第十三力 継承力

 優子は目を輝かせて「すごーい!!」と言い、「それで、3人はこれからどんな巨大な悪の組織と戦うの?!」と聞いた。


 優子以外の3人は、顔を見合わせて笑った。




 「優子、テレビの見すぎだって!別に特殊な能力があるからって、悪の組織と戦わなきゃならない義務なんてないし、そもそも今どき悪の組織なんて探す方が大変だぞ!」と善助は言って、腹を抱えて笑った。


 優子は恥ずかしそうに顔を赤らめて、「だって、お母さんの実家は代々すごい能力の持ち主なんでしょ?悪と戦うためじゃないの?」と優里に助け船を求めた。


 「お母さんもおばあちゃんから、その能力で困っている人を助けてあげなさいとは言われてたけど、悪と戦いなさいとは言われなかったわね。」と言って優里も笑った。




 「なーんだ、つまんないのー。じゃあ、お母さんの実家はなんで代々能力見つけてんのよ・・・。」と優里はブツブツとひとりごちた。


 そんな優子を見て可哀そうになったのか、「おばあちゃんから聞いた話で、本当の話か分からないんだけど・・・」と言って、優里は実家に伝わるという話を始めた。


 善一郎と善助も、少し焦げたジンギスカンを食べながら耳を傾けた。




 「お母さんの実家の黒飛家は、昔々、白飛って家から分家したそうなの。


 山奥の貧乏な農家だった白飛家の主が、ある時変な能力に目覚めたの。


 握力が異常に強くなって、飼っていた牛の角を握って粉々にしてしまったそうなの。


 そのうち、息子二人にも同じような能力が現れて、白飛家は家族会議を開いて、天から授かったその能力をどう使うか話し合った結果、現代のサーカスのような見せ物小屋をやることにしたの。


 はじめは物珍しさで人も集まっていたんだけど、そのうち気味が悪いって化け物扱いされるようになって、逃げるように故郷を捨てて各地を点々とすることになったの。




 そんな白飛家に目を付けたのが闇稼業の人達で、用心棒の仕事や、人さらい、最後には人を殺めるようなことを依頼してくるようになったの。


 次第に闇稼業に飲みこまれつつあった白飛家で、次男だけは人の道に反することはしたくないと頑なに拒絶し、やがて家を飛び出して姓を黒飛に変えたの。


 それが、今の黒飛家になってるって話なの。」と優里は言った。




 「おおー!それっぽくなって来たじゃん!」と優子は目を輝かせている。


 「なんか、悪いことする方が白で、そこから逃げた方が黒ってのが引っかかるな・・・。」と善助はブツブツ言っている。




 「面白い話だね。でも、じゃあなんで黒飛家は未だに能力を一生懸命探して、覚醒させ続けてるんだろうね?」と善一郎が聞いた。


 「それにも、ちゃんと理由があって、闇稼業を続ける白飛家が、いつか本当に悪いことをしたら、それを止められるのは同じ能力を持った黒飛家だけだからなんだって。


 よくできた話でしょ?」と言って優里は笑った。

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