!! 町の隣に魔王軍の城あるってどうゆう所だよ!! 転生させる場所やっぱりミスってんじゃねぇかクソ天使が!!


 この町、カラヅカは魔王軍の城の一つに最も近い町であり、世界全体を見てもここまで魔王郡の拠点と近い街はない。

 これほど魔王軍の城から近いため、この町に集まる者は変わり者か実力者の2択である。果たして周りがどちらなのかは、それはまだわからないーー


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「はぁ……なんだよこの街……」


 晴人はギルドの端っこの椅子に座りながら大きなため息をつく。あの緊急要請で冒険者ではないのに関わらず、魔王軍の城の前まで行くと、誰かが焼き芋をしていただけだと判明したのだ。


 なんなんだ? 魔王城の隣で焼き芋とか頭悪いんじゃねぇか?


 そんなことを考えながら晴人はこの先のことを考えた。


「汝、我をみろ!!」


 そんな晴人に声をかけるものが現れ、その声がする方を見るとそこには綺麗な茶髪を持った可愛らしい少女が立っていた。

 手には少女の身長と同じほどの杖を持ち黒色の可愛らしい服を着ている。


「なんだ?迷子か?」


 ギルドには似合わない容姿をした少女に晴人が尋ねると少女は怒った声で、


「違うわ!! わーはもう大人じゃ!!」


 少女には合わないような仙人のような口調だ。特徴的な「わー」というのが一人称だと理解するのに数秒を要した。


「大人? どう見ても中学生だろ」


 身長は150センチほどだろうか。見た目は完全に中学生。見るからに魔法使いを意識した服装をし、魔女が被るような帽子を深々とかぶっている。


「な〜!!! わーはもう16歳!! 立派な大人じゃ!!!」


「そんな身長で16歳か……」


 晴人はそんなことを言いながら胸を見つめて続けて、


「どっちにも、栄養いかなかったんだな……」


「おっ、お前失礼じゃぞ!? ていうか初対面でどこ見てるんじゃ!!!」


 失礼な晴人の言葉に怒りながらもごほんと切り替え本題を話し始める。


「我の名はユーリン。さっき焼き芋をしていると冒険者が集まってきてな。その中で見たところお主1人じゃろ。一緒にパーティーを組まんか?」


「パーティー……? ってかてめーが焼き芋の野郎かぁ!?」


 頭のおかしいやろう、そう、それはこの少女だったのだ。


「おかしいとはなんだ!! 別に焼き芋してただけじゃろ……てかどうるすんじゃ?」


 ユーリンの提案に少し晴人は悩むがすぐにそれは笑いに変わる。


「て、てかお前(笑)その口調でユーリンって、その口調でユーリンって(笑)」


「あなた、失礼じゃ!!……」


 顔を赤らめながらユーリンは晴人に怒るが晴人の笑いは止まらない。


「はっはっ!! マジでおもしれー!!」


「うっ……そ、そんな言わないでも……」


 ユーリンの口調は普通の口調になり、瞳からはポロポロと涙が溢れている。


「なっ、ちょっ!!! な、なくなって悪かったって!!」


「うえ〜ぇん!! お母しゃんからもらった名前、そ、そんなに言わないで〜」


 地面に両膝をつき内股で座りながら両手で目を拭きながら大声で泣き出すユーリンを晴人は慌てるが時すでに遅し。


「あいつ、あんな小さな女の子泣かせてんぞ」


「やっベーな。クズだろ……」


「や、やめろ!! なくな!!」


「泣くのやめたらパーティー組んでくれますか……?」


 可愛らしい声で上目遣いをしながらユーリンは尋ねる。


 クッソ!! 周りの印象は下げたくねえ!! まどうせパーティーは作るだろうし背に腹は変えられねえ!!


「わかった!! わかったから泣くのをやめろ!!!」


 晴人が必死に泣くのを止める声が少しの間ギルドに響いていた。

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