第14話 事後処理
「成程……それで力を貸して欲しいと」
立ち話も何だったので、家へと戻り。
囲炉裏を囲んでサラと俺、それにカイル――ここは彼の家なので――を加えてリピの話を聞かせて貰った。
「リピちゃん可哀そう。お兄ちゃん、助けてあげて」
サラが目をうるうるさせて此方を見てくる。
最近魔物に村を襲われて、苦しい思いをした彼女にとっては他人事では無いのだろう。
リピの話を纏めるとこうだ。
少し前に謎の異変により、彼女達の住んでいた森の大半がきれいさっぱり消滅してしまったらしい。
幸い彼女達の暮らしていた場所は霊樹と呼ばれる力ある樹の中だったため、消滅に巻き込まれる事はなかったらしいのだが、問題はその後だった。
森が失われた事で生態系が激変し、それまで寄ってこなかった魔物達が霊樹へと群がって来る様になってしまったそうだ。
当然魔物達の狙いは霊樹のエネルギーだ。
それを糧に、厳しい冬を越える積もりなのだろう。
だが異変で大きく消耗している霊樹は大量の魔物、そしてそこに住む妖精達の胃袋を満たし続けるには厳しい状態だった。
このままではエネルギーを奪われ尽くしてしまい、冬を越す前に霊樹が枯れてしまう。
だがひ弱な妖精達では、魔物を追い返すのは難しい。
それで山向うに住むといわれるエルフに助けを求めに、リピは周りの反対を押し切って霊樹を一人飛び出したそうだ。
そして途中でお腹が空きすぎたため、俺の魔力に吸い寄せられてしまい。
今に到るという訳だ。
「分かった。魔物を追い払えばいいんだな」
正直この寒い冬の中、そんな遠くまで出向きたくはない。
だが俺は快諾を返す。
「本当!?やったー!!」
リピが俺の返事に嬉しそうに飛び跳ねる。
まあ最初から飛んで宙に浮いているので、飛び跳ねると言うよりは只の上下運動に近いが。
「エルフの森は遠いから間に合わないかと思ったけど、これで霊樹は助かるわ。ありがとう!」
彼女の目の端が薄っすらと輝く。
嬉し泣きだろう。
そんな彼女を見てると、罪悪感に胸が痛くなる。
何故なら、全ての元凶は俺にあるからだ。
森の異変による消滅。
それは俺のやらかしが原因なのは間違いなかった。
ミノタウロスを倒す時に、やりすぎて地平線が見えるレベルで森を吹き飛ばした訳だが……完全にあれのせいで間違いないだろう。
「よし!じゃあ準備をして早速向かおう!」
俺は勢い良く立ち上がり、出立の準備を始める。
え?
自分のやった事を、素直に話して謝らないのかって?
世の中にはね、知らなくても良い事ってのはあるものだよ?
さあ!
霊樹を救うべく出発だ!
こうして俺は自分に都合の悪い事は口にせず、リピの住処へと向かうのだった。
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