3-5. チートな風力発電
「ずいぶんとコンパクトな街になりましたなぁ……」
レヴィアが腕組みしながら街を眺める。
「タワマンに詰め込んじゃったからね」
シアンが言う。
確かに住宅地がタワマン二十本で終わってしまっているので、都市の主要機能は一キロ四方にほとんど入ってしまっている。
「これ……、上手くいきますか?」
レヴィアは首をかしげながら聞いた。
「さぁ? やってみよう!」
シアンはそう言うと両手をバッとあげた。
すると、一行の周りのあちこちから轟音が上がり、タワマンがニ十本、ニョキニョキと下から生えてきた。
「へっ!?」「すごーい!」「うわぁぁ!」
驚く三人。
生えてきたタワマンはきっちり五十階、青空にどこまでも高く伸び、威容を放ちながらみんなを囲んだ。各階には丁寧に作られたベランダがあり、紺色を基調としたタイル張りでスタイリッシュなデザインが見事だった。大きな窓ガラスが陽の光を反射しその存在感を際立たせる。
「空からも見てみよう!」
シアンはそう言うと、レオとオディーヌを両脇に抱えてツーっと飛んだ。タワマンの間をすり抜けながら徐々に高度を上げていく。
「うわぁ~」「見事ね……」
二人とも先進的なビルの作り、デザインに
角部屋は全面ガラス張りで中の様子が少し見える。中にはすでに家具が配置されており、すぐにでも住み始められそうだ。
どんどんと高度を上げていくと、さっき置いたブロック通りの配置になっているのが分かる。だだっ広い平原に建つニ十本のタワマン。それはさっきまで何もなかった原野をあっという間に先進都市へと変えてしまった。
「これが……僕の国……?」
レオがつぶやく。
「どう? 気に入った?」
シアンがニコニコしながら聞く。
「うん! 最高! 僕は丸太小屋を、みんなで作っていくのかと思ってたんだ」
「ははは、いまから丸太小屋四万戸に変える?」
「いや、これがいいよ。新しい国なんだもん、こうでなくっちゃ!」
レオはうれしそうに答える。
「確かにこれ見たらみんな驚くわ。新しい事をやろうとしていることがビシビシ伝わってくるし、とてもいいかも……」
オディーヌは瞳をキラキラさせながら言った。
二人ともタワマンの威容に感動しながら、しばらく林立するタワマン群を見入っていた。
◇
「もう住めるの?」
地上に戻ってきたレオはタワマンを見上げながら聞いた。
「住めちゃうんだなこれが」
うれしそうにシアンは言った。
「いやいや、電力無かったら住めませんよ。上下水道も……」
突っ込むレヴィア。
「レヴィアは細かいなぁ……」
シアンはそう言いながら、海の沖の方に両手を向けて何かつぶやいた。
すると、上空はるか彼方から何かが下りてくる。
「あれは何?」
レオは海の方を見あげ、手で日差しをよけながら聞く。
「風車……なの?」
オディーヌは不思議そうに言う。
「そう、風力発電だよ」
そう言いながらシアンは三本羽根の風車を次々と十本、沖に建てた。
「ちょっと……、大きくないですか?」
レヴィアが不思議そうに聞く。
「高さ一キロメートル、一本で百MWの発電量だよ。」
シアンはドヤ顔でいう。
「一キロ!? 技術的にそんなもの作れるんですか?」
「物理攻撃無効属性つけたから、台風来ても大丈夫だよ」
ニコニコしながらそう言うシアン。
「……。チートだ……。ガハハハ……」
思わず天をあおぐレヴィア。
続いてシアンは、ツーっと飛びあがって道の予定地の上へ行くと、エイッ! と言って両手を道に沿って振り下ろした。すると、ズーン! という地響きが起こり、人が入れるくらいの大きな溝が何キロにもわたって一直線に通った。続いて赤い魔方陣を展開すると、溝へ向けて鮮烈な熱線を照射しはじめる。
「きゃははは!」
うれしそうな声が響き渡り、溝からはジュボボボボ! という土が溶ける音と共に焼け焦げた臭いが漂ってくる。
「これは……何?」
レオが
「共同溝じゃな、電気、水道、光ファイバーなどを通すんじゃろう」
シアンは飛び回りながら次々と道に溝を掘っては熱線で固めていく。
しかし、主要幹線道路だけでも数百キロメートルに及ぶ。それは大変な作業だった。
三人は超人的なシアンの工事を眺めていた。
「これが出来たらあそこに住めるんですか?」
オディーヌはレヴィアに聞く。
「浄水場と下水処理場と、後は風車からの電気の配線じゃなぁ」
レヴィアがそう答えると、シアンがツーっと飛んできて言った。
「じゃあ、それ、レヴィアよろしく!」
「えっ!? 規格とかは?」
「適当に決めて。日本クオリティでよろしく! きゃははは!」
そう言ってまた飛び立っていった。
しかし、シアンばかりに活躍させてもいられない。ドラゴンとしての誇りもあるのだ。子供たちにいい所を見せておかねば。
「ぬーん、浄水場……十万人分じゃろ? どのくらいのサイズじゃ? 一人毎日二百リットルとして……、商業施設が……、うーん……」
レヴィアはぶつぶつとそうつぶやきながら、『脚の湖』の方へと飛んで行った。
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