第四章

第四章


 EP内部と地球全土に、ジャミール人の声が流れた。

「収容は完了した。人間それぞれ、思い思いの所持品を用意していた様だが、それは全て無効。残念だが内部には何も持ち込めない。

自力で行動出来ない方々には、こちらでカプセルに誘導、細胞単位の治療に取り掛かっている。食料も嗜好品も、趣味の物も全てEPに入った時点で無効である。気が付いたと思うが、EPでの活動用のお召し物に着替えて頂いている。今後それを着たまま過ごして頂く。地球に残った1千万の人々は全て健常者。死を迎えるまでの年月、進化の為に努力して過ごす事を願っている。」


 地球から離れていく29のEPは、それぞれ別々の方向に移動している。巨大な塊はこれからどうなっていくのか……。


 全てのEP内に、またジャミール人の声が聞こえてくる。

「言われた通り、カプセルに収まって大人しくしている人間は、身体の検査後、それぞれの対応を行なった後に眠って頂く。……おやおや、この後に及んで往生際の悪い人間があちこちに存在しているね。素直にこちらの指示が受け入れられないのなら、この場で消えてもらう。まだ疑問視している人間もカプセルに入って無い様だね、困ったものだ。既に君達人間全て、監視下にあるのだよ。では今1度言う。人間は今後、新たな進化が必要である。その為に皆が協調し、過ごす事を最大の目的としてもらいたい。これにそむく者は反逆者とみなし、即刻消える事になる。それでも、生命維持カプセルには入れないと言う者以外は、直ちにカプセルに収まる事。さぁ、少し時間を与える。我々に従えない、皆とは協調して過ごせない。そんなわがままはもう通用しない。よくよく考慮してみなさい。次にカプセルのチェックをしても尚、外にいる者は、このEPにとって脅威になる反逆者。消される事になる、いいな。」

音声が途切れた。


 どの位のスピードで移動しているだろう。もう地球は小さな青い点にしか見えない。太陽に照らされている部分以外見えない塊。


 ……すると移動が止まった。塊は停止している。

一旦ここでしばらく滞在させるつもりなのだろうか?


 地球に残された人々の中には好き勝手に行動する者が出て来ている。略奪を通り過ぎ、好きな建物を個人の所有物に変えようとする。やりたい事が出来なかった者に限って自分の事しか考えない。それが明るみに出始めていた。


 中には未来の人間の進化の為にと行動する準備をする者もいる。1つの場所に、思いを同じくして集まり始めた場所が点々と存在し始めている。


 今の地球全土の様子はジャミール人の監視下、消される者も多いだろう。


 ジャミール人の声が、EP内に聞こえてくる。

「EP内の諸君の中で、未だにカプセルに入らない者がいる。あれだけ言っているのにも関わらずだ。さて、その者達。周囲と同調出来ない報いとして即刻消えなさい。」


 各EP内の分からず屋の人間達は、光と共に全て消されてしまった。


 今度は地球全土に再び声が聞こえる。

「地球上にも、自分の好き勝手に行動したい者がいるな。何故未来の為に行動しようとしない?君達には新たな進化が必要だと伝えたはずだ。その者達も、残念だが消えなさい。」

地球上、そして各EP内部では消された人間が相当数いた様だった。その状況は音声で知らされている。


 「意を同じくして未来に希望を託そうとする人間のみEPで過ごして頂く。君達にとって、何不自由ない生活がある。カプセルで検査を終えた方から順に眠っている。これより、消えた人間の補充に取り掛かる。EP29から順に移動し、1千万に足りないEPに移る事とする。誰が何処のEPに移動するかはこちらが決定する。地球に戻される方もいようが、それはこちらで振り分ける。EP間はカプセルごと移動するので、既に眠りについた方がほとんどだ。配置が済んだらまたお知らせしよう」




 EP間は、それぞれかなり離れてしまっていたが、EP29から順に移動が始まり、EP1から順に補充のカプセル移動を行なった。

 EP同士、連結しているかの様に密着し、自動でカプセル移動が行われている。

 空になったEPは一瞬で消えて惑星ジャミールに戻ったのだろう。2機3機と消えて戻っていくEP。

 EP内部の生命維持カプセル内は、既に眠りについた人々だ。


 最終的に5機ものEPが惑星ジャミールに戻った様だった。

そしてEP24には、1千万に満たない人数の収容者になっている。

 ジャミール人の声がEP24のカプセルに聞こえる。

「今から君達は地球に戻される事になった。地球に戻っても、未来の人間の進化の為に努力する事を勧める。」


 地球に降り立ったEP24のカプセルの人々は元の場所に転移され、服まで前のままに戻されている。1個人をどこまで管理監視されているのか、全く計り知れないデータ量だ。


 全てが終わると、EP24は一瞬で消えてしまった。やはり惑星ジャミールに戻ったのだろうか?


