第9話 ニーア②

本日はニーアと共に街を回る事になった。

シスハより不足している調味料の買い出しと余った時間は太郎に街の案内をする様に指示を出されニーアは気合い十分といった様子だ。


まあ気晴らしに遊んで来て良いですよという意図を読み取る力はニーアにはまだ無い様だが。



ハートロックの城下町はかなり広い。

数日で見て回るのは不可能であろう。

人類最後の砦というくらいだから全ての人口がこの街にいるのだろうか?


周りを見渡すだけでも様々な仕事をしている人が見てとれる。


靴屋、服屋、果物を売る屋台からカフェ、屋根を修理している人等もいる


街の中は活気付いていた。



名目の調味料の買い出しは一瞬で終わってしまった。


「街の案内はニーアに任せて下さい!」


胸の前で両手を握り気合いを入れている。


「宜しく頼むよ」


頼りにされてニーアは嬉しそうだ。


街役場や裁判所、劇場等主要スポットを中心に説明してくれた。



「劇場なんてものもあるんだな」


「はい!こんな世の中ですから娯楽も必要です。

今は『ワンダフル』という公演が人気の様です。」


「ワンダフル?どんな話なんだろうな」


「さあ…?

確かゴミ捨て場に集まる犬達の話だった様な…」


「ふ~ん、良かったら今度みんなで観に来ようか?」


「良いんですか!?」


ニーアはまた目を輝かせている。

年頃の女の子らしくお芝居も好きな様だ。


劇場の入口付近を歩いていると甘い香りが漂ってきた。

形状を見るにワッフルの様な焼き菓子らしい。

ニーアがそちらをじっと見ている。


「食べたいの?」


「いえ!そんな!美味しそうだなんてこれっぽっちも思ってません!」


絶対に食べたいと思っているので2つ買う事にした。

これ幸い生活費は王宮から支給されているのでこれくらいの出費は何てことない。



「おばちゃん、これ2つちょうだい」


「はいよ!可愛いお嬢さんとデートしてるのね

おまけで蜂蜜たっぷりかけてあげるよ!」


おばちゃんは目の前で蜂蜜を沢山かけてくれた。


「はわわわわわ!」


ニーアの目は輝き口元からはよだれがはみ出ている。


「はい、ニーアちゃん、どうぞ」


そう言って焼き菓子を手渡すとニーアは


「ありがと!お兄ちゃ…!

はう~間違えました、すみません」と言って赤面した。



尊死…!


思わずニーアを抱き上げた。


「きゃー!」


ニーアはキャッキャッと笑っている。


「本物のお兄ちゃんだと思ってお兄ちゃんって呼んでくれても良いからな!」


そう言うとニーアは


「お兄ちゃん…また遊んで下さいね」


と言ってぎゅっと抱きついてくれた。



その日の夕飯俺とニーアは少し食べる量が減ってしまったが一緒に買い食いしたのは2人だけの秘密にしたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る