第6話 初めての夜

就寝時間となり寝室に戻ってきた。


大きなベッドに仰向けで派手に倒れ込む。

体が大きく跳ね深く沈んだ。


ふかふかで気持ちが良い。



今日は色々な事があって疲れた。


本当に疲れた。


田中さんに告白して


フラれて


異世界にきた。



顔を合わせなくて済むのは正直助かる。


そういえば両親はどうしてるだろうか?

今頃心配して騒いでるのかな

警察に届け出てるのだろうか



心配かけてごめんなさい

もう会えないかもしれないけど、息子はこうしてちゃんと生きてます



そんな事を考えていると



コンコン



扉がノックされた



こんな時間に誰だろうか?



「はい!どうぞ!」


と返答しガチャと扉が開くとそこにはネグリジェ姿のシスハが立っていた。


仕事中と違って髪をおろしている。

その長さは背中の中程まであろうか。



「ちょっと…お邪魔してもよろしいですか?」



「あ、はい!どうぞ!」


入室を許可するとシスハはベッドに腰掛けた。


呆然と立ち尽くす太郎を見上げて


「座らないんですか?」と声を掛ける。


シスハに促されるままベッドに腰掛けた。



ゴクリ



生唾を飲んだ音が体に響いた。

シスハにも聞こえただろうか?

聞こえてないよな?


月明かりに浮かぶシスハはとても艶っぽかった。

ネグリジェはメイド服と違った無防備さがあり胸の高鳴りが収まらない。



「何か、ご用でしょうか?」



何故か敬語になるヘタレ主人。



「用…という程の事ではありませんが…


ロドリゲフ様に伺いました。タロー様は女性に不慣れだと。


ですから少しは慣れて頂こうかと思い参りました。」



そういう事でしたか、お気遣い感謝致します。

背筋を伸ばして両手は腿の上に乗せるスタイルで座っていたのだがその体勢のまま


「へ、へぇ!」


と短く返事をした。


何が「へぇ」だ、もっと気の利いた事は言えんのか。


するとシスハが下から顔を覗きこんできた。


顔の距離は20cmくらいであろうか、シスハの目が潤んで見える。


じっとこちらの目を見て反らさない。


どうして良いかわからず目が泳ぎまくった。


すると突然シスハがこちらの右手を掴み彼女の左胸に押し当てた。



ふわぁーーーー!!!???



おぱ!おぱぱぱぱぱぱ!!!!?!?



頭が真っ白になったが反射的に揉んだ



ふに



フワッフワで柔らかい、女性の胸ってこんなに柔らかいものだったの!?



ふに


また揉んだ



ふに



また揉んだ



ふに



ふに



ふにふにふに



ふにふにふにふにふにふに



脳内麻薬がドバドバ出ている様だった


よもやここが楽園シャングリラであったか……



「長い」



突然の発言にハッと気付き手が止まった。



「触り方が気持ち悪い、がっつきすぎです


減点1です。」



!?



「男性がリード出来なくてどうするんですか…


鼻の穴膨らんでるし…減点1です。」


!?



「ガッチガチに緊張してるし唾飲む音うるさいし…


減点1です。」



聞こえてた!(泣)



「あのですね…


女性は逞しくて頼りになる男性に心惹かれるのです


雰囲気作りってわかります?雰囲気作り」



「屋敷を見た時もおのぼりさんの様に浮わついてたし」


ぐはっ!


「テーブルマナーも知らないし」



ぐふっ!



「ぜ~んぶ減点です」



ぐはぁああ!!!


すげー辛口で責めてくる


太郎のメンタルは完全にやられた。


しかし太郎は最後の力を振り絞って尋ねた



「ち、ちなみに残りの点数は…?」



「0点です♪」



「ですよねーーー!!!」



太郎はベッドに倒れこんだ。



「それでは今夜は失礼します。おやすみなさい。」



シスハは挨拶すると足早に去っていった。


きっと彼女なりに気を使ってくれたのだろう。

悪いことをしたな。




窓辺にもたれ掛かり月を見上げる。

月の形は当然だが知っている形ではなかった。

本当に異世界に来たんだなと実感する。



父さん


母さん



僕は異世界でも容赦なくメンタル抉られる様です…



涙の味のしょっぱさはどこにいても同じだった。

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