第14話俊足のドラゴンとの戦い
ラプトル・ドラゴンが俊敏に動き、攻め寄って来る。地上型の中型サイズのドラゴンであるラプトル・ドラゴンは並の冒険者など八つ裂きにして餌にしてしまう程の存在だ。その爪と牙での攻撃をリスティは片刃剣で受け止める。そして、反撃に斬り付ける。これにラプトル・ドラゴンは素早く反応し、後退し攻撃を避ける。他のラプトル・ドラゴンはエリアとクーに襲い掛かっていたが、それぞれ槍と剣で攻撃を凌ぎ、やはり反撃を繰り出そうとするのだが、ラプトル・ドラゴンは高速に動き、それを回避する。中型サイズのドラゴンの中でもトップクラスのラプトル・ドラゴンの相手は厄介であった。リスティが片刃剣で踏み込み、斬りかかる。ラプトル・ドラゴンの肌を切り裂き、ラプトル・ドラゴンが絶叫を上げる。構わずリスティはそのまま片刃剣でラプトル・ドラゴンを切り裂いた。ラプトル・ドラゴンの一匹は息絶える事になった。
残りのラプトル・ドラゴンにエリアとクーが攻撃を仕掛ける。槍での突きと剣での斬撃を交互に繰り出し、俊敏性に長けるラプトル・ドラゴンでも回避し切れない攻撃を繰り出す。ラプトル・ドラゴンの体は切り裂かれ、地面に倒れ伏す。残りのラプトル・ドラゴンも三人がかりで剣と槍を振るい、仕留めていく。気が付けばラプトル・ドラゴンは全滅し、大したダメージも受けていないリスティ、エリア、クーの三人が残った。
「このくらい楽勝ね!」
リスティが自信満々に声を上げる。正直、楽勝とは言えない所だったと思うがそこに水を差すのも何だった。エリアもクーもラプトル・ドラゴン相手のこの戦いには満足を覚えている様子だし、俺は見守る事にした。
「だが、まだまだ不足です。この程度では魔王を倒すには程遠い」
エリアがキツイ事を言うが、事実だろう。三人は順調に力量を向上させているが、まだまだ魔王に敵うとは思えなかった。クーも頷く。
「まだまだ鍛錬を積む必要がありますね」
その言葉に一同は頷く。とりあえず、まだまだこのベイルロディア山脈での鍛錬は続けないといけないだろう。最終的には山脈の奥地に住まう大型のドラゴンも倒せるくらいでないと話にならない。魔王を相手にするのだから当然の事であった。
「もう大型のドラゴンに挑んでもいいんじゃない?」
リスティがそう言って自信を示す。しかし、それに対してエリアが待ったをかけた。
「まだ早いでしょう。大型のドラゴンは強敵です。それに挑むには私たちはまだ力が不足している」
「そうかしら?」
「そうですよ」
不満げなリスティであったが、俺の目から見てもまだ大型のドラゴンに挑むには早いと思っていた。もう少し力量を向上させねば生物の頂点に君臨する大型のドラゴンに挑むには早いと思う。そう思っているとワイバーンの大群が襲来して来た。リスティ、エリア、クーは武器を手に取り、応戦する。
空中から強襲と火炎で攻撃を仕掛けて来る。ワイバーン相手に三人は比較的、余裕に立ち回れているようであった。リスティは片刃剣を振るい、ワイバーンの翼を切り裂く。エリアも槍を繰り出し、クーも剣で斬りかかり、翼を狙う。ワイバーンの群れを相手にしても三人はそれなりに余裕に立ち回れるようになっていた。それぞれの武器で応戦してワイバーンを倒していく。ワイバーンの一匹が俺の方に来たので俺も剣を抜き、神の加護で黄金のオーラを纏った剣で斬り付けてワイバーンを倒す。ワイバーン相手にこれだけ戦えるのだから三人はもはや並の冒険者ではないが、その程度では敵わないのが魔王という存在だ。まだまだ鍛錬を積む必要がある。ワイバーン相手にリスティの片刃剣が唸り、その命を絶つ。エリアも槍で刺突を繰り出し、ワイバーンを打ち落として倒す。クーも剣でワイバーンを倒した。この三人の中で一番力量が劣っているクーでもワイバーン相手に戦えるレベルまでは達している。鍛錬の成果は充分出ていると言っていいだろう。
