第4話 謁見

太郎は城の中を散策していた。


ハートロック国王との謁見が決まったのだがそれまでの時間潰しにロドリゲフが提案してくれたのだ。



当然お目付け役はいるのだが。



「如何なさいましたか?」



そう言って微笑んだのは爽やかなイケメン兵士クリス・レイゼンだ。


イケメンは苦手だ。

何考えてるか分からないし何を話したら良いのかも分からないからだ。


本当に自分と同じ生物なのだろうか。


長い廊下を歩きながらそんな事を考えクリスの方を見たのだが彼は何か勘違いした様だ。


「不安…ですよね。お見受けするに私と歳もそう変わらない筈なのに、突然見知らぬ世界に連れてこられて怖いに決まってます。


ですがご安心下さい!

タロー様の事はこの命に換えてもお守りしますから!」


何これ惚れてしまいそう。

普通に良いやつだった。



「いやさ、クリス…歳も近そうだし普通にタメ口で良いよ、太郎って気楽に呼んでくれて構わないし」


「とんでもありません!

タロー様はこの国の英雄!一介の兵士に過ぎない私とは立場が違うのです!」


「色々とくすぐったい。

それにライズだっけ?俺はお前らをレベルアップさせてやる自信が全く無い。


自慢じゃないが俺は人生で30回フラれてんの!

女の子に真実の愛とやらを貰えるとは到底思えないね。


逆にお前はどうなの?

モテんじゃねーの?」


単純シンプルに気になって聞いてみた。


「はぁ…確かに女性から恋文や花を貰う事は良くありますが…」


何こいつやっぱり嫌い


ぶん殴ってやりたくなったがそこはグッと堪えた。



「じゃあさクリス、お前は俺の師匠って事で宜しくな」


「お役に立てるかどうかは分かりませんが」


「ほら敬語」



「分かったよ、宜しくね



こうしてクリス・レイゼンと握手を交わし異世界で始めての友人が出来た。



───────────────────────



玉座のある広場では大賢者ロドリゲフ

騎士団長ハインツ及びハートロック騎士団の面々が整列していた。



そして玉座にはこの国の王

レオナルド・J・ハートロックが鎮座していた。



おもてを上げよ」


王に言われると太郎は顔を上げた。


王様とは恰幅の良い体型に白いお髭を生やし赤いマントと王冠を被っているものではないのか…


ハートロック王はそんな王様像とは全く違った。


髪は後ろに流し鷹の様に鋭い目

服装は気品こそ漂うものの軍服の様でもあり実用性を重視している様だった。



はっきり言えば威圧感が凄い。



「異世界より現れし救世主太郎よ。

そなたがこの国に来てくれた事を嬉しく思う。」



「ははー!有り難きお言葉!」



「ハッハッハッ!そんな畏まらなくとも良い」


思いっきり笑われた。



「王とは言え民がいなければ只の人だ。

この辺境の地で滅びゆく運命をただ待つしか出来なかったこの不甲斐ない私は所詮只の人なのだ。


だがしかし君が現れてくれた。

心から感謝する。


君の為ならどんな支援でもしよう。」



一国の王がここまで言うとは相当切羽詰まってたんだなと思った。


「君の為に決して大きくはないが屋敷を用意した。

そこで暮らすが良い。


それとこれは願いなのだが…」



一瞬間があった


「特殊な因子を持った女性がいると聞く。

極少数な上見分ける方法もないと言うが我々を遥かにレベルアップさせてくれるそうだ。


そんな良縁に恵まれる事を只願う。」



なるほど、血液型で言えばRhマイナスの様なものか。

見分ける方法もないのであれば本当に願うしかないのだろう。


「さて、これから屋敷に向かって貰うのだがその前に紹介したい人物がいる。


ロドリゲフに聞いたのだが君は女性の扱いに不慣れな様だね。


そこで教育係としてこの王宮より専属のメイドを連れていって貰う。


入りたまえ」



王が入口に向かって声をかけると一人のメイドが入ってきた。


清廉な佇まい、美しい顔立ちに透き通る金の髪の女の子は客間で紅茶を出してくれたメイドであった。



「今日から君の専属メイドになるシスハだ。


色々と教えて貰い女性にも慣れてくれると助かる」



王にそう紹介されると彼女はスカートの裾を両手で摘まみスッと見事なカーテシーを見せた。



「本日より仕えさせて頂く事になりました、

メイドのシスハです。

宜しくお願い申し上げます、ご主人様。」

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