第5話 研究所3

「くそ……」




 アサトは呻くような声をあげる。




「まあよい。ウィルグローから何も聞いておらぬか?」




 セルティアスは再び、緑髪の青年に問いかける。




「奴の話を聞く必要ない!!」




 緑髪の青年の腰から声が聞こえて来る。それは奇妙な拳銃からだった。




 リボルバーは何か妖怪の角の形状似ており、グリップには幾何学模様が刻まれてある。




「ええ、私の一族の敵と聞いてます」




「ラヴァイト、言うな!!」




 ウィルグローはラヴァイトの言葉を遮る。




「随分と嫌われたものだ」




 セルティアスは肩を竦める。




「……当たり前だ……」




 アサトは無理やり皮肉な笑みを作り、再び呻く。




「貴様ら!!!!セルティアス様になんてことを……。」




「もうよい。では、我が問いに答えてくれぬか?」




 ゲシュバイトの言葉をセルティアスが遮る。




「私は記憶喪失なんです」




 ラヴァイトは真っすぐな瞳で、セルティアスを見据える。




「おいおい、人の話を聞いているのか?」




 ウィルグローがラヴァイトにつっこみが入るが、ラヴァイトはこれを無視する。




「……そ、そうか。ならば知らぬ方が良いな」




 セルティアスは遠くを見るような眼差しをする。




「何か、知ってるんですね」




「わざわざ、嫌なことを思い出すこともあるまい」




 セルティアスは落胆したとも取れる口調でラヴァイトに背を向ける。




「それでも、知りたいんです!!」




 ラヴァイトはさっきよりも一段と、力強い口調をセルティアスに向ける。




「時には、忘れた方が良い事もある。ゲシュバイト、客人のお帰りじゃ。」 


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