行くはずの異世界間違えました ダメな天使と魔王討伐目指します
@tentenakedo
第1話 ああ最高の異世界へ
「はっはっはぁ!! カップルでゲームしてる奴は死ねぇ!! ついでに俺よりイケメンな奴も死んじまえぇ!!」
夜の11時ごろ、薄暗い部屋の中、少年が1人恐ろしい事を口走りながらゲームをしている。自分よりイケメンなら世界の男がことごとく消えてしまう!! おっと誰か来たようだ。
ゲームに熱中しているのか、振り回す腕が隣に置いてあったコーヒーカップに当たってしまう。
「あああばっかやろぉぉぉ!!!」
最新のゲーム機の上にビッショリとかかってしまったコーヒーを少年は慌ててタオルで拭き取る。
「てっめぇぶっころしてやる!!! いやでもこぼしたのは俺だしな……」
この少年は怒っているのかそれとも冷静なのか……
慌てて拭き取るが必死の抵抗も叶わずゲーム機はぷすぷすと音を立てて電源が落ちてしまう。
「やめろ!! やめてくれ!! 俺はお前だけがぁぁぁ!!!」
そう言って少年は叫びながらガクリと膝をついてしまった。
「まあいいやエロゲーしよう……いやでもエロゲーもできねーじゃねぇかぁぁぁぁぁ!!」
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某スポーツメーカーのジャージを着て、少年はトボトボと道路の端を歩いている。手には財布しか無く、どうやら家の近くのどこかに向かうようだ。
「気分転換にジュースだ……」
どうやらジュースを買いに行くらしい。
この少年は加藤晴人という。十七歳である。勉強はせず、たいてい家でゲームをして過ごしている。中学の頃に或る事情からそうなった。しかし体型は細身のまま、そこまで体たらくな生活は過ごしていないのだろう。
ガサッ!!
「なっ……なんだ!?」
横の茂みからガサガサと音がする。風のせいか、それとも恐ろしい何かでもいるのか。色々な想像を巡らせぐっと息を呑んで晴人は身構える。
ガサッ!! ガサガサッッ!!
音は強まり、晴人の緊張も段々と強まっていく。だがどんなに身構えてもーー
「う、うわぁぁぁ!!!」
ーー少年はビビリだった。
草むらからとても恐ろしい黒い物体が現れ晴人に飛びかかり、晴人は仰向けに倒れてしまった。
ああ、俺は殺される……迷惑かけたな母さん……そんなことを考えながら晴人の意識は段々と遠のいていった。
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「……こ、ここはーー?」
まるで太陽のすぐ近くにいるようなまぶしい光を感じて晴人は目を覚ました。先ほどまで近くのコンビニへ向かう途中の道路を歩いていたはずが気づけばギリシャの神殿のような場所に来ている。
「初めまして、加藤晴人さん………」
「だっ、誰だ?」
まるで世界の端っこまで聞こえそうなほど透き通った美しい声で晴人は呼びかけられる。声がする方向を見てみるとそこにはこれまでに見たことのないほどの美しい美貌を持つ少女が立っていた。
ーーいや、少女じゃねえな。身長も俺よりちょっとちっちゃいくらいで胸もある……同い年か?美しい美貌に大きな胸ッッ!! 最高じゃねぇか!!
「ちょっと!! 最初に胸みるってどうゆうことよ!!」
晴人がそんな事を考えて少女に見とれていると少女の方から怒号が飛んでくる。
「なっ!! 俺なんも言ってねーのに!!」
「考えてることなんかすぐわかんのよ!! ってかそんなのいいから早くこっちに来なさい!!」
思考を読まれたことに驚く晴人に少女は急かすように晴人に自分の方へ来る事を指示する。
少女の近くへ行くとそこには机と椅子があり机の上には一枚の紙が置かれている。どこなんだここは……?
「さっ、あんたも座んなさい。私この後用事あるんだから」
椅子に座りながら少女が晴人にそう言うが晴人は困りながら一言、
「おい……俺の椅子ねーけど……?」
その場にある椅子は一つだけ。しかもその一つは少女が座ってしまったため晴人は座る椅子がないのだ。
「あっ、ほんと? ならいいわ。あんた、立ってなさい」
はっ? なんだこいつ?
少女の態度に少しイラッとしたが晴人はぐっ堪えてこう尋ねた。
「なあここどこでお前誰なんだ?」
「私はあんた達が俗に言う大天使ミカエルよ!! まあでも本名はヒカリなんだけどね。で、ここは死後の世界。死者をどうするのかを決める審判の間よ」
死者の世界、と言う言葉を聞いて晴人は少し考える。
死者の世界……? ってことは俺死んだのか……
「死後の世界って本当にあったんだな」
まあここはポジティブにいこう。人生いつでもポジティブだ!!
「なにあんた? 自分が死んだことに驚かないの?」
「ああ。別にそこまで驚かねーよ。あの茂みの中にいたやつが………俺をやったんだろ……」
コンビニまでの道にいたあの茂みの中の猛獣。それが俺をやったに決まってる。まあ、あの茂みの音を聞いた時から理解はしていたが俺はあの猛獣に………
「違うわよ。あなたの死因は頭部の強打って書いてるわ」
「へ?」
晴人から出たのは間の抜けたこの一文字のみ。
机の上に置いてあった紙を見ながらヒカリは晴人に話し始める。最初こそは普通に喋っていたもののヒカリは紙を読み進めていくにつれどんどんと表情が緩くなり、しまいには吹き出してしまう。
「な、何がおかしいんだよ!! ってか頭部の強打ってなんだよ!! 俺後ろから殴られたのか!?」
笑い出すヒカリを見て焦りながら晴人が立ち上がりながら叫ぶ。それを見てヒカリはもっと声を大きくして笑いながら、
「ぷー(笑)!! ちがうわよ!! あなたは茂みから飛び出して来た猫にビビって後ろに倒れて頭ぶつけて死んだのよ(笑)!! 殴られても襲われてもないわよだっさ〜い!!」
「はぁぁ!?」
腹を抱えて笑うヒカリにとてつもなく怒りを覚えたがぐっと堪える。
「しかも人生の履歴書一枚とかやばすぎるんですけど〜 普通小学生でも2枚はあるものなのに人生薄すぎ〜(笑)」
「なんだーお前ぶん殴るぞー?(棒」
……こいつマジで殴ってやろうか……まあここは抑えよう。抑えるんだ俺。抑えろ俺!!
大声で笑うヒカリを殴りそうになる晴人だが必死に堪えてプルプルと腕を振るわせる。
「まあそんなしょうもないことは置いといて」
こいつ、俺の人生がしょうもないだと!? まあ確かにしょうもなかったけどーー
「なんの面白味もなくなんの楽しみもない人生だったんでしょう?」
なんだこいつぶっ飛ばしてやろうか?
ヒカリの言葉にイラついたが反論の間もなく続けてヒカリが、
「あなたには天国じゃなくて異世界に行ってもらいます!!」
「い、いせかい!?」
おいおい!! 夢見てたような展開じゃないか!! やはり神は俺を選んだのだ!!! 夢は叶うんだ!! よし、まずは異世界の獣耳少女にいかがわしい事を
晴人の顔がグヘグヘと気持ち悪い笑い方に変わっていく。
「異世界に行くのに了承をいただけるのならこの契約書にサインをお願いします」
ポケットから取り出された一枚の紙に待ってましたと言わんばかりに机に置いてあったペンで晴人は意気揚々と名前を書こうとするが……紙に綴られている一文に目が止まる。
「おいちょっと待て!! この能力授与なしってなんだよ!! こんなのずりーだろ!!」
「あー……そこの異世界レベル低いから能力なんていらないのよ。だから大丈夫大丈夫。そのかわりラスボスみたいな感じの魔王倒したらもう一生楽して暮らせる世界に行けるし神様にご褒美ももらえるから安心して」
「いやでもそんなのーー!!」
「いいから、いいからっ!!」
晴人の不満を煩わしく思ったか、ヒカリは無理に晴人の指にインクをつけさして紙へ押し付けた。
「はいっ、おわりっ!! 遊びに行こーっと!!」
「えっ、いやおい待てっーー
晴人がヒカリにそう言いかけた時、晴人の体は眩しい光に包まれ、晴人の意識は段々と遠のいていった。
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