第2話

おととしの11月にボーカル2人とパフォーマー4人の男性6人のグループでデビューし、昨年の春のドラマの主題歌に大抜擢され、そこから2枚のシングルと1枚のアルバムを出し、年越し単独ライブを行うまでになったsymFny。

僕は、その新人マネージャーとして昨年11月に採用され、何もわからないままに過ぎていった2か月間。

昨日が採用されてから初めての丸1日の休み。

今日からは、3月に発売予定の新曲のPV撮影にハワイに行くのだが、俺にとってはPVよりもこの初海外ということも楽しみの一つ。しかもハワイ!まだ年明けて間もないハワイは芸能人でいっぱいかも…とワクワクする俺。

今日は直接空港へ行くように言われ、国際線ロビーあたりにいます!とメールで連絡したが、なかなか現れない。

当然、この時期の空港は人の多さが半端ない!


「おっ、いたいた!」


と、リーダーのTAKEさんとパフォーマーのSOUさん、DANさん、NAOYAさんの3人とパフォーマー担当の先輩マネージャーが集まっていた。

自分以外にマネージャーは2人。その1人がパフォーマー4人を連れて到着すると、周りの人達が気づきはじめ、瞬く間に人だかりとなり、辺りは騒然となり始めた。


「こんな一目の付く場所での集合で大丈夫なんですか?」


と、俺は心配そうな感じでリーダーのTAKEさんに声をかけた。


「んー。俺たちはまだまだだから、普通にロビーに集合していく事になるけど、頑張れば裏口とかを利用していけるようになるかもな!でも、TAIGAとRENが来たらさらに凄いことになるだろうな~」


と、周りをキョロキョロしながらボーカル2人が到着するのを待っていた。


symFnyの人気はやはりボーカル2人が中心。見た目は男っぽい感じだが、美しい声でそのギャップに女性ファンが多いTAIGAさんと、表現力は聴いている人達の心の奥に響き、心の声や叫びを歌で表現し男性からも人気のRENさん。RENさんはちょっと一匹狼的な感じで、俺はまだ挨拶程度でほとんど話したことがない。


パフォーマー4人が到着してから10分。向こうの方から大きな歓声が上がり、徐々にこちらに近づいてくる。

多分、ボーカルの2人が到着したのだろうと歓声の方に目を向けると、ボーカル2人とボーカルの担当マネージャーが、人混みをかき分けてこちらに近づいて来るのが見えた。


「潤、手伝ってきて!」


と、TAKEさんの言葉に、急いでボーカル2人がいる方へ行こうとするがなかなか近づけない。


「すみませーん。ちょっと道を開けてください。」


近づこうと進もうとするが、ファンのパワーは凄く、なかなか前に進むことが出来ない。


「ちょっとー!邪魔なんですけど!!!」


と女性ファンからは嫌味を言われ、はぁ~と思った瞬間、TAIGAさんが俺を見つけ出し、こちらに近づいてきた。


「潤ちゃん、オハヨー!!!早く、みんなのところにいこっ!」


と俺の肩を組んで、みんなのところを指差した。


TAIGAさんとは対照的に、RENさんは一言も表情も全く変えず、後ろからついて来るだけだ。


俺はこの歓声で聞こえないかもとは思ったが、


「おはようございます!」


と、一応RENさんにあいさつした。


一瞬、初めて目が合ったように感じたが、返事はしてくれたたのか、聞こえなかっただけなのか、マスクしている口元はわからず、そのままみんなのいる方へ進んでいった。


この歓声の中、今年は普通では体験出来ない年になりそうと、メンバー全員が感じているに違いない。

なぜなら自分もそう感じたから…。


××××年1月3日、symFnyの勝負の年が始まった!

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