第38話 神の言葉
「。。。ガネ!」
「クロガネ! 起きて! 起きてよーー!」
目が覚めないクロガネを、イブ王女が必死に回復魔法を使って介抱をするが目を覚まさない。
「イブ王女、失礼ながら瀕死の状態では回復魔法はあまり役に立ちません。この状況に堪えきれず自決したのですからこのまま大人しく楽にさせた方がよろしいかと」
将軍のフェルマンがイブ王女へ言った。
「黙りなさい!」
イブ王女が青嵐とリュックが攻撃されないように二人にピッタリとくっついている為、周りの兵士逹は手を出せず、ただ黙って見守るしかなかった。
「もう良い! 放っておけ!」
ペソノはフェルマンに指示すると、兵士逹が取り押さえていたカールを引きずりながら外へ連れ出そうとした。
ペソノは暴徒逹の前で見せしめの処刑をさせるよう指示をしたのだった。
「 青藍 ! このまま何もしないで良いのかよ! カール監長が処刑されちまうよ! クロガネだって自決しちゃって。。。 何で黙ってるんだよ!」
「いいから大人しくしてろ小僧! 」
焦るリュックをたしなめ、青嵐は何かを待ってるかのようにただじっとしていた。
「もういい! 俺が止めてやる!」
そういうと、リュックが飛び出してカールの下へ走る。
「リュック! 待つんだ!」
その声に後ろを振り向いたリュックが驚く。また、周りの兵士逹もざわつき始めた。
何故なら、瀕死の状態だったクロガネが何事も無いかのように立ち上がっていたからだった。
「もう。。。駄目かと思ったよ。。。いくら弱いからって嫌になって自決する事無いじゃない? 馬鹿!馬鹿! クロガネの馬鹿ーー!」
イブ王女が、クロガネの胸に顔を埋め、拳で何度も叩いた。
クロガネがゆっくりと周りの状況を見て、ほっとした顔をした。
「心配させてごめん。。。 色々と理由があってさ。。。青藍 、俺を信じて何もせずにいてくれたんだな。ありがとな」
「何か考えがあったんだろう?
それに、これではっきりしたがな。どういうわけか、お前には瀕死の状態から復活するスキルを持っている。昔、婆ちゃんに聞いたことがある、神族はそういうスキルを持っていたってな。。。」
「えっ?」
イブとリュックが顔を見合わせた。
「話は後だ。。。 エ・ヴ・ァ・、 何とか約束が果たせるように頑張ってみるよ」
すると、クロガネは国王の下へゆっくりと歩き始める。当然、周りの兵士は国王の本へ行かせないように立ち塞がった。
「この国の未来の為に、国王と話をさせて欲しい」
「平民が国王と話そうとするなんて烏滸おこがましい! これ以上近づいたら切り殺すぞ!」
兵士逹が警告するが、クロガネはお構いなしに更に前へ突き進んだ為、兵士逹が剣を振り上げた。。。が、何故か剣を振り下ろさない。
それどころか剣を下げ、頭を垂れて道を開けた為、クロガネは国王の下へ歩き始めた。
「何やってるんだ! ここから先は。。。」
フェルマンがクロガネの前に立ちはだかったが、同じように頭が垂れて道を開けてしまった。
何と、誰も傷つけず、クロガネも無傷で国王の下へたどり着いてしまった。
「クロガネ。。。と言ったな? 」
「国王、無益な争いはもう止めましょう。カール監長を処刑すれば、魔族、獣族の憎しみを助長させます。そうなれば、この国に未来はないでしょう。それでも、カール監長を処刑されますか?」
「勿論だ。一平民が我に物申すとは笑止千万、兵士逹よ!こやつを早く切り殺せ!」
今度は後ろに控えていた兵士逹が飛び出してきてクロガネに切りかかった。
「何で分からない? どうして、聞く耳を持つことが出来ないんだ!」
突然、タギアタニア王の視界が真っ白になり、クロガネが1人だけ目の前に立っているのが見える。
よく見ると、クロガネの背後、いや天が神々しく光っていた。
『タギアタニア王よ、お前には王の器が無いようだな』
?
喋っているのは誰だ?
国王は目の前のクロガネの声でないことに気付いた。
「誰だか知らないが、長い間、血筋を絶やさずに続いた王家を侮辱するか!」
『国民も可哀想だな。無能な国王のせいで国が滅びようとしている。国の未来の為、国民の生活の為を思えば誤った選択はしないだろうに』
「我を愚弄しおって! 誰か居ないのか! 今すぐこの無礼者を捕えよ!」
『自分1人では何も出来ないのか情けない。本来なら裁・き・を・し・て・も・良・い・ん・だ・が・、それだとお前の目の前にいる男に示しがつかないんでな』
「。。。何者だ」
『クロガネの代・弁・者・と言っておくか。
お前との問答には飽きた。
心して聞くが良い! この国を建て直すためにお前とペソノは王位を放棄せよ! お前の娘、イブ王女を王とし、サポート役としてウドを将軍として戻すこと。この命令は神の言葉と受け止めよ!』
「神の言葉だと? ふざけるな!
何の権利があって我に命令するのだ!
出てこい! 姿。。。を。。。 あ。。 ら。。。わ。。。」
国王は直立したまま頭を垂れた。
『さてクロガネよ、お前の思いを代わりに伝えおったぞ。さて、お前の生命力を貰おう』
この一連のやり取りは、周りの者には見えなかった。
驚くことに、神の言葉を使ったクロガネ自信にも見えていない。
その上、時間の流れが違うのか、クロガネに怒鳴られてから、直ぐに国王が頭を垂れたように周りの者逹には見えていた。
「皆の者、国王として命ずる!
ウド、カールの拘束を解くのだ!」
国王が突然顔を上げ、命令を下した。
「父上! 何を言ってるんだ!」
突然の事に、ペソノが叫ぶのを尻目に、兵士逹はたんたんと2人の拘束を外したのだった。
「お前逹まで! おい! フェルマン! 何とかしろ!」
「。。。ペソノ様、我々は間違っていたのです。天が正しい道に導いてくれました」
「な。。。」
ペソノは絶句した。自分以外が皆、スッキリした顔で同じ事を口にしたのだった。
「おい! クロガネ! しっかりしろ!」
倒れているクロガネに気付いた青藍、リュック、イブが駆け寄る。
クロガネは途切れる意識の中、三人の叫ぶ声を聞いていた。
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