■4章【変わった悪魔達】
1話 観光する
翌朝、リムが起こしに来るとそのまま着替え朝食を取る、食べている時に昨日私が馬車の中で眠った後アイニが私を部屋まで運んでくれたらしい。
着替えなどはリムがしてくれたようで、途中で起きてしまったのはちょうどそんな時だった。
「あ、そうだ。 リム、アイニはもう起きてるのかしら?」
「アイニ様ですか? 残念ながら実はまだ寝てます」
「そうなの? 本の中にいた時は朝早く起きていたからてっきり起きてるものだと・・・・・・」
「実はアイニ様、朝がめっぽう弱いんです!」
朝食を終えてお茶を飲みながら、ふと聞いてみると意外な事を知ってしまった。
本来アイニは夜型らしく朝は相当苦手で基本的に昼くらいまでは部屋から出てこないそうだ、ただ今回は私と契約しているというのもあるのか頑張っていたらしい。
リムはくすくすと笑うと、しばらくして何か思い出したのか少し慌てて私に言ってきた。
「すみませんアリス様、バエル陛下からご連絡がありまして昨日の出来事を話したいから今晩執務室にアイニ様と一緒に来て欲しいそうです。 夜まではツァーカブを好きに観光していいとのことです!」
「陛下から?うん、わかったわ。 でも観光か・・・・・・そうね私まだ馬車経由でお城と図書館に行っただけだし全然知らないわ」
着いてすぐは馬車での移動で街中を歩いてもいなかった、いろんな露店やお店が並んでいたのを思い出すと好奇心が湧いて仕方がない。
私は楽しみだなぁと思わず呟いてしまう、リムはそれを聞いてニコニコ嬉しそうにしていた。
その時、ドアをノックする音が聞こえた。
「おはようアリス、カイムですが入ってもよろしいですか?」
「カイムさん? はい!大丈夫です」
私が返事をすると、リムがドアを開ける、カイムはリムに軽く礼を言うとそのまま部屋に入ってきた。
「顔色はよろしいですね。 早速本題なのですが夜までの時間、アリスが観光しやすいようにこの端末を連れて行って欲しいと思いまして」
「はい、ぐっすり寝れました! 端末・・・・・・あっ!あの時の小鳥ですね!」
カイムの服からぴょっこりとこの前の小鳥が飛び出してくる、小鳥はそのまま私の方へ飛ぶとちょこんと肩のに止まり嬉しそうに鳴き声をあげる。
相変わらず小さいのにずんぐりとした体が可愛らしい、私とリムはその仕草に思わず可愛いと呟いてしまった。
「フフフ、そいつはすっかりアリスのことが気に入ってしまいましたね。 今回の観光は私も紹介したかったんですが仕事があるのでできなくて・・・・・・端末には追跡機能も備わっているので一応そばに置いてほしくて」
「そうだったんですね! わかりました」
「観光はアイニ、そしてリムと一緒に回ってください」
「!リムも一緒なんですね?」
私が嬉しそうに声をあげるとリムも嬉しそうにニコニコ笑っている嬉しさに我慢しきれなかったのか尻尾を振っているのがみえた。
「さぁ、では早速出発準備がてらアイニ起こしに行きましょうか!」
***
私とカイムは部屋を一緒に出ると隣のアイニの部屋に行くことにした、リムは私の部屋掃除と朝食の片付けを終わらせてから合流すると言い足早に下の階に向かっていった。
早速カイムはノックするが返事がない、しばらくするとカイムはそのままバンッと勢いよくアイニのドアをこじ開けた。
「か、カイムさん!?」
「時間がもったいないのでさっさと行きます! はいはいお邪魔しますよーー」
カイムは足早にアイニの部屋に入っていく、私はその行動にあっけに取られつつも部屋に入ってみる。
アイニの部屋は修復がどうのと言っていたからとてもひどいのかと思っていたが、案外ちゃんとしている。
しかし、所々壁紙や家具が破れていたり壊れていたりしている。
一体どんな生活をしていたのだろうかと心配になっているとカイムはそれを見て猫なので爪研ぎとかしちゃうんですよと軽く言った。
(爪研ぎで家具が半壊になるのは、もはや爪研ぎではないのでは!?)
私は心の中で突っ込みつつも部屋を進んでいく、ぼろぼろなベッドがありそこにはなんと大きな猫が横たわっているではないか。
大きさ的には図鑑で見たライオンやトラくらいはあるだろうか・・・・・・流石に本物は見たことがないのでなんとも言えないがそれくらい大きな猫だ、しかしよく見ると尻尾や耳にはアイニにもあった鱗が見える。
つまり、間違いなくこの大きな猫はアイニなのだろう。
猫の姿になっているアイニはグゥグゥと寝息を立てている、ずいぶんと気持ちよさそうに寝ているなぁと私は眺めていたその時だった。
カイムがアイニの尻尾を思いっきり引っ張ったのだ。
「いっっっっでぇぇぇぇ!!!!!!!!!??? なにしやがる!!!????」
「起きましたかアイニ?」
「テメェ・・・・・・!!!? なんで部屋に勝手に入ってんだカイム!?」
痛みで飛び起きたアイニの寝起きは最悪で口から火の粉が舞っている、今にも炎を吐き出しそうな勢いだ。
「アイニ昨日言いましたよね? 予定・・・・・・覚えてます?」
「あぁ!? 知るか!!!!!!んなもん・・・・・・」
カイムの淡々とした口調が気に食わなかったのか不機嫌な声で言い放った瞬間、やっと私の存在に気がついたのか一瞬にして耳が垂れ、口から漏れ出ていた火の粉が音を立てて静まっていくのがわかる。
その瞬間私も少し理解してしまった、おそらくアイニは昨日カイムもしくは陛下に私を観光案内するように頼まれたのだろう。
朝が弱いアイニは自室に帰った安心感ですっかりそのこと忘れていたのではないだろうか?
そしてそれが今、カイムにバレているということになる・・・・・・。
流石にこの状況で朝が弱いとか吹き飛んでいるんだろうなと私は苦笑しながらアイニにおはようと声をかけた。
「・・・・・・あ、アリス・・・・・・オハヨウ・・・・・・直グ準備・・・・・・スルカラ・・・・・・ゴメンナサイ。 トリアエズ、着替エルカラ出手ッテ・・・・・・」
しょんぼりと片言になりながらアイニは呟くと私とカイムはそのまま部屋を出て行った。
***
私とカイム、そしてしょぼくれたアイニはそのまま下のエントランスホールに向かってい降りて行くここはリムとの合流場所だ。
しばらくするとリムが仕事を終えて外行き用の服に着替えてこちらに向かってきた。
「すみません! お待たせしました!」
「いえいえーリムは仕事をしてたんですから仕方ないですよ、どっかの誰かさんと違って」
カイムはにっこりと笑顔になりつつもサラッと毒を吐いた、アイニはぐぅぅと唸りながら申し訳なさそうにしている。
リムも察したのだろう苦笑している。
「さて、二人とも今回はアリスにツァーカブの観光案内をしてもらいます。 基本的に露店とか他のお店とかおすすめの場所などなど・・・・・・紹介して行ってください時間いっぱいね?」
「了解です! 任せてください!」
「へい」
「あと、アリスにも一応言っておきますが、ここは確かに安全な国と言われていますが“完全に安全”というわけではありません、そういう危ないところには行かないようにしてください」
「はい、わかりました」
カイムに忠告されたがここは悪魔の世界だ、完全に安全な場所ではない油断するなという意味なのだろう。
そう言うところは前もって知っておいたほうが良い、案内されている最中にでも二人に聞いてみようと思った。
「街中までは馬車に乗っていくといいでしょう、それではお三方行ってらっしゃいませ」
カイムに見送ってもらうと、私達は屋敷前に止まっていた馬車に乗ってツァーカブの街中まで向かっていった。
移動中、先ほどカイムに言われたことを早速二人に聞くことにした。
「ねぇ二人とも、さっきカイムさんが言っていた危ない場所ってどこにあるの? 事前に一応知っておきたくって・・・・・・」
「そうですね、でもその前にむしろツァーカブの街中について説明しつつ知っておくのがいいかと思います」
リム達からツァーカブの街について詳しく教えてもらった。
ツァーカブは基本的に中央区、商業区、住民区、そして特別区の四つに分かれているのだという。
中央は私も行ったツァーカブ城や魔法図書館、兵士の施設、病院など割と公共施設が多いそうだ。
商業区こちらは名前の通りに商業中心の区域で様々な店が並んでいる、陛下の交流もあり各国や地域の悪魔との交流で手に入れた珍しい商品も並んでいる。
住民区は住民の居住区や格安の宿屋などが多い、城の外にも実は住民区はありそこでは農業や酪農などをしている人々が暮らしているそうだ。
そして特別区、これに関しては色んな意味の特別が入るそうだ、そもそも私たちが拠点としている陛下の屋敷も特別区の一つ、お金持ちの悪魔や権力をそこそこ持っている悪魔が住んでいたり、純粋に元から危険な場所など理由がいくつもあり特別区なのだそうだ。
危険な場所はその特別区だけなのかと思ったら中央以外にも危険な場所は多くあるそうだ、例えば商業区ではぼったくりや闇営業をしているお店もあるし、住民区はガラの悪い奴らもいるのでそう言う奴らが拠点にしている場所はもちろん危ない。
「とりあえず、アリスはその端末がいるからってのもあるが危険な場所に近づいたらすぐに知らせてくれるし。 そもそも俺とリムの二人で護衛も含めてるからな安心して観光してくれ、奥の手のお守りもあるし・・・・・・」
アイニが私のお守りを指さす、ふとあの時を思い出し冷や汗が出てしまった。
(さ、流石に今回はそれはあってほしくないな・・・・・・!)
「ってそういえばさっき、アイニはリムも護衛って言ってたのだけど、リムも強いのね?」
「わ、私はアイニ様よりは全然弱いですよ! でも一応陛下の屋敷で働いていますので・・・・・・」
リムは少し照れながら話している、確かに陛下の屋敷で仕事をしているのだからそこもしっかりしないといけないものね。
「まぁそう言うことだから・・・・・・でもアリス俺達になんにも言わずとか隙にどこかいくのだけは勘弁してくれよ? まじで俺は心臓が止まりそうになるから」
(こ、これは相当昨日のことが!)
「う、うん・・・・・・!! ご、ごめんねアイニ!!」
しばらくして馬車の動きが止まると、御者から到着したと声がかかってきた。
いよいよ、ツァーカブ観光が始まるのだと思うと私はわくわくが止まらなかった。
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