第4話天道仁

 僕は取りあえず家に戻り、血だらけのシャツをゴミ箱に突っ込みベットに倒れこんだ。

「…つ……疲れたー」

 と仰向きになりながら呟くと自然とまぶたが重くなり、そのまま眠りに落ちた。


 目が覚め時計を見るとざっと24時間以上寝ていた。

 相当疲れている証拠だろう。

 今日は学校がある日なので制服に着替え家を出た。

 

 学校に着くと図書館にはkeepoutと黄色いテープで塞がれていた。


 そして教室内に入ると、図書館の荒れ果てた姿の事で話題になっていった。

 僕の唯一の憩いの場が。

天道仁てんどうじん久しぶり教室にきたけどどういう風の吹き回しだ?」

 話しかけてきたのはクラスでもみんなから慕われている暁月緑あかつきみどりだ。

 なぜフルネームで呼ばれたのかがちょっと疑問に思ってしまったが、そこはスルーしとこう。

「図書館があまりにも壊滅状態のものでして」

「噂によると強盗が金目の物を盗んだらしいぜ」

 金目の物なんて図書館にあるはずもないのに、行くなら銀行や金がありそうな家行った方がいいと思うけどな。

「それと伝説のプロファイリングって知ってるか?」

「え?」

「え?ってことは知ってるってことでいいのか?」

 僕は動揺してしまった。

 その言葉はあの天使か悪魔か知らないやつに会わなければでてこない。

 まさかこいつもこのふざけたゲームに参加しているのか。

「『ゴホゴホ』…いや知らないよ」

 暁月緑あかつきみどりはなにも言わずに、僕のそばから離れていった。


 授業はなにごともなく進み先生から職員室に来いと呼び出しを受けた。


「失礼します」

 扉を開くと先生(島原巧しまばらたくみ)は僕が来るのをずっと待っているみたいで、先生の方から僕に近付いた。

「遅かったね」

 優しく喋るこの人は誰にも気を遣える先生で、生徒から大変人気があった。

不躾ぶしつけの質問をしてすまないが一昨晩君はなにをしていたのかな?」

「………」

 一昨晩といったら僕が覆面男に襲われた日のこと。

 勘違いでなければこれは事情聴取。

 先生もまた暁月と同じく僕のことを疑っている。

「応えられないのかな?」

「『ゴホゴホ』わかりません」

「わかりません?」

「はい」

 この応えは嘘ではない。

 だってその間なにやってたかなんて本当に覚えてないんだから。

「………」

「………」

 お互いに沈黙が続いた。

 お互いがなにかを隠していることをみつける為に。


 1時間以上ひと言も喋らない状態が続いたが、学校のチャイムが鳴り終わると、ようやく開放してもらった。

 時間はすっかりと遅くなってしまい、外ら暗くなっていた。

 一昨晩のように後ろを注意しながら、歩きながら帰るようにしたが、人がいる気配がしなかった。


 自分の家の玄関のドアノブを回すと、『ガチャリ』と空いていた。

 一瞬恐怖を感じたが、勢いよく扉を開けて中に入った。


 家の中は空き巣が入ったと思えるほどに、部屋中が散らかっていた。

 冷蔵庫、箪笥、机の引き出し、調べられる所は全て調べられていた。

 だけど金目の物など取られてはいなかった。

 多分狙いは学校の鞄の中に入っている『伝説のサムライ』本だろ。

 理由はないのだがなぜかこの本をはなみはなさず持ってないといけない気がしたのだ。


 ベットに仰向けになると顔を隠した人が俺の所にナイフを体ごと垂直に落としてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る