第九力 考察力①
善一郎は妊婦さんに対して、「大丈夫ですか?道路で気絶されていたので車内に運ばせてもらいました。事故で道路がふさがってますので、近くの病院か自宅までお送りしますよ。」と言った。
妊婦さんの家は目的地のオートキャンプ場のすぐそばだったので、使えなくなった道路の回避ルートを案内してもらえて、一石二鳥となった。
妊婦さんを家に送り届けると、家から旦那さんが出てきて、丁寧なお礼と一緒に、オートキャンプ場で食べて欲しいと羊の肉を山ほどくれた。
オートキャンプ場につくと、善一郎はテントの設営をする最中もずっと優子の質問責めにあった。
テントができたらジンギスカンしながらゆっくり話すからと言っても聞かず、食事の準備をしている優里や、キャンプ場内を探索する善助を追い回しては同じ質問を繰り返していた。
☆☆☆
辺りが薄暗くなり、ジンギスカンのいい匂いが立ち込めた。
善一郎がビールの缶をプシュッと開けて、一口ゴクリと飲み込むのを確認して、「お父さん、約束よ。ちゃんと説明して!」と優子が迫ってきた。
「ふぅー・・・。分かったよ。」と言って、善一郎は優里との出会いから、善助が中学生のときに一人で運動公園を走って自分の能力を測ろうとした話や、これまでの優里と善助がやってきた人助けの事を丁寧に説明した。
「えっ? ・・・ってことは、お母さんは腕力がすごくて、お兄ちゃんは脚力がすごいって、それだけ?」と優子が聞いた。
「そう、ただそれだけのこと。でも、そのすごさが桁外れだってこと。」と善助が補足した。
「えーっ?なんだか騙されてるみたいな話だなぁ。お父さんはフツーなの?」と優子が言った。
「あっ、それ僕も知りたい。今まで色んな場面で、よくそんなに冷静に判断できるなとは思ってたけど、今日のはちょっと普通じゃない気がしたし。」と善助が言った。
善一郎は優里の方を見た。
すると優里は微笑んで頷いた。
善一郎は諦めたように「仕方ない。じゃあ、お話ししましょうか。」と言って空になったビールの缶をテーブルに置いた。
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