宇宙船、あるんですけど?

いつきみずほ

第一章 起業編

1-01 プロローグ

 宝くじ、ロト、ブックメーカー。

 古今東西、賭け事の種類は数あれど、宇宙船員スペース・セーラーに一番人気なのは議論の余地なく『スペースシップロト13』である。

 一三桁の数字を自分で選び購入するタイプのクジで、一枚の価格は昼食一回分ほど。

 当選は一等のみ、前後賞はもちろん、二等以下も存在しないのだが、一等にはその名の通り宇宙船スペースシップがプレゼントされる。

 さらにはキャリーオーバーもあり、数度のキャリーオーバーを経た後の熱狂ぶりは、毎回ニュースになるほどである。

 当然ながら、その時プレゼントされる宇宙船の豪華さもまたシャレにならない。

 また、売り上げの半分は、宇宙船が絡む事故に関連する慈善事業チャリティーに使われていることも、宇宙船員に人気がある理由の一つだろう。

 では、一般人には人気がないのかと言えば、決してそんなことはない。

 宇宙船という物は、とにかく高い。

 多少『高額当選金』のクジに当たったぐらいでは買えないほどに。

 宇宙船を使う予定はなくても、売ってもよし、貸し出してもよし。

 どちらにしても一生遊んで暮らせる。

 もっともその仕組み上、配当割合はあまり良くないので、若干の寄付も含めて購入する人が多いのだが。

 そして、この人気は宇宙船員スペース・セーラーの卵が学ぶ、宇宙船員訓練校でも変わらない。

 購買でも普通に売っているため、大半の学生は売り出される度に一枚ぐらいは購入するし、普段はギャンブルなんてやらない堅実な人間も、訓練校時代に一度だけ、卒業式の日にはほぼ確実に購入する。

 これは一種の験担ぎとして行われているもので、クジが資金源となっている慈善事業チャリティーのお世話にはならずに済むよう、今後も慈善事業チャリティーの資金を提供する側でいられるように、という願いが込められている。

 当然、当選を本気で信じている人なんてほぼいない。

 

 だが、そんなクジでも当選する人はいるわけで……。

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