第4話 真夜中の自転車

これは私が現実に体験したはなしです。

当時私は大学4回生で卒業論文に取り組んでいました。課題でレポートなどは書いてきたものの、初めて書く論文に右も左も分からないありさまでした。悪戦苦闘しながら論文を書いていると、気付いたら午前零時を回っていました。あのころの私には、近所の24時間営業のスーパーで売れ残って割引されたお惣菜を夜食にする、という楽しみがありました。から揚げが残っているといいな、などと考えながら向かいました。

 深夜なので人気は無く、卒業論文からしばらくのあいだ開放された私は浮かれ、つい鼻歌をうたってしまいました。

 すると道の向こうから一台の自転車が走ってきました。

(仕事帰りなのかな、大変だな)そう思いながら歩いていき自転車と私の距離は縮んでいきました。そしてすれ違うとき、つい私は自転車のほうを見てしまいました。その自転車はママチャリで後ろの荷台にはなんと真っ赤なゴシックドレスを着た子供が乗っていました。こらえきれずに私は小さく悲鳴を上げてしまいました。その瞬間自転車は急ブレーキをかけて停車し、運転していた人が首をぐるりとまわしてこちらを睨んできました。

私は謝ることもできず足早に逃げました。道を曲がるときちらりと自転車のほうをうかがうと、じーっと私のほうを睨んで今した。大学を卒業し数年たった今でも、あの睨んでくる目を忘れることができません

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