3 現代中二病ー俺と魔法との12年に渡る死闘を書いていこうと思うー
生後5年と3ヶ月と2日。
その時から俺と魔法との長い長い戦いは始まった。
「火よいでよ!!ファイヤ!!!」
初めの一年は修行と自分自身に言い聞かして、毎日そう唱えていた。勿論、何も起こらない。
「火の神よ具現せよ!ファイヤァァァ!!!!」
2年目、まだまだ可愛い6歳。
幼稚園でこんなことを言っているのは俺だけだった気がする。
周りの大人たちは詠唱自体はおいておいて、英語ができることを褒めていた気がする。
尚、そのせいで6歳から英語教室に通わされた。解せぬ。勿論、何も起こらない。
「
3年目。小学校に入学した年。
俺と魔法とのは格闘はまだ続いていた。
それどころか、戦況はどんどんと熾烈さを増していた。
英語教室で変に才能を発揮した俺は、イキリ散らして英語での詠唱を始めた。勿論、何も起こらない。
「
4年目。親友のたっちゃんに出会ったくらい。
この頃も魔法との戦いと英語教室は続けていた。
尚、帰国子女の人が入塾してきたので俺のイキリも止まった。そのおかげで詠唱の最後が日本語になっている。勿論、何も起こらない。
「炎」
5年目。たっちゃんが夏休みのお祭りで迷子になった年。
この頃にはもう面倒くさくなってきていたが、一応詠唱は毎日していた。
英語教室もちゃんと続けていて、英語の成績だけは一番だった。勿論、何も起こらない。
「悪なるものに鉄槌を、神なる血肉を我に。ファイナルファイア!!!」
6年目。小学四年生位。たっちゃんがアレルギーのチョコレートを頬張って病院に運ばれた年。
この頃にも俺と魔法との戦いは続いていた。英語教室は家の近くに支店ができたので場所はそっちに変わったものの、続けている。
昨年サボりすぎたので、この年は長めになっている。やる気十分だ。勿論、何も起こらない。
「平面AB上の線分XCと半直線YDの交点を焼き尽くせ!!二条の烈炎!!!」
7年目。たっちゃんが幼馴染に告白して振られた年。
俺はまだちゃんと詠唱も英語教室も続けていた。
このころ、算数を超えて数学にドハマリして詠唱もそれに合わせて数学的になっている。
尚、テストでは英語と算数だけが出来た。国語は苦手だ。勿論、何も起こらない。
「
8年目。小学校卒業の年。たっちゃんがピアノ弾けないくせに校歌の伴奏に立候補して、何故か通り焦って練習してた頃。
俺の詠唱にも磨きがかかってきて、謎に三角関数が入っている。あのリズムいいよね。
ちゃんと英語教室は続けている。先生に英検進められたけど、なんか名前がダサいから蹴ってやった。たっちゃんがピアノ教室に通い始めたってことを言っておこう。勿論、何も起こらない。
「暴挙は廃墟となり、暴走は虚無へ向かう。無の理。火の
9年目。中学校に入学した年。たっちゃんがコケただけで骨折して入院した。
まだまだ俺は魔法と戦い続けている。
英語教室は進みすぎて教えることはないとまで言われたけど、通っている。勿論、何も起こらない。
「 」
10年目。たっちゃんが学校に眼帯をつけてくるようになった頃。
中学2年生になって周りが皆中二病化する中、俺は逆に恥ずかしくなって、詠唱を辞めた。
尚、英語教室はちゃんと行っている。オーナーを兼任している先生の体調が悪いから、たまに教える側に回ったりもするようになってきた。
「…………ファイヤ…。」
11年目。たっちゃんが眼帯のつけすぎで視力低下し始めた頃。
俺はまだ恥ずかしいものも、詠唱を再開した。
でも、まだ小声でつぶやく程度だ。
英語教室は本店が閉店して、家の近くの支店だけになったけど、通っている。教える機会が多くなり、もはや先生枠として見られている気がする。勿論、何も起こらない。
そして、12年目の今年。
高校の入学式へと向かう道のりで、俺は緊張を紛らわすためにいつも通りの言葉を叫んだ。
「火よいでよ!!ファイヤ!!!」
詠唱は初心に帰って一番初めと同じだ。
勿論、何も起こらない……………と言いたいところが、なんと違っていた。
「え、え、えええ???……えっ!!!?」
ボワッと、少しだけだが確かに炎が出ていたのだ。
「う、ううううう、嘘だろ!!」
この日、俺と魔法との長い戦いが幕を閉じるとともに、新しく新型中二病の称号をゲットした。
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