第十一力 考察力③

 「大脳では、神経細胞は皮のように薄い大脳表面の部分に詰まっていて、前頭葉の前の部分は、前頭前皮質と呼ばれるんだ。


 お父さんは、この前頭前皮質の中に空間を見つけて、中に入ってみたんだ。


 もちろんそういうイメージな訳なんだけど、その空間に入ると、まるで現実世界のような感覚があるんだ。


 お父さんはその空間を『バックヤード』って呼んでるんだけど、よく考えると前頭葉って頭の前側にあるのにバックヤードって、混乱しちゃうよな。 ははは。笑


 ・・・。


 まあ、とにかく、お父さんはその『バックヤード』に自由に入れるようになって、そこで色々考え事をするようになったんだ。


 想像の空間だから、自由にものを作り出せるから、ソファーやベッドを置いて少し休んだり、机とペンを置いて考えを整理したり、展望台を作ってキラキラ光るニューロンをただぼんやり眺めて心を落ち着かせたりできるようになったんだ。


 これがお父さんの能力だよ。」と善一郎は言って、缶に残ったビールを飲み干した。




 「・・・えっ?!それって能力なの? ただ頭の中のお部屋でご休憩って、ただの妄想族じゃない? お母さん、お父さん大丈夫なの?!」と優子が聞くと、優里はクスクスと笑った。


 すると何か考えていた善助が、「もしかして、お父さんはその部屋に入ってる間は、時間の制約を受けないんじゃない?」と言った。


 善一郎は驚いた顔で、「善助スルドイな!」と言った。


 「えっ、えっ、どーゆうこと?」と優子が全く理解できないという様子で聞いた。

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