6話 協力者

 アイニは元々野良猫で死んでから悪魔になったそうだ、悪魔になってからは炎魔法を使い各地を燃やしたりと相当被害を出していたようでそれをバエル王と兵士に捕縛されそのまま投獄されていたのだが色々あり72柱の1柱に任命された。

 その後、フェネクスの依頼が来た時にアイニが適任とされ派遣されることになっていた。


「正直、とんでない問題児を連れてこられると思ったのだよ、下手すればうちの図書館が火事になるんじゃないかとも思ったし陛下は何を考えてこの放火魔を任命したのか・・・・・・ってのもあったので僕は最悪図書館引っ越そうかなとか思ったほどで、いざアイニがくるのが決まった時に人間の女の子つまり貴方もくるって言うのがわかってとっても助かった、貴方は色んな物語を知っているさらに契約者の為アイニは暴走はなさそうだと思ったのだ」


 フェネクスは早口で一気にいうとホッとため息を漏らした

所々砕けた口調というか愚痴のような・・・・・・と思いつつ私は苦笑してしまった。


「そ、そうなんですね・・・・・・でも正直自信はそこまでないんです色んな物語を読んだことはあるのですが全てというわけではなくって」


「それは承知の上です、本当はそういう話を知っている悪魔もいるんですが、その方々は用事や別件などで連絡すら取れない状況なのでむしろ少しでも知っている方がおられるだけでも助かります」


「そうなんですね、なら少し安心しました」


 フェネクスにとってはそういう悪魔がいれば安心だったのだろうが、その悪魔と連絡すら取れないということはよっぽど藁にもすがる思いなのだろう、私もできる限り知ってる事を駆使して解決できたらいいなと意気込んでいると隣からじわじわと熱い気配が漂ってきた。

 私は何事かと思い隣を見るとアイニが今にも炎を吹き出しそうな怒りにた顔をしているではないか、驚いてアイニに声をかけようとした時だった。


「テメェ・・・・・・まじでいい度胸してるじゃねぇか!!!!!」


「チッ、一々怒るな放火魔め文句があるならもう少し学んでから怒りたまえ」


「ダーッ!!! テメェだって一々余計なこと言いやがって!! まじで燃やす!!!」


 私に出会うまでの自分を知られたくなかったのだろう相当そのことが気に入らないようで、アイニが唸り声を上げると尻尾や耳の先が炎が出る、私はびっくりしたがこのままでは危ないと思い咄嗟になだめようとする、フェネクスは落ち着いているようには見えるが相当鬱憤が溜まっているのか苛立ちを沸々と感じる。

 このままでは本当に図書館が燃えてしまうのではないかと焦った私はどうしようかと思った瞬間だった。


パン!!!


 後ろから大きく手の叩く音が響いた。

 音の方を振り向くと一人の青年が立っている、身長は思ったよりも小さく私の少し上くらいだろうか茶色の髪の毛にツァーカブの兵士の服装によく似た服装をしているそして特徴的なのは背中に羽が生えている鳥の悪魔だろうかと思っていると。


「そこまでです、お二方これ以上その口論を止めないと本格的に大炎上さらには兵士がやってきて捕縛なんてあり得ますよ?」


「カイム!? 邪魔すんじゃねぇ!」


「黙れ子猫! お前また暴れでもしたら今度こそ陛下にその首落とされるよ? そもそもそんなことしたらそこのお嬢さんや推挙してくれた悪魔や陛下の信頼すら落とすことになるそれでもいいのかい?」


 カイムと呼ばれた青年は叱咤すると、アイニはたじろぎ尻尾や耳の炎はみるみるうちに小さくそして消えていった。


「フェネクス様! 貴方の焦りは十分にわかりますが陛下も考えがあっての事なのです、その陛下の采配を疑うということはいかがなものかと思いますが?」


「・・・・・・ハァ、わかったのだよ」


「はい、ではお二方もう宜しいですね?」


 カイムはにっこりと笑う、二人とも熱くなりすぎたと反省しているようで次第に落ち着きを取り戻していった。


「では、私が此方に来た理由でも喋りましょうか」



***



 カイムはバエル王の選りすぐりの部下の一人、つまりはアイニの同僚というわけである。

 アイニはそこに選ばれたのはわりと最近の事のようで逆にカイムは古株と呼ばれるほど随分と昔からバエル王に仕えているそうだ。

 アイニにとっては大先輩、見た目はアイニの方が上なのだがカイム自身種族的な意味でこれ以上外見の成長ができない体質なのだという。

 そんなカイムがここへ来た理由は、新人のアイニと私のサポートをしにやってきたらしく、いざ合流しようと図書館に入ったら喧嘩もしくは火事でも起こるんじゃないかというただならぬ空気を感じ止めに入ったそうだ。


