第五章

第五章

 

 数日後の宇宙空間のEP。

 ここ数日、何も報告が無かったジャミール人から、全てのEP全体に声が聞こえてきた。

 「EPの諸君。内部での過ごし方には少しは慣れただろうか?今日は重大な事件について伝えなければならない。あるEPで、ここ数日の間に、数名の女性が性的暴行を受けた。犯行者は数名に及び被害者もそれなりの人数なのが判明した。ところが、女性から誘いを掛けた者もいる様だ。……今は未来の為、人間の進化の為に日々過ごして欲しかった。このEPでは、統率が取れていない。誰もが先を考えて行動していない様なので、無条件でEP内の全ての人間の処分を決定した。無関係の者には気の毒だがやむを得ない事態と考えた。……それから地球上の報告もしておこう。ここ数日間の間にライフラインを確保し、集まった人々は以前の生活に戻りつつある。EP内の諸君はライフラインなど気にせずに過ごせるはずだが、早速それに甘えた行動を取る者が出たと言う今回の報告だ。該当のEPの人間には消えてもらった。残り22機のEPになってしまったが、良い知らせも伝えよう。あるEPでは、設備の操作にあたり、目覚ましく進歩した。我々の高度な技術に馴染もうと努力している。近いうちには、各EPとのコンタクトも出来るのではと感じている。さぁ、進歩が見られないと感じている諸君は、更に協力し、得意分野を伸ばすなり、苦手分野を克服するなりの努力を惜しまず過ごしてくれたまえ。」

声はここで切れた。


 各EP内部の人々の多くが、協力的かつ行動的になろうとしていた。設備の操作は声だけで可能だ。子供もそれを理解している様だ。


 あるEPには、生物学や科学の達者な人が入っている所も有り、進化の為の取り組みも話し合われている。


 またあるEPでは、エンジニアが多く入っていて、近日中には操作系を設備のコントロールが可能になると見られる。


 互いのEP同士の情報はまだ叶わないが、それに近い状態まで進歩しているEPも有った。

 

 ジャミール人は、地球人に対してEP同士の競争を促してはいないが、他のEPを気にしつつ自然と未来を考え過ごす様になっていた。

 地球の人間達が分散されて半年、1年と月日が流れた。

 地球上の1千万余りの人々が暮らす地域は、電力、水道を確保し、食事は野菜を中心とした物を得られる様になっている。進化に対する行動も進歩が見られ、細胞レベルの治験段階まで発展していた。


 ある日、ここ集団が集まっている地域全体に、ジャミール人からの声が聞こえてきた。


 「地球の諸君。只今より、近隣のスペースに大切な設備を送る。宇宙空間のEPと同様の設備だ。出入りする者の管理は任せる。また、内部設備は言葉だけで機能するもので、不便はないはずだ。……エネルギー確保の為の設備も送っておく。内部設備に問いかけ、疑問を克服する事で便利な物になろう。」


 研究等を行う地域のそばにそれは転移されてきた。小さな都市1つ分はあろうかと言う様な大きさで、EPに似た物だった。

 入口らしき所が光っていて、誰もが出入りできるようだ。


 また、エネルギープラントらしい物も現れた。同様の姿形、EPと同じく窓はない濃いグレーの巨大な塊だ。


 ジャミール人は地球とEPも競争させ進歩させようと言うのだろうか?先の転移して来た設備にしても、高度過ぎる技術に圧倒されるばかりであったが、地球の人々やEPの人々は素直に従って過ごしている。

 もう既に地球人の技術力は消え、殆ど惑星ジャミールの支配下と言っても過言ではなくなっている。


 1年前には事あるごとに、人間の進化の為だと言っていたジャミール人からは聞かれなくなっている。

 だからと言っても、人間の心の中までは見通せないだろう。

今まで心で、頭で考えていた事を実行に移そうとするEPが幾つも出ていた。


 EPの操作系を駆使して、離脱を図ろうと移動を試みる機体が有った。EP10機にもなるその行動は、即座に静止された。


 その10のEPにジャミール人の声が聞こえてきた。

「勝手に移動は許可していない。進化の為の研究を勧めてきたはずだが……。一体誰が中心になって行ったのかを伝えなさい。その行動は、今の状況から離脱を図ろうとしたと見ているが、何か反論が有れば、その首謀者はそれぞれ言いなさい。」


 該当の10のEPにも研究者や科学者も居ただろう。ところが、逃げる事を中心に考え続けてきた者が、操作系を攻略出来たのだった。

 半ば怯え始めた者も少なくない。……また、消される。


 ジャミール人からの反応が無い。EPの移動を首謀したグループ以外はカプセルに収まってしまった。

 中には暴れ始める者もいて、騒々しくなってきた。

 責任の擦り合いを始める者もいて、殴り合いまで起こっている。


 まだジャミール人から何も言ってこない。

 大勢の人々が、カプセル内から静観と言ったところである。


 カプセルに収まった人達の人数から、勝手な行動に出た人数が割り出された様で、ようやく声が聞こえてきた。


 「10機それぞれのEPの無法者達よ。他の人間の為にならん行為を悔やむ事だ。もう互いが歪み合ったとて手遅れ。消えてなくなれ。」そう言うと、全ての該当者はいなくなった。


 「該当の10機のEPは人口が減ってしまった。今回は他のEPからの補充は考えない。残った者達は、継続して過ごしなさい。さぁ、進化のヒントを見つけ出し、実行に移せる様協力し、日々努力するように。」

ここで声は切れた。


 残る22機のEPと地球ではどちらが人間の進化に近いだろう。

 考える者は少なくない。だが、進化が可能であるから行動しているはずだ。あとどの位の歳月が掛かるのだろうか……。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る