5話 お守りの効果
エリダとボーグから旅人なのだから外のお話をしてちょうだいと言われ、私はツァーカブの街並みや体験した事を軽く説明した。
流石に私自身の世界については説明できないし、虚言もしづらいと思っているとそこはアイニがフォローしてくれてアイニが体験した国々のお話をしていた。
貴族達は外の世界にとても興味があるようで熱心に聞いているようだった。
「へぇそんな国もあるのね・・・・・・。 行ってみたいわぁそんな所ここってほらこの町しか大きいところはないから・・・・・・」
「あぁそうだなきっと外の世界はここと違って広くて多くて美味しいんだろうなぁ」
最初はうっとりしているのだろうかと思っていたが、どんどんとエリダとボーグの様子がおかしくなっているのが目立ってきた。
よく見ると他の貴族兄妹達も仕切りに包帯を引っ掻いたり、足を揺すったりしている流石にれは様子がおかしい、部屋の隅で執事やメイドも怯えているのが見える。
私は咄嗟にアイニの方を見るとアイニは待ってましたとばかりにガタンと勢いよく席をたつ。
「さて、そろそろお話も終わったことですし、そろそろ本題と参りましょうか?」
「本題? あら何の事でしょうか?」
「おや、惚けるつもりですか? この町で起こっている事件そして・・・・・・貴方達の“正体”についてですよ」
この町の事件についての犯人はこの貴族なのは分かる、しかし“正体”とはいったい何の事だろうか?
其処だけ私はわからなかったため疑問に思っている私を置いて、アイニはそのまま会話を続けた。
「いい加減、飽き飽きしてきましてねさっさと済ませたくなりまして、町に入るなり“見張りは多い”、“泊まっている部屋に偵察に来る”流石に俺でも気が付きますよ、挙句に毒ですし」
さらりとアイニがとんでもないことを呟いたのを私は聞き逃さなかった、見張り?泊まっている部屋に偵察!?どういうことなのかさっぱりわからないというかそんな素振り全くもって感じなかったし見てもいない気がする。
部屋については防音などの呪いをしていたのを思い出しそれでわからなかったのかなとは思っていたが、まさか町入った時から見張りがいたのかと驚いた。
毒の下りはメイド達が怯えた声をあげていたのではやり間違いなくアイニのお茶にも毒が入っていたのだろう。
エリダとボーグ達はその話を聞いてにっこりと笑っていたが、しばらくしてみるみるうちに顔が歪んでいく。
残りの貴族達は息が上がり興奮しているのがわかる、包帯は血が滲み机や床を激しく叩いている。
「あぁもう我慢ができないわ、だって仕方がないでしょう? これは私達が生きていくためには必要なことなんですもの仕方ないの、貴方達余所者がご馳走になってくれるだけでこの町の平穏がそして繁栄していくの素晴らしいことでしょう?」
「そうだ、昔のように狼に怯えるのはまっぴらごめん、せっかく築き上げていた家を壊されない、ここにくるまで何百年もかかったんだここまで大きくできた! この幸せを奪われてたまるものか!!」
二人は椅子から立ち上がると狂ったように笑い出す、他の貴族も同じくケタケタと笑いながら立ち上がっていく。
全員の笑いがぴたりと止まると、貴族達はうめき声を上げながら体を震わせていく、一人一人体がバキバキと音を立てていく、骨が折れ皮膚は内側から引き裂かれそこにいたはずの貴族達は獣人ではない“別の何か”に作り変わっていった。
音が止み終わるとそこにはグロテスクな生き物達が集まっていた、まるで生皮を剥がされたような、恐ろしい異形の化け物と成り果てた貴族達。
これが町の人々が恐れていた隠したかった者達・・・・・・私はその見た目に思わず悲鳴をあげてしまった。
その時、一匹の化け物が両手を振り下ろし机を粉々に砕きそのままこちらに向かって突進して来た。
椅子から立ち上がろうとした瞬間だった、アイニが化け物の目の前に素早く立ち塞がりそのままフッと息を吹きかけるようなそぶりを見せる、瞬く間に化け物の体から炎が上がる。
化け物は悲鳴をあげてそのまま崩れ落ちる、私があっけに取られていると小鳥から声が聞こえた。
「アリス! 何をぼさっとしているんですかさっさと立ち上がって! 屋敷から脱出しますよ!」
