1章【導きの森】
1話 準備
私はきっと地獄に行くと思うわ、神様は許してくれないもの
それでも私にとって彼との出会いは本当に天の助けのようなものだった
やっと外に出られる・・・・・・いいえ、私の知らない世界が待ってるのだと
心が弾んで仕方なかった、この好奇心だけは止められないわ!
***
アイニと自己紹介という名の契約が終わるとふと気になった事があった
先ほども含めて結構声を上げてしまっていたけど・・・・・・誰も来てない?
「ねぇ、アイニ結構私音とか声あげてたんだけど・・・・・・音とか大丈夫なの?」
「ん? あぁそれは俺が召喚された時に音が漏れないように魔法をかけたのさ」
「魔法! あ、そうかそもそもアイニ悪魔だもんね!」
「そうさ、俺だってぬかりはないからねぇ」
アイニはニヤリと自慢げ笑う、私は関心しているとはっと思い出しクローゼットに向かった
クローゼットを開けると大きめのトランクを出す。
冒険するのだからある程度の衣服や生活雑貨入るわよねとブツブツ呟きながらトランクに詰めていく、それを見て不思議そうにアイニが声をかけてきた。
「そんなに持っていったら移動とか大変だろ?」
「えっ? でもアイニ旅行ではないけど準備しないとさすがにダメじゃない?」
「あぁそうか君たち魔法使えないだもんね”収納箱”も知らないなら当然か」
「”収納箱”?」
私が驚いているとアイニは自身のベルトに取り付けられている箱を手に取った
よく見ると小さなトランクのような形をしている。
そのトランクに何かをつぶやくとぶるぶると震えだす
アイニはそのままトランクを床に置く、するとみるみるうちに大きくなっていくではないか
震えが止まるころにはトランクは私の持っているトランクより少し大きなサイズになっていた。
「わぁ! これが”収納箱”なの?」
「そうさ、と言ってもこれはその中でも小さい種類だね俺らとかほかの悪魔や魔力持ちとかはこういうのに物を詰めて小さくして移動してる、というわけでこれにアリスの荷物入れていっていいよ」
「ありがとう! すごいのね魔法って・・・! 今からホントに楽しみになってしまったわ!」
私は目を輝かせながら初めて見る魔法に感動していた、
アイニはそれをみてまたにこりと笑う
早速、そのトランクを開けるとさらにびっくりしてしまったトランクの中はからではなく上側には引き出しが多く埋め込まれている、下側には大きな引き出しが二つ埋め込まれている。
まるでチェストのようなそれを私はどうしていいかわからずじっと見てしまっていた
その様子にアイニはあぁ忘れてたと呟くと私に説明してくれた。
「ごめんなそういえば説明してなかった基本的に”収納箱”ってのは”モノを収納する箱”として使われてるこのトランクも含めてだけど、こういう収納できるものの中にさらに”収納箱”を詰めてもいいんだよ」
「じゃぁもしかして小型のチェストやクローゼットってこと?」
「お、呑み込みが早いねぇ! そうそうこのタイプはそういう感じだな」
アイニはご機嫌に言うとさらに詳しく説明をしてくれた
”収納箱”じたいはほんとに色んな種類があるこのトランクのように衣服メインのものや食材、生物などしまうことができるらしい。
中にはなんでも入れることができ、取り出す際は取り出したいものを思い浮かべるだけでそれを取り出すことができる。
食材など時間停止することで鮮度を保つことの出来る”収納箱”もあるとか、基本は魔力で”収納箱”の収納容量が決まるため、魔力がたくさんある人ほどとんでもない物を収納できるらしい。
説明を聞きながら私はてきぱきと荷造りをし始める
衣服やお気に入りの本、お気に入りの小物や筆記用具などいろんなものを引き出しに詰めていく
真っ黒な空間にスポンと入っていく様は何とも奇妙で面白かった。
ある程度荷造りを終えて、ふと気になった事があった。
「魔力がある人ほどとんでもない物って言ってたけどどんなものなの?」
「そういうことができる奴は限られてるんだけど簡単に言えば国をしまってんのさ自分の国をさ」
「えっ!? 国までしまえるの!?」
「知り合いにそういう奴がいてさ、ほら移動民族とかいるだろ? あれの国版まぁ移動国家?って奴かな? 基本的に移動しながらあれこれしてるやつらだから会えるかわかんないけどな」
「なんでもありなのねあなたの世界って・・・・・・」
「ハハハ、でも楽しみで仕方ないだろ?」
「えぇ勿論!」
***
私は荷造りを終えると手紙を書き始めた、一つは父様用そしてもう一つはメアリー用だ
父様には意外とあっさりでずっと思っていた事、とくに外に出たかった事や母様について私の存在について若干恨みつらみを書いて・・・・・・いなくもないことをつづった
帰ってこれるかさえ分からないからせめてこれくらい書いてもいいわよね!
そしてメアリーには今までお世話になった事、姉のような存在だったこと、体には気を付けてという内容をたっぷり書いた。
手紙を書き終えテーブルに置くと、準備はできたことを伝える。
「そういえば、ここからそこへどういくの?」
「それは簡単! まぁ入口は・・・・・・とりあえずこの窓でいいか」
アイニは窓前まで行くと自身の尻尾をつかんだ、つかんだ尻尾を見て私は気が付いた
猫の悪魔だと思っていたがよく見れば鱗が見える、月明かりに照らされ鱗が反射しキラキラしている。
その瞬間アイニは自分の尻尾にある鱗を引き抜いたのだ。
「えっ!? アイニ何をしてるの大丈夫なの!?」
私はとっさにそういうがアイニは何も言わず鱗を手で握りつぶす、
そしてそのまま砕けた鱗をフッと窓に吹き付けた。
吹きかけた瞬間、窓の外は一瞬にしてこの世の物とは思えない紫色や青色のような
何とも言えない景色を見せてきた。
ほかの窓が普段見る景色なだけ余計にその異様さが目立っていた、
アイニはそのまま窓を開けるが異様な景色の空間は続いている。
「さぁ、アリス入口の完成だ、入る覚悟はいいかい?」
「こ、この中に入るのね?」
びっくりしながらも窓のそばまで近づく、
立て続けにおとぎ話や絵物語のような体験をしているんだ、仕方のないことだけどやはり緊張するなと思っていると、何気なくアイニの方を見てみるアイニはリアクションはしないものの自分の尻尾をつかみぬいた鱗部分をさすっていた。
あ、やっぱり痛かったのかと思ったらすこし笑ってしまう、
アイニのおかげかわからないけど緊張もさっきよりはほぐれているように感じた。
「ほら、お手をどうぞアリス、手つないでないとアリスそのまま落ちちゃうから」
「わかったわ」
「もう一度聞くけど覚悟はできたんだね?」
「勿論!」
私はアイニの手をつかむ、その瞬間アイニは力を込めて引き寄せると
私を抱え窓から異質な世界へ飛び込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます