第二話 いつもと違う日
今日も変わらず花瓶のお花の水を変えて古ぼけた写真に手を合わせて少しウキウキしながら家を出る。朝のお茶を飲むときに茶柱が立っていたのだ。いいことがあるといいな。そんなことを考えながら家を出る。学校までの三十分の道のりをゆっくり歩くのも結構好きである。この地域に電車もバスもない田舎かと言われると答えはNOである。バスはちゃんと二時間半おきに来るし、電車も改札こそないがれっきとした一両編成の手動ドアの車両が二時間おきにくる。しかし一人暮らしは節約が大事なのである。自分の足で歩くだけで「交通費」というものが節約できる。素晴らしいものである。そんなこんなで私は今日も徒歩で学校に向かうのであった。
すれ違う人も信号もない田んぼが広がるのどかな道を鼻歌交じりに歩く。最近降った雨のおかげで田んぼには水が溜まり、青空が反射して綺麗な景色を私の目に映し出していた。
ちらほらとうちの高校の制服姿が見えてきたら学校が近い証拠だ。学校の校門をくぐり、下駄箱を通り抜けてクラスの中に入る。自分の席に着いたら図書館で借りている本を読む。時折本にのめりこんでいる私の集中を遮るような大きい話声がする。こういう時、普段は集中力がなくなってページをめくる速度が遅くなるのだが今日は比較的いつもと同じペースで読めている。私成長したな、偉い。今日の朝のホームルーム、授業はいつもの倍以上の速度に感じあっという間に昼休みになってしまった。そこで私は重大なことに気づく。
「お弁当忘れちゃった、、、」
いつも早起きして作るお弁当をそのままバッグの中に入れるのだが茶柱に気を取られ弁当を机の上に置きっぱなしにしていたのだ。仕方がない、今日はお昼抜きか。音を立てそうなお腹を抑えながら机に突っ伏する。寝て空腹を収めよう。謎の思考回路に至った私は寝るコマンドを選択し眠りの体制に入った。起きるともう昼休み終了直前だった。私はあることに気づく。
「え、、なんで皆さんいらっしゃらないの……?」
教室にはまさかの私一人。教室に私以外の人の姿はなかった。思い出したかのように振り向き後ろの黒板を見る。5限目の化学は移動教室と書かれてあった。急いで準備し、教室を出る。理科室の入口を通り抜け、席に座った瞬間チャイムが鳴った。
「間に合った〜」
ほっと一息つき、授業を受けようと思った矢先、またもハプニングが起こる。筆箱を教室に忘れてしまったのだ。友達もいないので一人あたふたしていると隣の男の子がそっと筆記用具一式を貸してくれた。え、これ私に?喋ったこともないのに?ど、どうしよう……?私の心の声も私の動作もあたふたしていると、その男の子は言った。
「これ、よろしければどうぞ」
私はドギマギしながらその筆記用具を受け取り、その授業を何とかやりきった。お礼を言おうと思ったのにその筆記用具を返して言おうとしていたら友達が通りかかり、お礼をいう間もなくどこかへ言ってしまった。
その後はいつも通りの授業を終わらせ、下駄箱で上靴を外靴に履き替え外に出た。空は青くどこまでも広がっていたが、見たこともない雲が一つだけ浮かんでいた。なんだっけあの形。
帰り道を一人考えながら歩き、ふと思い出す。
「あ、うちのお茶の入れ物だ。」
今日は茶柱が立っていたおかげか、今日はいつもとは違う、ドキドキ感溢れる1日になった。明日はどんな日になるだろう。
青空に背伸びをして、帰り道を歩いた。
ありとあらゆるありふれた少女の物語 桜雨 雪乃 @Hatunatu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ありとあらゆるありふれた少女の物語の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます