第2話 カレン②
この数日カレンといて判ったことがある。
彼女はとても努力家だ。皆が酒を飲んでいる間も黙々と鍛練を続けている。
こんなに真面目で頑張っている彼女が報われない事があって良い訳がない。
そこでカレンに聞いてみる事にした。
「なあカレン、お前女って理由だけで仲間外れにされて悔しくないのか?」
カレンはきょとんとした顔を見せそれから顔を上下に動かしながら考え込んでいる。
「普通女は剣を振ったり鎧を着たりしない、だから仕方ない」
彼女らしい答えだがそれで納得出来る訳がない。
「嫌な事は嫌って言って良いんだぞ?」
「私が騎士になるって言った時には家族にも反対された。みんなに迷惑が掛かるのならもう辞めた方が良いのかもしれないな」
カレンはそう言うと寂しそうな顔で笑った。
「カレン、お前が騎士を目指した理由は何だ?」
「家族を、国を守る為、…剣の道に憧れたからだ」
カレンのその言葉を聞いて決意した。
「自分がやりたいと思った事に他人がとやかく言ったからって何だ!そんなの糞食らえだ!
お前が剣を好きなのはたった数日でも見てれば分かる!だから続けろ!」
そう言ってカレンの胸当ての上に拳をぶつけた。
「そんな事言ってくれたやつ初めてだ。
タローは変わったやつだな…ふふ」
少し変わったカレンに変わったやつと言われてしまったがこの国の価値基準では変わっているのは自分の方なのだろう。
「環境はな…自分の力で変えろ。」
「環境を変える?」
カレンは不思議そうな顔をしている。
「俺が立場を利用してあいつらにカレンと仲良くするように言ってやる事は出来る。
だけどそんなのは上っ面の付き合いだけで何の解決にもなってないんだよ。
だからあいつ…ガストン!どうせあいつがリーダーだろ?あいつに決闘を申し込んでぶっ飛ばせ!
お前の実力をみんなに認めさせるんだよ。」
「自分の実力を認めさせる…か。
考えた事も無かったよ。しかし彼が試合を受けてくれるかどうか…」
「その為に俺がいるんだろ?」
太郎はウインクしながら言った。
「俺が決闘を申し込んでやる、応じなかったら応じる様に挑発して決闘の場に引きずり出してやるよ。
問題は…だ。
どうだ?奴には勝てそうか?」
実際のところカレンがガストンに勝てなければ全て台無し、目も当てられない、カレンの居場所は更に無くなっていくであろう。
「やってみなければ分からない…だが負ける気もない。」
今までろくに訓練や手合わせを共に行ってこなかったのだ。お互いに実力は未知数であろう。
しかしカレンの瞳には静かな闘志が宿っていた。
「良いかカレン。努力は結果を裏切らない。
俺はお前が誰よりも努力しているのを知っている。だから勝て!」
カレンは短く「ああ」と返事をした。
───2人は練兵場へと足を運んだ。
そこには4班の班員が揃っていた。
「ガストン君」
「あ、タロー様!こんにちは、何かご用ですか?」
ガストンを呼びつけると彼はすぐに駆け寄ってきた。
「君にはカレンと決闘をして貰いたい。」
単刀直入に用件を伝えた。
「何故です?女と試合をしても結果は目に見えてると思うのですが…」
ガストンは鳩が豆鉄砲食った様な顔をしている。
「ほほう、では君は逃げるというのかね?」
ガストンを焚き付ける
「逃げるですって?その女と勝負する得がこちらには何もないって事です」
だが退かない
「君は騎士として誇りを持ってるって言ってたよね?君が騎士とは認めないただの女に、しかも剣で負けたら…
君の誇りって
ガストンはムッとした態度を見せた。
「では決闘の条件を出しましょう。
私が勝ったらその女には身体で奉仕して貰うってのはどうです?」
んな!!?
予想外の返答がきて一瞬テンパる。
他の班員は口笛を吹いたり「良いぞやれ~」等と野次を飛ばしている。
「私が負けたら騎士としての誇りを失う、そちらが負けたら女としての誇りを失う、どうです?これが対等な条件ってもんでしょう?」
最もっぽい理屈を言っているがこいつの言っている事は最低だ。
どのように切り返すか思考を巡らせていると
「私はそれで構わない」
とカレンが前に出てきた。
盛り上がる班員達
「ご奉仕はみんなが見てる前でお願いしますよ~!」とおちゃらけて野次を飛ばす奴もいる。
「な…!おいカレン!もし万が一負けちまったらお前ひどい目に合わされちまうんだぞ!?」
カレンの身を案じて止めに入る…が
「タロー、それは違う。
私が賭けるものも…騎士としての誇りだ。
お前は私に騎士を続けても良いと言ってくれた。私の努力は報われると、努力は裏切らないと…だからこの勝負…絶対に負けない!」
カレンは力強く言い切った。
ならばあと出来る事はただ信じて待つのみだ。
カレンとガストンの決闘が始まる。
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