第四章 手段を選んでくれないのは腹黒美人
第55話 え、呑気にしていられる時間もう終わり?
ギャル達が通う高校の文化祭が終わり、振替休日という事で黒髪少女と一緒に遊びに来た。まぁ
何はともあれ、無事に交友関係が再構築され、俺も菜摘も息苦しさから解放された。嘘をつき続ける必要も無くなり、今度こそ堂々と恋人や友人として付き合っていけるのだ。相手はどちらも女子高生なんだけどな。
しみじみと幸せを噛み締めていると、蓮琉と
一体どうしたのだろうか。
「ねぇマサくん。ちょっと気になったんだけど、
「え、それ聞く? いきなり聞いちゃう?」
「うん、言えるなら聞きたい」
元カノとの話を現在の彼女にするのは、個人的に趣味ではない。それによって、今の恋人関係をどうこうしたいとは考えないし、相手が違うのだから参考にもならないだろう。
しかし菜摘と明希乃は、なんだかんだ仲良さげになってるし、明希乃の口から言わせるよりはマシかもしれない。
かなり気は重いが、彼女の問いかけに正直に答える事にした。
「あいつと付き合ってた当時は、他の事で手一杯だったんだ。大学で学びながら、自分でも起業について猛勉強していたからな」
「それですれ違いになっちゃったの?」
「最初はテスト対策も手伝ってくれたんだけど、だんだんそれは恋人じゃなくてもいい気がしてさ。友人関係の方が気が楽だったんだ」
「別れてからはずっと今みたいな関係?」
「すぐにこうはならなかったよ。卒業の少し前にまた絡むようになって、なんでも遠慮無く言い合える友達になれた感じ」
軽く聞き流してもらえるくらいが理想だったんだけど、真剣な面持ちで聞いていたギャルは、なぜだか気まずそうにし始める。やっぱり昔の恋愛など語るべきではないよな。
そう考えていたのも束の間、菜摘の口からは耳を疑うセリフが飛び出してきた。
「あたし、そうやって割り切れてるのは、マサくんだけな気がする」
「どういう意味だ?
明希乃は違うって言いたいのか?」
「うん。明希乃さんはマサくんのこと、今もまだ好きだと思う。この前のことも、全部マサくんの為にやってた感じがしたもん」
「俺の為に……?」
お互い厄介事ばかりに巻き込み合うから、俺はあいつを悪友としてしか見ていない。それは向こうも同じだと思っていた。菜摘からそんな風に見えている原因はなんだろう。
明希乃から嫌われていないのは分かってるけど、友人としてでも好感度は低そうな気がしてたのに。
「あたしはさ、それも仕方ないかなって思ってるよ。だってマサくんってなんか、天然の女たらしっぽいもん」
「はい? それは聞き捨てならないぞ。
俺がいつそんな雰囲気を漂わせた?」
「自覚が無いから天然なんじゃん。人に期待させるのが、すごく得意なんだよマサくんは」
「くっ。それは心当たりがあるから、なんも言い返せない……」
意図せず他人の人生に踏み込み過ぎてた側面があり、それは必ずしも良い方向に向かうとは限らない。むしろ相手からしたら菜摘が言うように、期待という形で残ってしまうケースも多いだろう。
明希乃には何をしたかな。別れた後なら、住む場所の提供や独立の手助け、他には資産運用について少し教えたくらいか。うん、ほとんど利害関係でやってるよな。
勝手に自己完結していたところで、家のインターホンが鳴る。また菜摘の友達かな?
「あ、噂をすればだね」
「えぇ? まさか明希乃が来たの!?」
「だってあたしが呼んだんだもん。仕事後に一緒に夕飯どうですかー? ってね」
「いつの間に連絡先交換してたんだよ」
「結構前だよ? 文化祭行く前だって、朝ごはん食べに来てもらったじゃん」
「そう言えばそうだったわ……」
平然としていられるこの子の胸の内が読めない。自分の彼氏の元カノであり、今も好きかもと疑ってる相手と、なんで同じ空間に居ようと思えるんだ? 俺は菜摘しか見てないけど、彼女も信頼してくれてるって事か?
「こんばんはー。
あら、
「
「五影さん、とってもいい感じだったよー。
その後お父さんとの関係はどうなの?」
「お陰様で、父の口うるささが消えました。
仕事に使う時間も増え、順調みたいです」
「それは良かった。仕事中もうわ言みたいにあなたの話をしてたし、不安が解消されてようやく集中してるんでしょうねー」
家主を無視して少女と話す悪友に、変わった様子は見られない。
そしてこちらにも変わらないギャルが居て、自然に話し掛けに行く。
「明希乃さん、すぐにご飯作りますので、それまでゆっくりしてて下さい」
「ありがとう菜摘ちゃん。こんな気が利く彼女がいて、本当に
「お前に菜摘は譲らんぞ」
「あら、居たの玖我くん?」
「そりゃ居るだろ! ここ俺の家だから!」
「冗談に決まってるでしょ。
いちいち大きい声出さないでよ」
挑発しておいてよく言うわ。
上着を着ていたのでハンガーを手渡し、自分の家のようにくつろぐ明希乃だが、俺だけが意識してしまう。
「玖我くん、もしかしてあの一件、君の耳にも入ってる?」
「へ!? な、なんの事だよ?
俺は何も聞いてないし知らないからな?」
「なに慌ててんのよ。やっぱり知ってるんじゃん。
「はぁああ!? それはガチで初耳だわ!」
「じゃあなんでキョドってたわけ?」
「いや待て。それどころじゃないだろうが」
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