第6話 鬱金香の話 有終の美

高校3年生の春、ふいに彼女はどうでもいいと思った。

終活を始めた。元から物が少なく整頓されていた部屋から次々と物を運び出し捨てた。

死のうと初めてそう強く思った。死にたい。これで終われる。

きっとこれが本心なんだと彼女は疑わなかった。

彼女は笑った。涼しそうな顔だった。

うっとりと空を眺め、海を見下ろした。


数日後、釣り人によって彼女の遺体は発見された。

胃の内容物は睡眠薬だけだった。

春が終わる頃の海とはいえ水温は低く、明らかに死後硬直は遅れていたが、彼女が消息をたった日と場所、時間を計算するとすぐに死亡した日は特定された。

勿論、自殺だった。



彼女の机の上には、



無理に生きるよりいいでしょ?

有終の美よ。



そう書かれた紙が1枚置かれていたらしい。


鬱金香は、春は死ぬ。諦めと孤独を胸に。、

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