そうしてワイバーンの群れを退けて小休止という雰囲気になる。一同の間に弛緩した雰囲気が流れ、それぞれ武器をしまう。
「皆さん、凄く強くなりましたね」
俺は三人に称賛の言葉を捧げる。実際、まだ魔王に挑むには足りないとはいえ、三人は強くなった。この山脈で鍛錬を始めた直後のレッサー・ドラゴンとレッサー・ワイバーンを倒すのがやっとだった頃と比べれば別人のようである。それに三人は満更でもなさそうに頷く。
「まぁ、魔王討伐を目指している身だしね」
「聖女様にそう言っていただけて光栄の極みです」
「私も頑張ってます!」
この三人がこのペースで鍛錬を重ねて行けばいずれは魔王をも討伐出来るだけの力を身に付ける事が出来るだろう。そう思い、休息の食事をみんなで摂る。確かな実感を覚えてか、三人は自信に満ちた顔をしていた。うん、それでいい。何事も自信を持っていなくては上手くいく事もいかないものだ。自信に満ちた三人を頼もしく思い、これからの鍛錬に思いを馳せる。
食事が終わり、再びラプトル・ドラゴンが襲って来たので三人は迎撃する。高速で動くラプトル・ドラゴンの動きにも翻弄されず、三人はそれぞれの武器で対抗してのける。リスティも高速で地を蹴り、ラプトル・ドラゴンの動きに付いて行く。エリアとクーもラプトル・ドラゴンの動きに付いて行き、槍と剣を振るう。その俊敏性は大したものであった。機敏なラプトル・ドラゴンにも充分、対抗出来るものが身に付いている。
三人はそのまま剣と槍でラプトル・ドラゴンを討ち取って勝利する。もうそろそろ、さらにベイルロディア山脈の奥地に行ってもいいかな、と思えて来た。少なくともこの辺りでのラプトル・ドラゴンやワイバーン相手に今更、三人共、苦戦はしない様子であった。
「もうちょっと先に進んでみようか」
俺は提案する。それにリスティはもろ手を挙げて頷いた。
「賛成! 賛成! もうこの程度のドラゴンたちなら相手にならないわよ!」
「もう少し慎重にいった方がいいと思いますが……聖女様がそう仰るのなら」
「分かりました。先に行きましょう」
そうして、一同はさらに奥地へと進む。そこに三匹のドラゴンが現れた。四足歩行で虎にも見えるが、これは……。
「タイガー・ドラゴンだ! 気を付けて!」
エリアが叫ぶ。タイガー・ドラゴン。確かに名前通り、虎と竜の要素を併せ持っているように見えるドラゴンであった。タイガー・ドラゴンが襲い掛かって来て、三人はそれに応戦する。タイガー・ドラゴンはラプトル・ドラゴン以上のスピードを見せて、三人を翻弄する。
「速い……!」
リスティが舌打ちする。リスティの片刃剣はタイガー・ドラゴンに避けられ、タイガー・ドラゴンからの反撃の牙が来る。それをリスティはなんとか片刃剣で受け止める。
エリアの槍もタイガー・ドラゴンは回避する。そのまま反撃を繰り出して来たのを槍の柄で阻み、エリアは再度、槍を繰り出すがタイガー・ドラゴンはそれを回避する。
ラプトル・ドラゴンを遥かに凌駕する俊敏性だ。厄介な敵である事に間違いはないようであった。
「く……!」
クーが迫り来るタイガー・ドラゴン相手に苦戦を強いられている。三人の中では最も力量で劣るのがクーであるが、彼女にはまだ早かったか? とも思う。それでもクーはタイガー・ドラゴンの攻撃を剣で凌ぎ、やられっぱなしではなくクー自身も剣を繰り出し、反撃を放っている。
まだ尚早と決めつけるには早い。タイガー・ドラゴンは確かに強敵のようだが、三人とも戦えない程ではないようだ。三人はそれぞれの武器を振るい、タイガー・ドラゴン相手に立ち向かう。強敵には違いない。それでもこの三人なら打ち勝ってくれると信じていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます