第2話ああ最悪の異世界で
バカァ〜、バカァ〜
「ほんとに……来ちまった……」
体がヒカリに包まれ、眩しさのあまり少し目を瞑っていると気づけばもう異世界へと来てしまっていた。
空にはまるでカラスのような鳥がバカバカと変わった鳴き声で鳴いている。
「こっから夢の異世界生活が始まるのか……!!!」
なんの能力もなく、行く当ても無く。ただただ異世界に送り込まれただけの晴人だがやはり胸踊っている。
周りにはこれといって目立つ建造物もなく、人通りもそこまで多くはないため大規模な街ではないだろう。だが見る限り鎧を着た冒険者のような人や、見るからにファンタジーな世界!!!
特に発達してる様子もないし中世みたいな感じだなぁ……人の見た目も俺以外黒髪はいなさそうだし異世界って感じだ。
『ちょっとあんた』
「うわぁっ!! びっくりした!!」
急に頭の中に響いて来た声に晴人は驚く。
『ビビるんじゃないわよ』
「なんだまたお前か……なんの用だよ」
イラつく相手の登場に晴人は少し不機嫌になりながらもヒカリ対応する。
『なんの用ってあんたに説明をして来たのよ』
「説明ってなんのだ?」
『この世界のに決まってるじゃない』
「それこの世界に来る前にするやつじゃねーか!!」
普通は転生をされる前に説明されるべきもののはずだ。それを説明されていなかった晴人は少しヒカリにキレるが何事もないかのようにヒカリは話を続ける。
やべぇ、やっぱこいつ殴りてぇ!!
『この世界の文字はもう全部読めたりするようになったから安心なさい。良かったわね失敗しなくて』
「おい待て失敗ってなんだ」
失敗という単語を隠すかのようにヒカリは無視をして話を続けている。
『あとそこには冒険者ギルドはないから隣町まで移動よ』
「無視してんじゃねえよ!!! てか最初からギルドある町にしろや!! てめぇふざけてんのか!?」
『別にいいじゃない。100キロくらいなんて1日で移動できるわよ』
「そんな遠いなんて聞いてねぇよ!? ってか待てよヒカリ……」
『ん? 急にどうしたのよ?』
ヒカリと話している最中に晴人は何かに気づきヒカリに話しかける。
「あそこに冒険者ギルドって書いてあんぞ?」
『えっ? そんなわけないわよ。だってそこのアルニアの町には一つもギルドがないはず……』
「なぁ……ようこそカラヅカへ!! って書いてる門があるんだけど……?」
晴人が見つめる少し先にウェルカムトゥーカラヅカと英語のようなもので書かれた看板がデカデカと飾られている。
「おいお前まさか転生させる世界間違えたとかじゃないよな?」
『………………』
「おいヒカリ?」
『あー……ちょっと待ってね。ペットの犬ののエリザベスが空飛びたいって言ってるから空飛ばせてこなくちゃ!!』
「いや犬は喋らねぇよ!? ぜってーそれ嘘じゃねえかよ!! お前逃げようとしてんじゃねー!!!」
『じゃ、じゃあねぇ……!!』
「バカやろー!! 逃げんじゃねぇ!!」
晴人が大きく叫ぶがもう2度とヒカリからの返答が来ることはなかった。晴人は唯一のこの世界について知れる情報網を失ってしまった。それに失ったものはもう一つ……
「ねぇ〜お母さん!! あの人ずっと1人で叫んでるよ? 大丈夫かな〜?」
「彼女に浮気されて逃げられてるのよ。見ちゃダメよ。あの子は今……絶望の中にいるのよ」
いやなんかめちゃ誤解されてる〜!! 違う、違うよ!? 振られてもないし浮気もされてないよ!? 逃げられはしたけど……
晴人がどれだけ弁明しようとしても晴人の周りから人はどんどん離れていく。
「だぁーー!! あいつのせいで出だし最悪じゃねぇかよ!!」
ポンポン
「はい?」
困り果ててまた叫んでしまう晴人の後ろから誰かが晴人の肩を叩く。それに反応し晴人が後ろを振り向くとそこには鎧を着た兵士が1人立っていた。
「不審者捕獲。直ちにギルドに連行します」
「ん? 不審者?」
「お前が広場で叫び続ける不審者だろ? ギルドまで来てもらおう」
やっちまった☆
初日、晴人は生まれて初めて捕まった。
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