第十二力 考察力④

 「じゃあ、昼間のショベルカーの時の話をしよう。


 お父さんはカーブを曲がってショベルカーが横転してるのが見えた瞬間、周りの様子をさっと見回してしてから『バックヤード』に入った。


 善助が言った通り、お父さんは『バックヤード』に入っている間は、時間の制約を受けないから、そこでじっくり状況の再確認をしたんだ。




 まずソファーに座って、心を落ち着かせながら最後に見た景色を思い出した。


 ショベルカーの運転席には運転手が乗っていなかったし、道の真ん中でひっくり返っている状況から考えると、どこかから落ちて来たんじゃないかなと思った。


 落ちてくるとしたら、道の上側か。


 うーん、道の上側には何があったかな・・・、って考えたけど思い出せなかったから、一度『バックヤード』を出て、道の上側を見て、またすぐに『バックヤード』に入った。




 車内からは、道の上側はよく見えなかったけど、ブルーシートとその隙間から大きな岩が見えた。


 もしかしたら、道の上側には工事現場か何かがあって、そこに駐車してあったショベルカーが落ちて来たんじゃないかと予想した。


 道路横の斜面からは、まだ土や砂が落ちてきてたから、事故は起こったばかりだろう。


 だとすると、ブルーシートの隙間から見えた大きな岩も、今から落ちてくる可能性は十分ある。


 そんな事よりもっと重要なのは、ショベルカーの向こうにちらっと見えた女性だ。


 お腹が大きかったように見えた。


 距離的には大丈夫そうだけど、万が一ショベルカーを見に戻ったりすると、今から落ちてくるかも知れない岩が危険だな。


 そこまで考えてから、机の上の紙にペンで対処法を書いた。




 お母さんにはショベルカーを移動してもらおう。


 岩が当たって、ショベルカーが道の下側に落ちたら大変だしね。


 善助には妊婦さんを助けに行ってもらおう。




 で、『バックヤード』から出て、決めた作戦をお母さんと善助に伝えて、実行してもらった。


 どう?妄想族もなかなか捨てたもんじゃないだろ?」と善一郎は、優子に言った。

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