1. 始まりの異世界生活

第1話 異世界召還

辺境の国ハートロック


山々に囲まれたこの地は天然の要塞だ。


それと同時に人類最後の砦でもある。


最後の王族の居城、ハートロック城の一室にその魔方陣は描かれていた。


石造りの部屋に浮き上がるそれは異世界より生物を召還する巨大魔方陣


その魔方陣を取り扱えるのは王国随一の大賢者ロドリゲフだ。


「首尾はどうですかな?ロドリゲフ殿」


問い掛けたのは騎士団長ハインツ

きらびやかな鎧を身に纏った屈強な体躯の男だ。


「…今度こそ成功させねば人類に残された道は破滅のみ。必ずや成し遂げてみせますよ、を持つ者の召還を。ふぉっふぉっふぉ」


白く長い髭を撫でながらロドリゲフは答えた。


笑みを浮かべながらもその瞳の奥には悲壮があった。


自分が成功させねば人類は滅亡する


300年続いたハートロックの歴史も幕を下ろす。


重圧だった


人々の期待が、希望が、その眼差しが。


重圧に押し潰されてしまいそうだった。


だがロドリゲフは前を向く。


大賢者の威信にかけて使命をまっとうする為に。



「では…始めますかな」


ロドリゲフとその弟子達3人は両手を掲げ呪文を唱え始めた。


【我三千世界に星千五百を対価として差し出す、幾多の世界よりアルファの星を持つ者を選定しこの世界へ顕現させよ】


魔方陣がとてつもない光を放つ。

辺り一面は光に包まれ何も見えなくなった。


ハインツは耐えきれずマントで顔を覆う。


激しい光は長く続かなかった。

光は収束し徐々に視界が戻ってくる。


「お、おお…」


誰かが驚きの声を漏らす


魔方陣の中心に人影が見えたのだ。


ロドリゲフは人影に向かって声を掛けた。


「あなたが…あなたが我々の希望、勇者様なのですか…!?」



人影…男…青年は胸の前に右手を握り締めくうを仰ぎながら立っていた。



一筋の涙を流して




「へ?」



青年は状況の変化に気付き周囲を見回して言った。



「これ…」




「「「異世界召還ってやつぅ~~~!!!???」」」

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