カイムの声でハッとすると私は素早く立ち上がってアイニの後ろに下がった、化け物達は燃え崩れた同胞を見ると大きな咆哮をあげる。
化け物達が次々にこちらに向かって襲いかかって来た、アイニは化け物達に魔法で炎を吹きかけたり投げつけたりと倒していく。
「ほら、アリス! アイニが時間を稼いでくれています! 急いで!!!」
「わ、わかった!!」
ふと、思い出したかのように出口とは逆の方を見る、執事達が怯えて動けずにその場でうずくまっているのが見えた。
いくら、物語の住人だからといって流石にこのままでは彼らも危ない、むしろ良心が痛むそう思った私は迷いなく彼らの方に走り出した。
「みなさん早く! 逃げて!!!」
そう言って駆け寄った瞬間だった、後ろでアイニとカイムの声が聞こえ、執事達がひどく恐ろしい顔をして私の後ろを指差している。
気がついた瞬間、後ろを振り返ると化け物がこちらに襲いかかって来ていた。
あぁしまった、こっちに集中しすぎて油断してしまったーーーー。
***
覚えていることは、私の自己満足で助けようとしてしまったこと、そのせいでアイニ達に迷惑をかけてしまった事、あの時目の前が真っ白になって私はあぁ死んでしまったんだと落胆してしまった。
思えばいい思い出なんて・・・・・・あぁでも魔界に来れたんだからよかったかな・・・・・・初めての外の世界がこんな世界だなんて夢のような出来事だったじゃないか・・・・・・。
アイニには悪いことをしてしまった、私の魂回収できるかな・・・・・・。
(短い人生だったなぁ・・・・・・)
「・・・・・・! アリス!!!!!!」
不意にアイニの大きな声にハッとする、気がつくと私は綺麗な夜空のしたポツンと立っていた。
隣にはアイニが慌てた様子で私を見ている、よく見ると所々服が焦げているあの化け物達を相手にしていたのだろう。
「アイニ・・・・・・私、死んだんじゃ・・・・・・」
「いや、普通に生きてる。 目瞑って意識飛んでたんだ・・・・・・はーーびっくりした! ほんと心配したんだぞ! 逃げろって言われたのに執事達の方にいくし!!」
アイニは大きくため息を漏らすと、あの後のことを教えてくれた。
私が、目を瞑った後バエル王のお守りが発動し私は無事立ったのだそうだ、真っ白と思ったのは発動した魔法で真っ白と感じたのだという。
執事達は無事で、貴族達全員倒し終わった後そのまま逃げるようにとアイニが指示したのだという。
「ご、ごめんねアイニ・・・・・・助けてくれてありがとう」
私は謝ると、アイニはまた大きくため息を漏らした。
「ちゃんと反省しているようですから、その辺で許してやってはどうですアイニ?」
カイムの声が空から降ってくる、小鳥が羽ばたきながらこちらに降りてくるとちょこんと肩に止まった。
私は、カイムにもごめんなさいと謝るとカイムはクスクスと笑い声を上げた。
「まさか、助けに行くとは思っても見ませんでしたからね。 怪我は無いみたいですね」
皆に心配をかけてしまい私は心底反省した、自分の不注意で此処まで心配をかけてしまうとは・・・・・・さらに外にまで運んでもらうとは本当に申し訳ないと思った。
「本当にごめんなさい、しかも屋敷の外にまで運んでもらうなんて・・・・・・」
アイニはその発言できょとんとした顔を浮かべる、何故そんな顔を浮かべるのだろうと思っているとカイムから驚きの事実を知った。
「アリス、ここは屋敷の外ではありません。 此処は屋敷の中ですよ?」
「? でもほら夜空が・・・・・・」
「あぁそれですか、えぇ消し飛んじゃったんでね全部」
「消し・・・・・・? 全部? えっ!?」
足元をよく見るとあの部屋の絨毯の模様が見える、周りをよくよく見ると建物のようなものが焦げたり焼け落ちたような跡も見える。
つまり、お守りの効果で私の周り一体が消し飛んだ、屋敷も襲ってきた貴族達も全部一瞬で消しとばしたのだ。
「ええっ!!!????」
私は、此処一番で大きな声をあげてしまった。
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