第11話 防衛任務

ハートロックは山々に囲まれた天然要塞でありそれ故他の国と違い滅亡を免れてきた。


更に城壁を設け魔族の侵入を防ぐのが防衛任務だ。

ハートロック騎士団が昼夜問わず交代制で行っている。


一様に魔族と言っても言語を解する者から獣に近いものまで様々だ。


魔族の大規模進行でもない限り人里に近い場所は魔獣ぐらいしかいない。

魔獣の侵入を防ぐのが主な任務とも言えるだろう。


そこへクリス達第6班の任務の日がやってきた。

全班を集めれば中隊規模の人数が防衛任務にあたっている事になる。


期間は1週間程で次の班と交代となる。

5日目まで特に何事もなく平穏そのものだった。



それは突然現れた。


鶏の頭をした魔獣コカトリスだ。


見た目は二足歩行に腕があり鶏人間といった方がしっくりとくる。


マッシュは城門の上からコカトリス3体を視認した。


「やっとお出ましか、5日間退屈だったぜ


マッシュは弓矢を構えた。


コカトリスの知能は低く基本的に鳴いたりつついたりするしか能がない。

勿論直接対峙すれば危険なのだが空を飛べる訳でもないし城門の上から眺めている分には危険は無い。


「コココココ…!!」


コカトリスが鳴きながら突撃してきた。

マッシュは一体、また一体とコカトリスを射ぬいた。

しかし矢が外れコカトリス一体を仕留め損なった。


コカトリスは城壁にたどり着くと城壁をつつきだした。


「ココココ!」


何度も何度も石壁をつつく。


「バカ!おい!やめろ!」


石壁が破壊される事はないが脆くなれば補修が必要になる。

マッシュは真下のコカトリスを狙って矢を構えるが城壁には下からの侵入を防ぐ為に返しがあり上手く狙えない。


コカトリスは壁をつつくのをやめない。


マッシュが下を覗いていると背後から声がした。


「コ…」


マッシュは声に気付き振り返った。


「え?」


そこにはコカトリスが立っていた。

マッシュの意識はそこで途絶えた。



持ち場の交代に来たクリスは異常を察知した。

城壁の上にいるコカトリスを視認すると一気に駆け寄り背後から両手剣で両断した。


「マッシュ!!!」


クリスは大声で呼び掛けた。

マッシュはくちばしで眼球から脳まで一突きされており即死だった。




───────────────────────



報せを聞いて太郎は城へ駆け付けた。


布にくるまれた遺体に顔をうずめ泣き叫ぶ女性がいた。

「マッシュ!マッシュ!うわあああ!!」


あの人がマッシュの恋人のレナなのだろう。

こちらに気付くとクリスが近付いてきた。


「こんな事になってしまってすまない」


「お前が悪い訳じゃないだろ」

自分を責めている様子のクリスに声を掛けた。


「マッシュが後れを取る様な魔物ではなかったはずだ。しかし知能の低い魔物が罠をはった…

今回の襲撃、指揮者がいるかもしれない。」


指揮者…魔族の魔の手がすぐそこまで迫っているのであろうか。


人が死んだ。

先日言葉を交わしたばかりの人があっさりと死んだ。

平穏で平和ボケして身の危険など他人事ひとごとで能天気に生きてる日本とは違い死が身近にある世界…


ここは日本では無いのだと実感して身震いがした。


自分は生きていけるのだろうか


自分は役に立つ事が出来るのだろうか



泣き叫ぶ声が聖堂に響く中そんな考えが頭の中をくるくると回っていた。

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