第4話 スキンヘッドのおはなし

明日、俺は出家する。うちの実家は寺なので俺も生まれた時から跡継ぎになることが決められていた。先週、無事に仏教系の大学を卒業したのでついに出家することになってしまった。出家のためには当然髪の毛を剃らなければいけない、そのために俺は今床屋の前に立っている。しかし、なかなかはいる勇気がわかない。

ガラッ チリンチリン!

「やあ、お寺の坊っちゃん。ひさしぶり。お寺から電話があったよ。うちの息子が頭を剃りに行くけど、どうせお店の前でぐずぐずしてるだろうから声かけてくれって」

うっ、さすがうちの親だな。俺の性格がまるわかりだ。

「まあ入りなよ。頭剃るってことはついに?」

そういいながら店主は椅子に座るよう促す。

「はい、明日行きます」

「おー、おめでとう。じゃあ今日はサービスするよ」

「んー、だいぶ髪が長いな。まずはバリカンで短くするよ」

俺は大学生のうちは遊びまわっていたので髪は結構長い。髪を伸ばせるのも今のうちだからな。

ヴイイーーン!ジャキジャキジャキ!

ああ、ついに髪を切られてしまった。さらばマイヘアー。もう会うことはないだろう。なんてことを思いつつも、あれ、バリカンで髪を切られるのが気持ちいいと感じた。バリカンで髪を切られるのなんて子供のころ以来だからか、それとも店主の切り方がいいのか。どちらにせよ、バリカンは気持ちよかった。髪を切りながら頭皮を適度に刺激してくれてすごく気持ちい。

「よし、こんなもんかな。じゃあ頭を前の洗面台に倒して。次は頭剃るから準備するね」

シャカシャカシャカッ!

ついにこの瞬間がきてしまったか。もう後戻りはできない。

「じゃあ、いくよ」

その声と共にクリームが塗られていく。

ジョリジョリッ!ジョリッ!

うわっ。これは気持ちいい。頭皮という普段外気にあまり触れてない部分を髭剃りという刃物が刺激していく。1%の痛みと99%の快感が頭を埋め尽くしていく。

「ふー、頭を剃るなんて初めてだったけど剃り残しもないね。次は髭剃りをしていくよ」

おお、頭を剃っていたから気持ちよかったわけではなく、髭を剃っても気持ちいい。出家するという事で緊張していた筋肉がほぐれていくようだ。

「よし、髭剃りも終わったよ。次は約束のサービスをするよ」

サービスとは何だろう。楽しみだ。

グイー、グッグッ。グイー、グッグッ。

こっ、これは。

「おどろいた?頭皮マッサージだよ。髪の毛がある人にもやるけど、やっぱりないほうが効くでしょ」

確かにこれは効く。頭蓋骨やその中の脳までほぐされているようだ。

よし決めた。修業が終わったらまたここに来よう。

そう俺は心に決めた。


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