第6話 超体育会系上司⑤
翌日春は早めに出社し、8時からのミーティングに備えた。他のメンバーも8時に向け、ゾロゾロと出社してきた。
なんだかんだみんな真面目なのである。
「おはようございます。」山崎も出社してきた。山崎はキョロキョロと周りを見回すと「あれ、課長はいないんですか?」と聞いてきた。
そう。あと5分で8時になるというのに山県が来ていないのだ。
「そうなんだよ。俺たちだけでやれって事だったのかな?」
「いや、そんなことないですよ。あの言い方で来ないというのさすがに無いんじゃないですか?」
確かにおかしい。春もそう思ったが、せっかく集まったのに時間がもったいないと思い、8時になった時点で春は山県から指示された内容で会議を進めた。
「結局なんだったんですかね。」会議が終わった後、山崎が話しかけてきた。
「山県課長来なかったですね。何かあったんですかね?」
「だとしても連絡くらいはしてくるだろうから、やっぱり俺らだけでやれってことだったのかな。」
「まー来たら、西島さんが聞いてみてくださいね。」
「分かった。」
しかし、9時になっても山県は出社しなかった。
不思議に思ってみていると、全体朝礼で支社長の野原が切り出した。
「皆さん、おはようございます。実は突然ではあるんですが、山県課長が異動になりました。詳細は社内ホームページに掲載されている人事情報を確認してください。後任の課長については今社内で調整中なので、決まり次第連絡します。」
その後、事務連絡があり、全体朝礼は終了した。朝8時から会議をしていたので、その日のグループミーティングは無しとし、春は急いで会社のホームページを確認した。会社のホームページには「NEW 人事異動について」というタイトルの通知が記載されていた。
中身を見ていると、山崎が話かけてきた。
「西島さん見ました?山県課長過去のパワハラで懲戒になった上で、人事部付けになってますね。」
「見た。野原支社長が言ってたのはこれだったんだな。しかもこんな急に発表されて、しかも今日からすでに不在となると、何か特殊な事情があったんだろうな。」
「そうですね。よっぽどひどいパワハラか、もしくはパワハラ相手に何かあったか。。」
「そうだな。。」
「西島、ちょっといい?」
そうこうしてると、野原に呼ばれ、会議室につれていかれた。
「ホームページ見た?」
「見ました。かなり驚いたんですが、あれ、いつ決まったんですか?」
「実は俺も昨日の深夜人事から電話があって、知ったんだよ。詳細は俺もホームページの情報しか分からないが、電話の感じだとなんか訳ありらしい。」
やはり、訳ありらしい。
「そうなんですね。かなりびっくりしました。」
「そうだよな。幸い長い期間仕事をしたわけじゃないから、直接的な影響はそこまで無いかもしれないが、後任の課長は早めにくるように調整するよ。」
「分かりました。まだこれから調整なんですよね?」
「いや、内緒ではあるんだけど、一応候補はいて、今東京支社で課長をしてる「
「あ、そうなんですね。宇山課長ですか…。。。。またキャラが濃い人が続きますね」
「そうだな。入れ替わりまで大変だと思うけど、当面何かあったら、俺に言ってよ。」
そう言い残して、野原との打ち合わせは終わった。
春はその日予定していた業務をこなしながらも、今回の人事異動がずっと引っかかり、一日中単純なミスばかりしていた。
「宇山」と宇山の部下達とは過去に某プロジェクトで一緒に仕事をした関係で、宇山の部下達とは今でもよく飲みにいくような間柄である。
その経緯もあり、宇山とも飲みに行ったこともあるし、宇山自身おそらく春の事を気に入っている。
しかし、宇山の部下達から話を聞くと、宇山は人間が悪い訳では無いが、正直そこまで仕事が出来るタイプではないらしい。
ただ、上司との折衝や付き合いがうまく、またメンバーが頑張ったプロジェクトの成果を会社に報告するのは得意らしく、上昇志向が強いタイプのようだ。
そう、「ギラギラ系上司」なのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます