【番外】アイニの過去1

※残酷な描写があります、苦手な方動物好きな方はご注意ください。



 猫の命は9つありとは誰が言ったのだろうか、俺はこの言葉を言った奴を心底恨んでいる。

 最初の記憶は黒い猫、魔女の眷属だったけどその魔女がロクでもない奴だったのはなんとなく覚えている、人道にはずれ呪ったり殺したりそんなことばかりやっていたからある日、神に罰せられ殺されてしまった。

 そんな最初の飼い主は俺を使って呪ったり殺したりもさせていたから神は当然俺に罰を与えた「9回お前は殺されるそれも酷い死に方で」そう言われて最初の命を終えた、多分あれは落雷か何かで死んだんだろうな、2回目は所謂ドロドロに性根まで腐り切っていた貴族様のとこで暮らしていた、生活には困らなかったけど腐り切っていた貴族様だもちろん村の大反発で屋敷は全焼、貴族様はもちろん斬首、俺はその全焼で焼け死んだ。

 3回目から8回目ももちろん悲惨な死に方だった溺死、轢かれたり、落とされたり、あぁでも一番多かったのは焼死だった。

 死んだと思ったらその記憶を持った状態で新しい猫として生まれ変わっている何度も何度も逃げようとしたけど結局無理だった、全ての原因は人間だっていうのになんで俺はこんなにも死ななきゃならないんだと恨んで恨んで仕方がなかった、そして最後の9回目俺はこの人間には復讐しながら死んでやろうと思っていた。


 9回目は野良猫で今回も黒猫だった、自由に動けるほど成長した後、俺は復讐する相手の人間を選ぼうと散策していた。

 そこで見つけたのが成金の家、あまり良い噂を聞かなかったからちょうど良いと思った。

いざ侵入して見れば家の主人はいつも商談やどこかに外出している、近づこうにもどうやら猫が嫌いなようで物を投げられたりした。

 さぁどうしたものかと思っていた時に、小さな女の子と出会ったどうやらここの主人の娘のようだ3歳くらいだろうか綺麗な金髪と青い瞳が印象的で俺を見つけると嬉しそうに触ろうとしてきた、俺は触られるのが嫌いなんだと最初は威嚇したり引っ掻いたり噛み付いたりしたのに女の子はちっとも諦めない、俺はとうとう観念していつの間にか女の子の飼い猫のような存在になっていた。

 正直俺は8回目までロクな人間に会ってなかったからこういう人間には慣れていなかった、でも撫でてもらったり抱っこされたりとそれがとても心地よく、女の子の笑顔に何度も救われている感覚があった。

 そんな子を守りたかった、でも結局は守りきれなかった主人に見つかって処分されたから最後は袋に詰められて燃やされた。

 結局復讐もできずに死んでしまうとはなんとも俺は馬鹿な猫だ。

 あぁでもごめんなきっといなくなって君は泣いてしまうそれだけが気がかりだな。


「じゃぁ今度は守ってあげれば良いじゃない」


 女の声が聞こえたでも聞き覚えのあるようなそんな声、気がつくと俺は魔界にいて猫の悪魔として生まれ変わっていた。

 猫にもなれて人の姿にもなれるなんとも便利な体か、もう虐げられないし人間に殺される事だって滅多にないだろう、結局あんな猫生だったのに救いも何もなかったんだから悪魔になったならもう良いだろう?自由にさせてくれ!俺はもう人間に復讐したくてたまらないんだ!

 俺は吹っ切れてそれ以降力を使って暴れまわっていた、何度もそれで死んだのが原因だろうけどいつの間にか炎の魔法が得意になってていつの間にか放火魔と呼ばれるようになった。

 気に食わない奴はすぐ燃やしたし、人間なんて基本的にすぐ殺していたそんなことをしていたらバエル王に見つかってしまった、72柱の中でも有名だしさらには国を持つ上位悪魔の一人、やばいなとは思っていたけど当たり前に強くて瀕死の状態になって投獄された。

 このまま殺されるのかと思っていたらどうやら俺は72柱の空いた空席に入ることが決まったらしい、何故かと聞いてみると監視も含めているそうだそしてとある悪魔の推挙もあり反対意見はなかったそうだ。


「何で俺みたいな若輩者推挙するんですかねぇその人」


「さぁなあの人曰くどうしても助けてやって欲しい子がいるからだそうだ」


「助けてやってほしい子?」


「あぁ人間の女の子だそうだ名前はーーーー」


 バエル王から聞いたその名前は聞き覚えのある名前だった、特徴もちゃんと聞いたし住んでる場所だって聞いたあぁ間違いないとあの子だと思った。

 忘れていた感情が一気に溢れ、まだ治ってない体だったというのに感情とともに大量に炎を出していたのを覚えているその後はまた傷口が開いて倒れたのは後でバエル王から聞いた話だ。

 怪我が治って72柱になった時、俺はその悪魔から依頼を受けた、元々はバエル王からそして近年問題になって協力申請を送ってきたフェネクスの本の助けになることからきた依頼で、それは俺にとって願ってもなかった依頼だった。

 しかし、まだその依頼を受けるには俺の実力が足りないとのことでバエル王は俺に強化訓練を命令した、これがまたとんでもなくハードなものだったというのは・・・・・・まぁこれは別の機会に話したほうがいいと思う思い出すだけでも心底嫌だ気が滅入るどころじゃない。


 訓練が終わってやっとこの依頼を受けることができた、数年かかっちまったけどやっと出会えるんだ。

 今度こそ、俺は彼女を助けるのだと心に決めてーーーー。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る