第三話:天下国家の大軍勢
順門府は西北に位置する領国である。
かつて藤丘家が天下を一統するにあたって最後まで抵抗した国であり、その時の王統は降伏を許されず、その愚昧を罪としてことごく絶やされた。
やがてその二番目に遅く投降した大陸南方は
領土は大なれども反骨精神旺盛かつ藤丘に遺恨を抱く領民たち。鐘山一門はその荒み切った精神を慰撫することに三十年を費やしたといって良い。
だが宗円の青春時代をすべて費やしたこの事業も、奸悪の一死と帝の独善によって破綻した。
いや、あるいはとも信守は思った。
この三十年、鐘山家は、最後の反逆者は兵を挙げる機を待っていたのではないかと。
確実に勝利を得られる、最善の時節を。
しかし実際のところ、多少のしくじりこそあれども、藤丘朝の権勢はなお健在であった。
まず帝が総指揮を執る禁軍の精鋭部隊。
第一軍、
第二軍、
第三軍、
第四軍、
第五軍、上社鹿信
第六軍、
第七軍、
これが総勢三万五千。
近隣の諸侯豪族がそれに加われば、ゆうに五万を超す大軍勢ができあがった。
さらにそこに譜代外様の各府の軍が、勅に応じて参集する。
北の雄、
東の一門、
特に有力なこの二家のみでも合わせて三万。他大小の勢力を加えれば、瞬く間に十万余の、天下に抗しうる者なき大軍勢が出来上がった。
いざ戦場。いざ順門。
この時を待っていたとばかりに勇んでやってきた者。とっとと片づけて帰国したい者。
様々な思惑を孕む諸将は、父祖伝来の帝の采が、西北へ向けて振りかざされるのを待っていた。
だが、征旅の先において、異変が生じた。
戦乱が遠のいて久しくとも、無双の強兵を抱える親類、風祭。
その軍の長たる公弟、
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