第十七力 複合力②
善助は『ダッシュ』している最中に違和感を覚えた。
黒ずくめの男が善助を目で追って、善助の方に若干体を向けて迎撃態勢を取ろうとしているのが見えたのだ。
過去に善助が『ダッシュ』した際に、その動きについてくる者はいなかった。
善助は黒ずくめの男の隣まで来ると、骨折してしまわないように、軽く足払いをして男の自由を奪おうとした。
いつもならこれでみんな地面に倒れ込み、足の痛みに悶絶する。
だが、男は片膝をついただけで踏みとどまった。
しかもその体制から、恐ろしいスピードで手刀を返してきた。
手刀は善助の左足をかすめただけだったが、善助の履いていたズボンは、スッパリと裂けてしまった。
(こいつ何者だ?!)
もしも手刀が足以外の部分に当たっていたら、骨ごと断たれていたかも知れないと善助は思った。
「うひょー、早いな! あ痛ててて・・・、やっぱアニキの言ってた通りか。特化型とその分野でやるのは、分が悪いな。」と男は言いながら、首をつかんでいたおじさんを川に向かって放り投げた。
片手でひょいと投げたのに、ゆうに15メートルは飛んでいる。
善助は慌てておじさんを受け止めに走った。
川は浅かったが、走りにくく、おじさんを受け止めて戻って来るまでに、善助にしては少し時間を要した。
男はその間に素早く優子の傍まで行き、腰からナイフを取り出して優子のあごの下に当てた。
「待て!お前は何者なんだ?望みは何だ?!」と善助は叫んで、『ダッシュ』の準備をした。
「おっと、止まれ!お前がここに到着する前に、オレはこいつを殺れるぜ?」と男は言った。
男はナイフを優子のあごの下に当てたまま、善助の方に向き直った。
優子はナイフから逃げようと背伸びをするが、ナイフはぴったりと優子のあごを追いかけてきた。
「オレの名前は、白飛貞影。」と男は言った。
善助と優子が「白飛」という名前を聞いて驚いた様子を見せたため、「へぇ、お前ら知ってんのか、それなら話は早い。オレはお前ら全員が気に喰わねぇんだ。散々苦しんで死んでもらうから腹をくくれ。」と言って、貞影は優子に向き直った。
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