第5話暁月緑

 体を横に転がしたらなんとか回避できたが、床に体が落ちた。

 そのままナイフはベッドに突き刺さった。

 立ち上がろうとしたらナイフの男が、僕の顔を目がけてナイフを横一線に斬りつけてきた。

 顔を伏せてなんとか回避した。

 くそー。

 僕は鞄を手に持ち全力で家をでた。


「こっちにきて」

 物陰から手招きされ、僕は一瞬躊躇したが、このまま当てもなく逃げてもしょうがないので導かれるまま、そちらの方向に向かった。


「大丈夫?」

 うっすらとしか相手の表情は見えないが、同じクラスの女子生徒だと分かった。

「『ゴホ』ありがとう助かったよ」

「気にしないで」

「それにしてもなんで僕がこんなにも狙われなくちゃいけないんだよ?」

「多分狙いはそれ?」

 女子生徒は僕の鞄に指を差した。

「本のこと」

「そう。あれ聞かされてない。その本は願いが叶う魔法の本だと。だから私もその本を狙っているのよ」

 女子生徒は僕から本を奪うと、先ほど僕を襲ったナイフの男に渡した。

 僕の家の玄関の光で2人の顔を確認することが出来た。 

 1人は同じクラスの女子生徒、もう1人はさっきまで僕に事情聴取をしていた島原先生だった。

 顔を隠しているといえ、あの身長と体型はまず間違いないだろう。


「2人はグルだったんですね?」

「あんたチョロすぎ。知らない人に付いていっちゃいけないって学校の先生から教わらなかった」

 学校の先生が今目の前にいるんですけど。

「島原先生どうしてこんなことを?」

「………」

 無言のまま島原先生は僕の心臓にナイフを刺した。

 いきなり過ぎて避けることが出来ないのと、2メートルはある距離を一瞬でつめられたので反応も出来なかった。

 薄れゆく意識の中で暁月緑の姿だけが見えた。


 うっすらと目を開けると見たこともない壁を見た。

「ここは?」

「目が覚めたか」

 暁月が僕のそばにゆっくりと近寄ってきた。

「お前なに本取られているんだよ」

「だって、いっつ」

 胸をみたら包帯でぐるぐる巻きにされており、血が滲んでいた。

「あんまり興奮しない方がいい。あと数センチズレていたらお前は死んでたぜ」

 くそー。

 なんでこんな目に。

「それよりも本だ本。なんで取られたかな?」

「そんなこと言われても急に襲われたし、どうしようもなかった」

「あーだから俺は学校で聞いたんだよ。プロファイリングって知ってるかって」

「まさか暁月君も狙ってるんじゃあないよね?」

「まぁ狙ってないっていうのは嘘になるかも知れないけど、とりあえず今はお前を守ることにしている」

「どうして?」

 暁月は自分の鞄の中から僕と同じ本を取り出した。

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