第8話 ニーア①
カーテンの隙間から入る朝日が眩しくて目が覚めた。
休日は昼過ぎまで寝るのが太郎の常であったがこの世界にきてからは時計も無く、日が沈み暗くなったらさっさと寝て朝日と共に起床するというルーティーンが出来上がっていた。
高校生にあるまじき超健康生活である。
着替えを済ませ廊下に出ると通路の奥から洗濯物を籠いっぱいに積んだニーアが歩いて来た。
厳密に言えば籠から溢れた洗濯物は顔を隠してしまっているがこの屋敷に少女は1人しかいないのですぐに分かる。
微笑ましい光景だなと思い黙って見ているとニーアはポスンとぶつかってきた。
「あわわわ!太郎様!ごめんなさい!ちゃんと前を見てなくて!」
しゅんと萎れてるニーアちゃんも小動物の様でとても可愛い。
守ってあげたい。
「大丈夫だよ
それより朝からお仕事して偉いね」
「偉い…ですか?
奉公に出ているのだから当たり前の事ですよ?」
また感覚のズレが出てしまった。
初日にシスハに教えて貰ったばかりなのに。
「半分持つよ」
「そんな!ご主人様に持って頂くなんて出来ません!」
ニーアは慌てて断ってくる。
「まあ良いから良いから」
半ば強引に洗濯物を半分持つと
「この方がお互い顔が見えてお喋り出来るだろ?」と言った。
それから一緒に歩き出すとニーアは
「タロー様はお優しいんですね」とうつむきながら口にした。
心なしか耳が赤い気がする。
洗濯場へ向かいながらお喋りを続ける。
「俺のいた世界じゃさ、ニーアちゃんくらいの子は遊びたい盛りなんじゃないかと思ってさ。
友達とか、兄弟とかと。
兄弟はいるの?」
「はい、5つ上の兄さまがいます。
兄さまに遊んで貰うのがとても好きでした。
最近では家業の手伝いが忙しくめっきり遊んでくれませんでしたが…」
寂しげな表情を見せるニーアに提案した。
「じゃあ俺と遊ぼうよ!
お仕事の合間とか時間がある時にでもさ」
「良いんですか?」
「もちろん!」
先程とは打って変わって目が輝いている。
こういう所はやっぱり子供らしいなあと思う。
洗濯場に着くとそこにはシスハがいた。
「タロー様、お早うございます。
洗濯物なんか持って頂いて…ニーア、ダメじゃない」
先輩メイドに注意されたニーアはしょぼんとしてしまった。
「ああ、違うんだ。
これは俺が無理矢理手伝ってんの、だから叱らないでやってくれ」
そう説明するとシスハは
「朝からレディを口説くだなんて精が出ますね♪」と返した。
シスハもジョークは言えるらしい。
太郎の後ろでそれを聞いたニーアが顔を真っ赤にしていた事を太郎は知らない。
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