 ようやく落ち着いたEP1〜23。総人口2億3千万。

地球に残った総人口は1千万と少し。


 各EP内の生命維持カプセルでは、2億3千万人が眠りについている。


 地球上では、多くの技術者や科学者が、人間の進化に向けた研究の為、元大国だった国内の、設備が整った場所を拠点にし、集まる事になった。

 サポートする為のスタッフ集めや治験データの為の人員までもが続々集まっている。

 自然と老若男女の全てが、近隣都市に集中する様になっていった。


 1千万程の人々は、ほぼ同じ地域で過ごし始めた。


 電力の供給、通信の維持、ライフラインの全て。

どのカテゴリーポジションにも、それなりの知識を持った人が集まった。


 子供や年配者は、なるべく同じ地域で過ごしている。


 地球上での数週間の一連の様子は、ジャミール人によって記録されている。


 それは、カプセルの人々に見せる為であった。

EPそれぞれでの行動を比較するのだろう。




 進化が見られたEPは、惑星ジャミールに招待すると言っていたが、それはいつになるのだろう。

そんな急激に人間が別の進化をするとは考えにくい。

それともEPには地球人には考えもつかない設備が整っているのかも知れない。




 何らかの刺激により、生命維持カプセルの人達は目覚めた。

それぞれのカプセル内にまたあの声だ。


 「EP1〜23の諸君、このカプセルで眠っている間に完全な身体になっているはずだ。……さて、まずは地球に関する報告をしよう。1千万余りの人間達は、広い場所を見つけ、ほぼまとまった。動ける大人達は、人間の進化に向けて、役割が分かれ、1つになってきている。子供や年配者は近い地域で過ごしている様だ。そこで、このEP内でも同じ様に協調性を持って、進化に向けて手段を講じて欲しい。……それではこのカプセルについて説明する。人間は3食の食事を摂る者が多い様だが、今後は不要。画面が映し出されたそこを操作して眠りにつく、それで済む。カプセルの外では行動するのみ。ルールを定めて協力して過ごす様に。子供の親は一緒に過ごすか、カプセルで眠ったままにしておいても差し支えない。カプセル内でも時間と共に成長する、心配する事はない。カプセルの開閉も映る画面で操作できる。そこでカプセルの外に出たら、EP内部は無重力。足首のボタン操作で地につける。その強弱はそれぞれ各自の身体に合わせればよい。EP内部の多くの設備は、君達人間が、進化を研究し、実験出来る。ナノレベルの研究が可能。地球上では治験者まで集まっている様だ。……ここEPにおいても、皆が1つの事で協力し合い、進化に向けて過ごして欲しい。出来る事、得意とする事を役割分担して、日々頑張って欲しい。……設備の全ては言葉で操作出来る仕組みである。それは日常で慣れていくことだろう。君達のカプセルは決まっていない。空いたカプセルは洗浄され無菌状態。誰が次に入ろうが構わない。……やがて進化のヒントを得たEPは、我が惑星ジャミールへ招待する事になる。そして我々の知恵を授ける。必要な設備もだ。そこから更なる進展を期待する。……これを繰り返し、近い将来は目覚ましい進化を目の当たりに出来るだろう。では、EP1〜23の諸君。地球人の存続を賭けて頑張ってもらおうか。」


 カプセルから出て来る人々。無重力に戸惑うも、言われた説明通りに行動を始めている。空になったカプセルは、洗浄され、無菌状態になった。

 

 誰ともなく、率先して行動する者はまもなくして設備の操作にも慣れようとしている。


 子供とここに入ったのか、カプセルの事を話している親子。


 高齢者であるが、身体の変化に感動している者もいる。


 人同士が協力し合って何か始めている者達もいた。

地球の事を知らされて、負けじと何かに取り組み始めている。


 幾つかのEPの中には、あまり外に出ない人達ばかりのEPもあった。


 23機それぞれが違った人達の反応が有った。




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