「いやぁよかったですよ、図書館の利用者たちもソワソワしてたので反省してくださいねお二方?」


「わかってるっての・・・・・・」


「反省はしている・・・・・・」


 アイニとフェネクスはお互いに反省しているようで少々声が弱く感じる、カイムはふふんと満足したのかにっこりと笑うと私の方を見て深々と頭を下げた。


「そして、初めましてアリス様。 私はカイム72柱の一人にしてバエル王の部下の一人でございます、どうぞよろしくお願いします」


「此方こそ、先程は助かりました! よろしくお願いします」


 私もお辞儀をしつつカイムに挨拶をすると、カイムはにこりと笑った。


「では、早速ですが切り替えて私が貴方達にどんなことをサポートするか説明しましょうかね、まぁ簡単です私はアリス様とアイニの通信係として来たんですよ」


 カイムがそういうと指をパチンと鳴らす、その瞬間ぽんとカイムの周りに降りたかと思うとそのままパタパタと羽ばたきだした。

 どうやら小さな鳥のようだ見た目はツグミやコマドリのような小さな鳥だ、しかし何だかちょっとずんぐりしている感じがする、私は思わずその見た目に可愛いと呟くとそれに気がついたのか小鳥は私の周りをぐるぐると飛び回っている。


「おや、端末はアリス様が気に入ったようですね、幸先がいいです」


 カイムはにっこり笑う、端末と呼ばれた小鳥はそのまま私の頭にちょこんと止まる、どうやら気に入ってくれたようでピィピィとかわいらしく鳴き声をあげてくれている。

 それを見たアイニは微妙に嫌そうな顔をしつつ小鳥をツンツンと触っている。


「アイニ端末は食べないでくれよ?」


「・・・・・・わかってるよ!」


「さて、その端末さっくりと説明するとアリス様とカイムの通信、要は声を届けたり情報を提供する手助けをします」


 カイムが呼んだ端末と呼ばれた小鳥は、こんな見た目をしているが相手の声を届けてくれたり画像なども映し出してくれるという、私とアイニが物語の世界に入ると連絡手段が通常はできないが、この端末はそういった妨害も受けないため自由に連絡をとりあえるのだという。

 私達が中の様子を伝え、カイムとフェネクスが外で私達が知らない情報など集め提供しつつ手助けをしてくれるそうだ。

 ちなみに火耐性がとっても強いのでアイニの炎でも燃えないそうだ。


「本当に何かあった場合はこの端末で強制的にアリス様とアイニを連れ戻すこともできますので安心してください、分からないことなど何でも聞いていただければと」


「ありがとうございます助かります!」


 フェネクスは私達が説明を受けている中、積まれた本の中から一冊の本を取り出した。

 本はやはり黒いあとが広がっており、表紙も何と書いてあるのか読めないがぽつりとこれが一番楽かなと呟いた。


「さて、そろそろお二方の最初の修復する本が決まったようですね、覚悟はよろしいでしょうか?」


 フェネクスがその本を持ってくるのを気がついたのかカイムはそちらの方を見つつ私達に聞いてきた、いよいよ本の中に入って修復する時がきた、緊張はするが本の世界に入れるという期待で胸がいっぱいだった。

 持ってきた本はやはり文字が見づらい、子供や家庭などの単語が辛うじて見えている。


「此方がまず最初がいいと思うのだよ、本のタイトルは子供と家庭の童話集その童話集の中でとある動物達が登場するお話を集めたものさ、これは豚も出てくるしヤギも出てくるから貴方が知っている本とは違うのだけれどでも大体は同じさ教訓のような本の世界だからね」


「それってもしかしてグリム童話の・・・・・・!」


 フェネクスはこくりと頷くとその本を私に渡した。

 そしてその世界に入るのは簡単で本を開いて入りたいと思うだけで入れると説明してくれた。

 私はアイニの方をチラリと見ると、アイニはにこりと笑って準備はできていると言った。

 頭の上の小鳥も準備はできていると言わんばかりに鳴き声をあげる、その時突然カイムが何か思い出したかのように声をあげる。


「あ! そうそう、言い忘れていました。 奥の手ですけどねアイニが選ばれた理由です。」


「? 何だよ急に?」


「選ばれた理由ですか・・・・・・?」


「そうです、とっても簡単ですよ緊急離脱で端末でも帰れますけどアイニで本の世界中で全部燃やすと助かりますね本は犠牲になるんですけどね! そういう意味で一番中に入っても最終的に助かりそうだから選ばれたんですよ」


「そ、そんな理由で・・・・・・」


「あんまり聞きたくない微妙な理由だった・・・・・・ぜ・・・・・・う、嬉しくねぇ・・・・・・」


「絶対燃やさないでくれたまえよ!!!」


ケラケラと笑いながら喋るカイムの横で恐ろしい形相のフェネクスが叫んだ。

今から行くと意気込んでいたのに突然そんな理由が理由なだけに、どうリアクションしてよいのかとたじろいでいた私と、意外とまともな理由があったのではないかと期待したらそんな理由だったのかと地味にショックを受けていたアイニだった。

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